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「年齢」という言い訳~今やらずにいつやるのか

「年齢」という言い訳~今やらずにいつやるのか
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Language: English

まだ若いから。
もう歳なので。

あとに続くのは、どちらかといえばネガティブな言葉。幾度となく耳にし、また私自身も口にしてきたお馴染みのフレーズです。

最近、この言葉を枕詞に使う時、人はどのくらいのタイムスケールを想定しているのかが気になり始めました。どこから見て「若い」のか? 何と比較して「歳」なのか? そして、何のためにこの言葉を使っているのか?

きっかけは、エグゼクティブ・コーチングのクライアントさんの言葉です。

同じ年齢なのに

トップダウンの組織文化で離職率が高いことがテーマとなっている会社で、執行役員に抜擢されたAさんは、コーチングで目標設定について話しているときにこうおっしゃいました。

「僕は執行役員になったばかりだし、まだ若いから、社長のビジョンを尊重しながらうまくやっていくことから始めようかと思っているんです。徐々に組織を理解していければと。他の役員のみなさんの意向もあるし、いきなり僕なんかが張り切って組織文化を変えようなんて動いたところで、そうそう簡単に何かが変わるわけじゃないですから」

まだ若いから、そうか、徐々になのか...。

同じ時期にコーチをしていたBさんは、歴史ある大企業の取締役です。Bさんの会社では、役員はそれぞれの管掌領域へのコミットメントが強く、それ故にお互いに領空侵犯しないことが暗黙の了解となっていました。そこで、新しいビジネスへのチャレンジを促進する目的で部門間連携の停滞を打開しようと、コーチング・プロジェクトに取り組み始めました。そんな中、Bさんはコーチングの中で、変革に向けた取り組みへの抵抗感を正直に話してくださいました。

「私はもう歳なので、自分のスタイルっていうのが、ある意味出来上がっていますんでね。『組織変革』とかっていうけど、『変える』という言葉がしっくりきません。今までの成功体験もある程度ありますしね」

もう歳なので、なるほど、しっくりこないのか...。

Aさん、Bさんがそれぞれコーチング・セッションで話された内容には共感するところが多かったのですが、あるときはっと気づきました。

そういえば、AさんとBさん、どちらも同じ57歳。

同じ年齢なのに「まだ若いから」と「もう歳なので」とおっしゃるのはなぜなのでしょう。彼らが直面しているテーマに、年齢は本当に関係するのでしょうか。

「年齢」という言い訳

セッションを続けるうちに、AさんとBさんの共通点が見つかりました。

AさんもBさんも、自分が何を直視し、何にチャレンジすべきなのか頭ではわかっているのに、それを明確に口にするのを拒んでいるように私には見えました。「まだ若いから」「もう歳なので」という、耳なじみがよくもっともらしく聞こえるフレーズを枕詞に据えて、乗り越えるべき困難を遠ざけているようでした。

年齢は、根本的な障害になっているのか?
そうじゃない、ただのエクスキューズだ。

まだ若いから 今はやらない。
もう歳なので 今はやらない。

Aさんの「まだ若いから」の裏には、自分よりキャリアが上の人と対峙することへの躊躇と不安がありました。さらに、過去の例になく、若くして抜擢されたというのがプレッシャーでもあり、なにかと「若さ」に反応してしまっていました。

一方で、Bさんの「もう歳なので」の裏には、新しい変化をつくるエネルギーが自分一人では足りないという自覚がありました。今までの自分のやり方を変えて、誰かに声をかけ、巻き込むことに気恥ずかしさと遠慮があったのです。

年齢は、単に「今やらない」ことを正当化する理由に過ぎません。この人たちは、今はやらないし、きっとこの先もずっとやらないことを選ぶんじゃないか? そう思いました。 

「今」から逃げない

「今はやらない」ことを選ぶ。それはもちろん選択の一つです。しかし、それを選ぶ理由はどこにあるでしょうか。その選択の裏に、向き合うことを避けているものはないでしょうか。

会社は、私たちの年齢を超えて存続し、成長していく前提で動いています。その中にいる一人ひとりが、向き合うべきものに向き合わず、「今やること」を選ばないとしたら、会社は変化のチャンスを逃してしまうかもしれません。

会社だけではなく、私たち自身の人生についても同じことがいえます。年齢を「やらない理由」にするとき、私たちは自分の人生の長さをどう見積もっているのでしょうか。

私たちが「今」から逃げずに、今この時に自分がやれることに全力でチャレンジする。現在進行形で生きる私たちに、老いも若いも関係ありません。何かを始めるのに早いも遅いもないのです。そして変わろうと思えばいつでも変われる。すべては自分次第です。

私は今年、ゴルフとドラムと英会話を始めました。「今さら始めるのもなぁ、もう歳だしなぁ」「まだ時間はあるし、来年からにしようかなぁ」と流されるのはやめて、やるなら今を逃したくないと思ったからです。

今ここでやりたいことを自分の責任で選択すること。そこが自己変革のスタート地点です。

もうすぐ新しい年を迎えます。さあ、今、何を始めましょうか。

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