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自分一人では見えないこと

自分一人では見えないこと
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タイ・バンコクに赴任し、10年ぶりにゴルフを再開しました。タイは、ゴルフ環境が整備されている国としてはアメリカに次ぐ世界第2位。経営者とのコミュニケーションにおいてゴルフは欠かせないツールとなっています。

もともとゴルフが下手な私は、お客様にご迷惑をかけないためにも「ゴルフはしません」と言い切って過ごそうかと考えていました。しかし、当地に駐在中の諸先輩方から「ここの経営者の多くはゴルフをするし、人との出会いから生まれるご縁もあるよ」と勧められ、目標をもって何かにチャレンジするには良い機会かもしれない、と心機一転。当地のゴルフスクールに入会しました。

無意識の癖を知る

日本ではなんとなく見よう見まねで始めたので、スクールに通うのは初めての体験です。身につけなければいけないことは、思いつくだけでも山ほどあります。

コーチと私は、これまでの私のスポーツ歴、ゴルフに対するイメージ、今回ゴルフを学ぶ目的や生活環境について話し、半年以内に100を切ること、2年以内に80台でラウンドすることを目標におきました。

レッスンでは、コーチによるスイング理論のレクチャーに加え、毎回、私のスイング映像とデータをコーチと一緒に振り返ります。自分のスイングに対する理解を深めていく過程で、私は無意識のうちに体が右方向を向く傾向があることがわかりました。

目標に対して体が右方向を向いていれば、ナイスショットをしたとしても、ボールは目標より右に向かって飛んでいきます。技術の向上には時間が必要でも、向きの修正はすぐに出来そうです。コーチをつけてフィードバックをもらうことの価値を感じながら、練習を重ねました。

頭でわかっても変えられない

先日、同僚とラウンドする機会がありました。レッスンを通じて整理したメモを頭に入れて臨んだものの、スタート直後からショットが乱れます。メモを見返し、自分の体と対話しながら修正を試みるも、大きな改善は見られません。どうも右に飛んでいくボールが多い。何気なく、

「どうも僕は右を向く癖があるらしいんだよね」

と口にすると、一緒にラウンドしていた同僚たちが

「次に打つとき、アドレスを見てあげようか」

と言ってきました。そこで実際に見てもらうと、

「かなり右に向いてるよ。もっと左を向かないと」

と言います。もともと右を向く癖があるとわかっていた私は、意識して左を向いているつもりでした。それでもまだ右を向いていると言われて驚きます。

「どう? こんな感じ??」

さらに左を向いて聞いてみると、

「もっと左。もっともっと」

「え? もっと?」

「これでやっとまっすぐだよ」

自分では、逆に左に向きすぎているような感覚です。しかし、その状態で普通にスイングしてみたところ、ほぼ狙い通りの弾道が出ました。打感もばっちりです。

その日の修正ポイントがアドレスにあり、体の向きに対する感覚も同僚のおかげではっきりしました。それを頭に入れて次のショットに臨んだのですが、イメージしたショットは長くは続きません。そこで、また同僚たちにアドレスを見てほしいとお願いしました。

「また後ろから見てもらえないかな? 正面の感覚がつかめなくて」

「さっきより頭は左を向くようになったけど、まだ体が右を向いているよ。足もとにゴルフクラブを置いて、自分の体の向きが見えるようにしてみたら?」

右を向く自分の癖を知り、それを修正しているつもりでも、第三者の目から見ると、まだ右を向いている。1回のフィードバックだけでは修正が難しいこと、また、自分の感覚だけでは修正が難しいことをまざまざと実感しました。

第三者の目を借りる

頭ではわかっていて、行動を変えているつもりだけれど、実際は変わっていない。
自分一人でもある程度良いところまではいけるけれど、ブレイクスルーはない。

たとえ、的を得たフィードバックが得られたとしても、一回で行動を変容させることは難しいということでしょう。ただし、第三者の目を借りることを躊躇しなければ、結果は大きく変えられそうです。

実際に、心理学者のターシャ・ユーリック は著作『Insight』(※)で、次のように述べています。

「内的自己認識が自分の内側に目を向けてインサイトをえるものなら、外的自己認識は外に目を向けて自分がどう見られているかを理解することだ。そしてどれだけ懸命に試みても、一人で行うことは純粋に不可能だ」

そうはいっても、第三者の目を借りることについて躊躇や抵抗が生まれることもあるかもしれません。たとえば、必ずしも的を得たことを言ってくれるとは限らないのではないかと不安を感じたり、何度も自分のために時間を使ってもらうことをためらったり、あるいは、自分一人で何とかしてみたくなったり。実際に私自身は、自分一人でなんとかしたくなる傾向があるのを感じます。

しかし、ターシャ・ユーリック は同書の中でさらにこう述べています。

「残念ながら周りが自分をどう見ているかを普段知ることができないのは、ひとつのシンプルな事実による。最も近しい人たちでさえそうした状況を進んで伝えてくれることはない」

「人は気まずい情報を伝えるより沈黙することを好む」

これらのことと自分自身の体験を重ねて見えてくるのは、自分が手に入れたいと思うものを本当に手に入れたいのであれば、そのことに向けて自らフィードバックを求めることがいかに有効であるか、という事実です。自分で何とかしようとするのでもなく、フィードバックを待つのでもなく、第三者の目を借りて、フィードバックを求め続ける。

そのことに対して、もしあなたに躊躇があるとしたら、それはどこからくるものでしょうか?

あなたは今、どこに向かっていますか?

あなたの姿を正直に伝えてくれる相手は誰ですか?

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【参考資料】
ターシャ・ユーリック(著)、中竹竜二(監訳)、『Insight いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力』、英治出版、2019年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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