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誰が組織風土を変えるのか?

誰が組織風土を変えるのか?
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私たちが組織で働く理由の一つは、個人で活動するよりも、より大きな仕事ができるからにほかなりません。一人ひとり能力を掛け合わせることによって、より高い生産性を発揮し、社会に大きな影響力をもつ仕事をする。そのベースには、組織の中で一緒に考えたり、コラボレーションしたりできるという前提があります。ところが実際のところ、それがなかなか難しいのも現実です。

マシュー・サイドは『多様性の科学』の中で「米国運輸安全委員会によれば、30件以上の墜落事故が、副操縦士ら乗組員が機長に進言できずにいたことに起因している」と記し、次のようなエピソードを紹介しています。

1978年のある飛行機墜落事故の後に、フライトシミュレーターを使った研究調査が実施されました。その研究では、機長はあらかじめ間違った判断を下すように指示されており、その指示に対してクルーが機長に進言するまでの時間が計測されました。その実験において、クルーの反応を観察していた心理学者は、『副操縦士らは機長に意見するより、死ぬことを選んだ』と言ったそうです。(※1)

また、この本では、医療現場における26件の研究を分析したデータでも、医療事故の要因が、上司に進言し損なったことだったと結論づけていることにも触れています。(※1)

なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

原因は、何も言わなかった部下のせいなのでしょうか? それとも、部下に意見を言わせなかった上司のせいなのでしょうか?

事故や偽装、隠蔽などの不祥事が起こると、それを起こした部下の責任、そうさせてしまった上司の責任、というように、個人の責任として処理されることがほとんどです。たしかに責任の所在を明らかにするのは大事なことかもしれませんが、それでは根本的な解決には至りません。

組織には、その組織特有の風土が存在します。原因は個人だけではなく、その組織の風土にもあると考えられます。

すべての人が変わる必要がある

「組織風土改革」という言葉がありますが、組織風土は上から変えることもできませんし、外から変えることもできません。組織風土を変えるには、組織の内側にいる全員が当事者として、その組織ではあたりまえになっている風土そのものを見直していくというアプローチが必要不可欠です。

組織の風土は、個人の行動の集積です。そう考えると、組織風土改革や組織開発を成功させるためには、当然ながら、組織内のすべての個人が自らの行動、コミュニケーションに目を向けて、それ自体を変えていく必要があるのです。

『対話型組織開発』という本には次のようにあります。(※2)

「刻々と変化する環境において、過去の経験や技術を用いた問題解決には限界がある。

この世界は複雑で予測不可能であり、私たちは常に自分たちの前提や考え方について、対話を通して探求し、見直し、他者と協働することで新しいアイディアや価値を創発することが重要である。

そのためには、職場や組織の中で、社員間のコミュニケーション、上司と部下の間のコミュニケーション、のありようが変わることが必要だ」

上意下達、指示命令型の一方通行的な風土、他部署との情報共有や協力が少ないサイロ型の風土、一人で考え、最後まで一人でやりきろうとする孤軍奮闘風土など、ともに考え、コラボレーションすることを阻害する組織風土的な要因はさまざまです。

あなたの所属する組織にはどのような風土があり、あなたはそれをどのように変えたいと思っているでしょうか。

組織開発とは、組織の風土を見直す、変えること。
人材開発とは、個人のコミュニケーションを見直す、変えること。

この二つは切っても切れない関係にあり、同時に進めていくことが求められるのです。

他者との対話は、変化の原動力になる

組織風土を変えていこうと思うのであれば、誰一人いまのままではいられません。経営陣はもちろん、すべての人が自ら変わる必要があります。

やり方や行動を変える。コミュニケーションを変える。そのときに起こる私たちの典型的な反応の一つは「抵抗」です。

実際に変化を起こそうとすると、そこには、変化することそのものへの抵抗、対立や、否定されることへの怖れから発生するコミュニケーションの躊躇などが生まれます。

ややこしいのは、会社を変えたい、他者に変わってほしいと思っていても、自分が変化の当事者になると誰しも抵抗を感じることです。これまでと違った行動を起こすことに、私たちは反射的に抵抗を感じます。

私たちの行動は、その行動に対する自分自身の意味づけの結果です。つまり、その行動に対して新しい意味づけができなければ、行動を変えることは難しいと言えるでしょう。

では、新しい意味づけはどうやって獲得していくことができるでしょうか。

その答えは、他者との対話です。他者との対話を通して自らの行動や考え、前提を振り返り、意味づけが変わり、結果として行動が変わっていきます。

ところが、意味づけが変われば新しい行動が起こるかといえば、そんなに簡単なことではありません。いままで慣れ親しんできた行動を変えるのは、誰にとっても苦痛です。

それでもやはり、対話を継続することが変化につながることを明らかにしたデータがあります。以下のグラフは、組織内におけるコーチングの回数とコーチングを受けた側が感じる成果の実感の関係性を表したものです。コーチングの回数が増えるに伴い、成果の実感が上昇していることがわかります。

コーチングという対話が、「行動」への新しい意味づけを促進し、リスクを越えて「行動」することへの後押しになっているのでしょう。

コーチングを受けた回数と受けた側が感じた効果の関係(※3)

コーチングが、個人と組織を開発し、望む未来を実現するための変化を強力に後押しするものであることに、疑う余地はありません。

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【参考資料】
※1 マシュー・サイド著 『多様性の科学』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2020年
※2 ジャルヴァース・Rブッシュ、ロバート・J・マーシャク著『対話型組織開発』
※3 コーチング研究所による調査
調査対象:コーチ・エィのサービスを受けたリーダー545人のステークホルダー2,477人
調査内容:D-meter2回目
調査期間:2021年7月~2022年8月 

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