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「今ここ」を食べる、聞く、話す

「今ここ」を食べる、聞く、話す
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「片桐さん、老化が進んでいます」

私が定期的に通っているアンチエイジングのクリニックで言われた言葉です。このクリニックは「ごきげんに125歳まで生きる」というコンセプトで、美容的な外見の若さではなく、年齢を重ねても心身ともに健康な状態を維持することを目的とした医療を提供しています。また、このクリニックには専門的なコーチングのトレーニングを受けたスタッフが在籍し、クライアントの健康維持のためのメディカルコーチングをしてくれます。

私自身、エグゼクティブコーチ、執行役員といった会社での仕事と、子育てを含むプライベートな生活のどちらも楽しくごきげんに全うすべく、定期的に検査を受けて、健康状態を良好に維持するためのコーチングを受けています。冒頭のメッセージは、半年前にそのコーチングの中でもらったフィードバックです。

「生きているもの」を食べる

恥ずかしながら、この10年間、私の検査結果は常に「要注意!」のコメントで埋め尽くされてきました。半年前、コーチは真剣に私の目を見て言いました。

「片桐さん、そろそろ本当に変えていきませんか?」

これまで結果に真剣に向き合ってこなかった私に、最後通告と言わんばかりの表情。

「そんなに、悪い状態ですか?」

「いや、もっと悪い状態の時もありましたが、今日は変えてみよう、向き合ってみようという意思を感じるので」

自分の身体にとても鈍感な私でも、その頃はとくに不眠が続いており、なんとなくこのままだとまずい感覚がありました。その精神状態を察したのか、コーチはいくつかの具体的な行動を示してくれました。

その中の一つが、「生きているものを食べる」ことです。

「加工したり、乾燥させたりしたものではなく、できるだけ生えているまま、生きているままのものを食べてみてください。サプリメントもそうですが、野菜ジュースや栄養ドリンクはあくまでも補助的なモノにすぎません。身体をイキイキとしたエネルギー溢れる状態にするには、生きたエネルギーのインプットを意識しましょう」

それまでの私は、ランチはさっと済ませられるように、パンと牛乳だけ。エネルギーが出ないなと感じたら、栄養ドリンクやサプリで補完するといった具合で、日々の食事を振り返ると、加工されたもの乾いたものしか食べていません。言われてみれば、たしかにそんなものを食していて、体にみずみずしさや若々しさが生まれるイメージはもてません。

若々しくいるために、イキイキとしたものを食べる。

医学的な根拠や論理性はさておき、イメージとして腹落ちした私は、さっそくランチには必ず生野菜のサラダを加える、サラダが難しい場合は果物を食べる、という具合に、ランチメニューの見直しを始めました。

組織も老化する

老化は、人間だけの話ではありません。組織にも、老化と思えるような現象が見られます。たとえば、組織の中にこんな状況がみられたら、老化が進んでいるサインかもしれません。

  • ごきげんうかがいが横行している
  • 本当かどうかわからない噂話をあちこちで耳にする
  • 過去のデータや事象に目を向け、問題の原因を探している
  • 過去の印象で相手にレッテルを貼ったまま関係性を更新しようとしていない
  • 「どうせ」「無駄」「今までは」「そこそこに」といった言葉にあふれている

反対に、若々しくイキイキした組織は、こんな特徴があるのではないでしょうか。

  • ごきげんな挨拶が交わされている
  • 本当はどうかわからないながらも、一人ひとりが意見や主観を伝え合っている
  • 「今ここ」に目を向け、うまくいく方法を探している
  • 過去の印象を脇に置き、目の前の相手に好奇心を持つ
  • 「やってみよう」「一緒にやろう」「他にうまくいく考えは?」「最高の状況とは?」といった問いにあふれている

ご自身の組織を振り返ってみて、いかがでしょうか? あなたの組織は、老化に向かっているでしょうか? それとも、若々しさをキープし続けられるような状態にあるでしょうか?

「若々しくいるために、イキイキとしたものを食べる」

この視点は私に、自分の体の状態だけでなく、組織の状態を若く保つためのヒントをくれました。組織の中に生きた会話、生きたコミュニケーションがあるかどうかが、組織の若さを測る指標になりそうです。

「今ここ」のコミュニケーション

国際コーチング連盟(ICF: International Coaching Federation)が定めるコーチのコア・コンピテンシーの中に、「今ここにあり続ける」というコンピテンシーがあります。

その定義は「開放的で柔軟性があり、安定していて自信に溢れる態度を以って、クライアントに対して最大限に意識を向け、今ここに共に在り続けていること」。

具体的には次のようなことが書かれています。

  • 相手に対して、常に集中・観察・共感し、対応し続けている
  • 好奇心をもって相手に接している
  • 相手の強い感情に自信をもって向き合っている

「今ここ」に目を向け、自分や相手の意識や感情を重視する姿勢でのコミュニケーションは、汗が出たり、心がざわついたり、面倒くさかったりするものです。しかし、ただ業務や課題、客観データや情報についてだけ話すよりは、明らかに「生きている」実感がありそうです。

こうした躍動感のある生きたコミュニケーションを意図的に創りだすことが、組織を若々しくイキイキとした状態にするために重要な「リーダーのあり方」といえるのではないでしょうか。さらにいえば、「今ここ」に根差すコミュニケーションは、私たち自身の心身を若く保つことにもつながるような気がします。

世代交代ができていないから、若い人の割合が少ないから、といった理由は、組織の老化の原因ではありません。「年を重ねること」と、機能低下やエネルギー低下を意味する「老化」が違うように、組織も、リーダーや社員一人ひとりの意思をもって老化を防ぎ若く保つことが可能なはずです。

早く老化したいと願う人は、決して多くはないでしょう。

そんな社員やメンバーに対して、どんな関わり、コミュニケーションができるでしょうか。「今ここ」の自分の状態や相手の状態を意識したとき、これまでとどんな違いが生まれる可能性があるでしょうか。

私の、生きたものを食べる取り組みの成果を測る血液検査は来月。半年間の成果がどう出ているか結果が楽しみです。

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