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座右の銘は何ですか?

座右の銘は何ですか?
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あるビジネスサイトのインタビューを受けることになりました。事前に質問が送られてきて、「好きなものは何ですか?」「好きなことは何ですか?」などの質問に続き、最後に「座右の銘は何ですか?」とありました。

その問いを見て、はたと止まってしまいました。

過去にも座右の銘を聞かれたことはあり、そのたびによさそうな言葉を選んで答えていました。しかし、今回改めてその問いに向かい合ってみると、自分の中に座右の銘らしきものが見つからないのです。

もちろん、核となる言葉をもたずにふらふら生きているわけではないのですが、座右の銘を「水戸黄門の印籠」のように、「これが私の大事にしている考え方です」と表現するというのが、どうもぴんときません。

その理由は、大事にする考え方は変わっていいと思うからです。

座右の銘がないことが座右の銘

たとえば「努力は決して嘘をつかない」という言葉。

そうかもしれない。でも、努力が実を結ばないときも現実にはあるのでは?とも思います。であれば、「努力は決して嘘をつかない」という言葉にこだわると、ちょっと苦しくなってしまうのではないだろうか。

あるいは、「千里の道も一歩から」。

そうかもしれない。でも、時には、千里を一足飛びに飛び越えてしまうようなこともあるのではないだろうか。

どちらの格言も、真理を突いた一言でしょう。でも、それにこだわるのではなく、その逆の見方に対しても寛容でいたい。『座右の銘がない』というのが座右の銘と言えるかもしれません。言い方を変えれば、できるだけ、決まった考え方に囚われることなく、いつも柔軟に、「逆側の視点」も大事にしていたいと思っているということです。

固定化したマインドセットから解き放つ

先日、スイスのダボスで開かれていた世界経済フォーラムの年次大会(ダボス会議)に初めて参加しました。ダボスはスイスのスキーリゾート地です。合計30時間近くをかけて彼の地まで赴き、世界のリーダーたちと一週間を過ごしました。

ダボスで出会う人たちにどんな仕事をしているか聞かれることを想定し、行きの飛行機の中で、エレベータートーク(エレベーターに乗っている間に、自分や仕事についてプレゼンする短いトーク)を準備しました。

3分あれば十分にコーチ・エィのコーチングを説明することができますが、15秒ではなかなか難しいものです。飛行機の中で、うんうん唸りながら考え、約1時間かけて15秒で伝えるフレーズを考えました。

Our coaching challenges your assumptions with a bunch of good questions. It frees you from a fixed mindset and gives you more choices.
(我々のコーチングは、たくさんの良質な質問によって、あなたのもつ前提にチャレンジします。そして、あなたを固定化したマインドセットから解き放ち、あなたが多くの選択肢を持つことを可能にします)

こうしてみると、このエレベータートークには、「座右の銘がないことが座右の銘」という思いが、明瞭に表れています。

リーダーの見方が固定化したら危ないので、そこから解き放つ。「その見方はよくない」というのではなく、問いを起点に、改めてこれまでの「ものの見方」について振り返っていただき、今の環境の中でとれる最善の「ものの見方」を選択してもらう。いまより少し視線を上げて、広い世界を見渡してもらう、そんなイメージでしょうか。

ダボス会議で感じた違和感

ダボスではこのエレベータトークを胸に、多くの人に出会い、さまざまなセッションを見聞きました。

ウクライナのファーストレディや各国元首のスピーチといった「目玉」のセッション以外は、たいていがパネルディスカッションです。5人ほどのパネラーが壇上に並び、モデレーターが、進行していく。多くの登壇者の話はスマートで洗練されていて、またモデレーターはとても綺麗に場をとりもっていきます。

そのスマートさに、最初は「さすがダボス!」と思ったのですが、いくつものパネルディスカッションに参加するうちに、少し違和感を覚えるようになりました。

なぜなら、パネラー同士の意見がぶつかることがあまりないのです。モデレーターが鋭く突っ込むこともあまりありません。

今回はSDGsに関してのセッションが多かったのですが、「SDGsは大事ですよね。すぐにでも何かしましょう。どうしていくのがよいでしょう?」という前提で議論が進んでいきます。

もちろんSDGsは大事なことですし、私自身、示されている方向性には賛同しています。しかし、脱炭素についても、タイムラインや進め方については世界中でさまざまな意見があります。異なる意見の持ち主が一堂に会し、侃侃諤諤議論しているかというと、そうは見えない。

基本的には、同じ前提を有した者同士が、「それは大事だよね、しっかりやっていこうよ」と認識を再確認し、同じ方向に向かうことに同意する場となっているように感じられました。

そして議論の内容も、抽象的なものが多い。おそらく、より具体的なことを話そうとすると違いが際立つため、少し曖昧なままにして、対立を避けているようにも感じました。前提となる考え方の正当性を大切に手に握りしめ、その正当性を健全に疑ったり、本当はどうなんだろう? とゼロから考えることは避けているようにも見えました。

あくまでも、1日300も開催されるセッションの内の、ごく一部しか見ていない私の個人的な感想ではありますが。

あなたの座右の銘は何ですか?

毎夜いろいろな場所で開催されるパーティーで新しい人に会うたび、パネルディスカッションで感じた違和感とともに、先ほどのエレベータートークを力強く、繰り返し語りました。

Our coaching challenges your assumptions with a bunch of good questions. It frees you from a fixed mindset and gives you more choices.

多くの人が「それは素晴らしいことをやってるね」と言ってくれましたが、どのくらい真意が伝わったでしょうか? 

あなたの座右の銘は何ですか?
その座右の銘はどんな体験から生まれましたか?
その座右の銘を敢えて疑って、逆側から見たらどう見えるでしょう?

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