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あなたのチーム力を高める認知的多様性は何か ~「タイプ分け™」をチームワークに活かす~

あなたのチーム力を高める認知的多様性は何か ~「タイプ分け™」をチームワークに活かす~
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3月に行われたWBCから約1ヶ月経ちました。いまだに優勝の感動と興奮が冷めやらない私ですが、スポーツイベントがあるといつも注目するのが選手の選考方法です。

スポーツの世界では、競技を問わず優秀な実績と個の能力を持つ選手が、しばしばチームから外れることがあります。

おそらく指揮官は、手にしたい結果から逆算し戦況を細かく分析しつつ、チームワークだったり自分自身との相性といった「関係性」をも考慮しているのでしょう。そう、チームにとっては「勝つ」ことが最優先なわけですから。

部下に物足りなさを感じる時

私のクライアントAさんは普段、複数の営業チームのマネジメントをしています。その中に、パフォーマンスは決して悪くはないものの、かといってこの先すごく展望が明るいともいえない、なんとなく膠着状態のチームがありました。

Aさんは、そのチームのリーダーであるBさんと現状を話し合いました。AさんにとってBさんは、自分の想いをより具体的に行動に落とし込んでくれ、またアイディアを具体化してくれる、とても頼れる参謀です。

実際、この局面でもAさんとBさんとはとても意見が合い、問題意識も一致していたそうです。しかし同時にAさんは、そこに違和感も覚えました。

Bさんと組み始めた当初は、「なんてやりやすい部下なんだ」と思ったそうですが、今となっては、どうも物足りなさを感じます。視点や思考が自分と似ていて、現状を打開するアイディアが思った以上に浮かんでこない。また、そもそも自分に対して、どこか従順で、深く考えていないように見えることもありました。

「認知的多様性」の重要性

組織の生産性や発展性を高めるためには多様性が重要だと言われるようになって久しいですが、当初の「多様性」は「性別、人種、年齢、信仰」等の「人口統計学的多様性」を指していました。しかし現在では、モノの見方や考え方の違いといった「認知的多様性」の重要性が謳われるようになっています。

たとえば、日本人とアメリカ人といった、異なる国籍の人が集まって意思決定を行うことは、人口統計学的な多様性を満たしていますが、仮に両者が同じアメリカの大学の同じゼミの出身だとしたら、認知的多様性が担保できているとは言い難いでしょう。

この「認知的多様性」という観点で考えると、AさんとBさんの直面する「膠着状態」を打開するヒントが見えてきそうです。しかし、認知的多様性は、性別や人種、年齢といった「人口統計学的多様性」と異なり、コミュニケーションを通じてしかわかりえないという難しさがあるとも言われます。

コーチ・エィには、人のコミュニケーションスタイルを4つのタイプに分類する「タイプ分け™」という考え方があります。

人や物事を支配する「コントローラー・タイプ」
分析や戦略を立てる「アナライザー・タイプ」
人や物事を促進する「プロモーター・タイプ」
全体を支持する「サポーター・タイプ」

4つのタイプに分ける目的は、あくまでも「人はそれぞれ違う」ということを理解するためです。コミュニケーションという切り口で人の日常の行動や考え方を観察し、相手のことをより深く、多面的に知るために活用します。

私は、認知的多様性の観点から、チームの成果を上げることにタイプ分けが役に立つのではないか考え、Aさんにタイプ分けの活用を提案しました。

タイプ分け™でチーム力を高めるヒントを得る

タイプ分けの活用をBさんに相談すると、Bさんの口から意外な言葉が出てきました。

「実は私は、若い人を前にすると、もしかしたらAさんといるときとは全然違うタイプが強く出ているかもしれません」

同僚や部下からは、仕切り屋で我の強いタイプと思われているというBさんの話を聞き、Bさんに対してそういう印象をもったことのなかったAさんは驚きました。もしかしたらAさんといるときのBさんは、サポート役に徹しようと思うがあまり、自分の意見を抑えているのかもしれません。二人でそんな話になったといいます。

それでもやはり、お互いに似ている部分が多そうだと思った二人は、「我々のチームにはもっと、どういうコミュニケーションタイプや考え方、行動特性の人がいるといいのだろうか?」と話し合いました。

そして、チームに必要なのは「easy goingで、『まずやってみよう。そのうえでまた考えよう』という考え方や行動を持ち込んでくれる人、つまり『プロモーター・タイプ』ではないかという話になり、実際にそういう人をチームに迎え入れたそうです。

ビジネス上の成果を見極めるにはまだ時間が必要ですが、「感覚的にチーム全体で活動量が倍になっている感じがして、ブレークスルーが起きそうだ」とAさんがシェアしてくれました。

「コミュニケーション」という切り口でチームを考えることが、膠着状態を打開するヒントにつながりました。

チームの認知的多様性を考える

読者のみなさんの中には、組織のリーダーやリーダー候補の方が多くいらっしゃいます。みなさんは、組織やチームをつくるときに、どんな視点で考えていらっしゃるでしょうか。

ハーバード大学の人類進化生物学のジョセフ・ヘンリック教授は、我々人類の祖先はネアンデルタール人より、個人の知能が低かった可能性を指摘しています。その一方で、私たちの祖先には社会性があり、イノベーションや発見を集団で共有していたといいます。

多様なモノの見方や考え方ができ、それを共有できるチームは強いのです。

みなさんのチームでも、コミュニケーションスタイルの観点で多様性を見直してみませんか?

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【参考資料】
マシュー・サイド(著)、トランネット(翻訳協力)『多様性の科学』、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2021年
鈴木義幸(著)『図解 コーチング流タイプ分けを知ってアプローチするとうまくいく』、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2006年
Hello, Coaching!、【図解】「タイプ分け™」とは 〜あなたはどのタイプ?タイプ分けで上手くいくコミュニケーション

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