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1on1はなぜうまくいかないのか

1on1はなぜうまくいかないのか
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最近、お客様からよく1on1についての相談をうけます。

「社員のエンゲージメントを高めたい。そのために1on1を導入したい」という検討をされているお客様もいれば、すでに1on1をやっていらっしゃるお客様からの「上司の部下へのキャリア開発支援のスキルを高めたいが、どうしたらいいかわからない」というご相談もあります。

人材獲得競争が激化するほか、働き方も自由になり組織に属さずに仕事をする人も増えています。そんな中、社員のエンゲージメントをいかに高めるかが重要な経営課題になっているのでしょう。そしてそのために1on1という手法がよく使われるようになっているようです。

あるクライアントの人事の方と話していた時のことです。

「人事制度を変えて、等級制度をいれたが、目標がうまく握れていないので、目標をしっかり腹落ちできるように1on1で目標設定をして欲しい」

「人材開発の重要性が高まっており、中長期的なキャリア開発支援をするために、1on1で上司が部下のキャリアを開発できるようにしたい」

「エンゲージメントサーベイの結果、挑戦の文化のスコアが低かったので、社員が挑戦できるように1on1で促してほしい」

と、1on1に期待することを話しながら、ふと冷静になって次のようにおっしゃったことが印象に残っています。

「話していて思いましたが、なんでもかんでも1on1に詰め込みすぎなんですよね、いったい誰のための1on1なのかがわからなくなってきました...」

誰のための1on1なのか?

1on1という手法は有効だと思います。しかし1on1をやること自体が目的となっていたり、1on1を導入すれば課題が解決できると思っていたりしていないでしょうか? 

そもそも、誰のために1on1をするのでしょうか?

コーチ・エィのコーチング研究所による1on1に関する調査では、部下が1on1を「自分のための時間」と感じているかどうかが、組織の活性度に大きく影響するという結果が出ました。

下図は「1on1ミーティング」と「個人および職場の状態」の関係を表したグラフです。波形は同じですが、個人の状態、職場の状態のすべての項目で、部下が1on1を「自分のための時間」と感じている場合の方が、高いスコアが出ています。

誰のための1on1なのか、社員のための1on1になっているのか、社員が「自分のための時間」と思えているのか、が重要なポイントとなりそうです。

新入社員の発表会での発見

1on1の大きな目的の一つは、社員のエンゲージメントを向上させることだと思いますが、そもそも何があると社員のエンゲージメントは向上するのでしょうか?

エンゲージメントサーベイを実施し、スコアが低いところと、その原因を分析して解決施策を打つ。こうしたアプローチはよく行われています。間違ってはいないと思うものの、本当にこれでエンゲージメントは向上するのでしょうか?

そんなことを考えていた私は、つい最近、そのヒントを与えてくれる体験をしました。それは、この4月に新卒で入社した社員の発表会です。

弊社では7年前から新卒を採用しており、2023年も5名が入社しました。彼らが入社して1ヵ月半。5月の半ばに、研修やさまざまなスタッフとの面談を経て、一人ひとりがそこまでに学んだことをオンラインで全社員向けに発表する会がありました。

社長も含め多くの社員が聞いている中、彼らは一人ひとり、自分自身の紹介と、ここまでの学び、そして、これからどうしていきたいのかを発表してくれます。

「まだ入社して1ヵ月と少しだし、温かい眼で見てあげよう」などと、勝手に上から目線で参加していた私は、彼らの発表を聞いて衝撃を受けました。

  • 自分自身がこれまで何を大切にしてきて、どんな価値観をもっているのか
  • 新鮮な目で会社をみて、何を魅力に感じているか
  • 会社の魅力を自分自身の価値観と紐づけたうえで、今後会社の中で何をやっていきたいのか

彼らの話、自分自身のやりたいことと組織のやりたいことが紐づけられ、意味づけされていました。

内容もさることながら、なにより驚いたのは彼らの堂々とした振る舞いです。かなり緊張していたと思いますが、とても生き生きとした表情で、それぞれの個性を生かして自分の言葉で自信をもって話している姿がとても印象的でした。

どんな問いを間に置くか

入社したばかりで希望に溢れているという事実はあるにせよ、彼らの在り方、発信するメッセージからは確実に会社へのエンゲージメントが感じられます。何より、彼ら個人の目的と会社の目的がしっかり紐づいていることが感じられます。

いったいどうしてわずか1ヵ月半の期間でこのような状態が実現したのかに興味をもった私は、新卒研修の責任者に話を聞きました。

新卒メンバーには、新卒3年目の先輩社員が一人ずつメンターとしてつき、1on1を定期的に実施しています。

発表に向けて、特別な指示やアドバイスは特にしていないということでしたが、彼らとの1on1では、ずっと以下のことについて対話し続けてきたといいます。

  • 自分の強みは何だろうか?
  • 自分から見た会社の魅力は何だろうか?
  • 周囲にどんな影響を与えられるだろうか?

社会人1年目の研修と言えば、学ぶこと(インプット)が中心になるでしょう。それは弊社も同じです。しかし、その中でも、メンター社員との1on1や新卒メンバー同士でも、自分の強みは何か、どんな影響を与えられるのかについて、ずっと話し続けていたようです。

この話を聞いて、1on1で話すときに、二人の間にどんな問いを間に置くかによって、その成果は大きく変わるのだと思いました。

さらに、メンターを担当していた先輩社員たちも新卒社員との関わりの中で、大きく成長したと感じます。「共に成長しよう」というスタンスも、大事な要素なのかもしれません。

* * *

1on1には「こうすればうまくいく」という正解はないかもしれません。ただ、次の問いは、もしかしたら、1on1をうまくいかせるためのヒントになるかもしれません。

1on1は、誰のための時間なのか?
どんな問いを間に置くのか?
共にどんな変化をつくろうとしているのか?

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