Coach's VIEW

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ごきげんに生きる

ごきげんに生きる
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他者と向かい合うとき、私たちには「二極化」が起こりがちです。ここでいう「二極化」とは、「自分」と「相手」という関係性を前提に、「相手よりも自分の方が優位(正しい)でありたい」という意識に「無意識に」囚われてしまうことです。結果として、勝ち負けにこだわってしまう。そうなると、

どちらが上で、どちらが下か?
自分は下に見られていないか?
どちらの言っていることが正しいのか?

などが気になります。

さらに進んで、相手を否定することで自分の正しさを証明しようとしたり、あるいは、意図的に自分を卑下することで、そうしている自分の方が正しいという感覚を得ようとしたりするなど、私たちは様々な方法で自分の「正しさ」にこだわり、それを証明することに忙しくなってしまう。

私は、日々、幸せでいたい、「ごきげん」でいたいと思っているのですが、そうならない時がときどきあります。この二極化という現象は、「ごきげん」でいられなくなる代表的な原因の一つです。

私たちは常に疑っている

そもそも私たちの脳は、自分自身を守るために「疑う」という機能をもっています。人と向き合うと「二極化」が起こるのは、そのためです。しかし、同時に、無意識のうちにその「疑い」は、自分自身にも向けられています。

振り返ってみれば、私たちはほとんどの時間、

これでいいのかな?
大丈夫なのかな?

と、自分には問題のないことをチェックし続けているわけです。でも、チェックしているということは、つまりいつでも「不安」な状態にいるということです。

ただでさえ「不安」でいるところに他者が登場すると、それは「比較」という刺激になり、「不安」が増幅されてしまいます。でも、「不安」のままではいたくないので、何とか不安を解消し、「自分はこれでいいのだ!」と思い込むために、自分の「正しさ」の証明にこだわってしまうのです。

それは、人と関わるときに私たちが落ちやすい落とし穴です。

本来、相手との関わりを求めているはずなのに、「自分の正しさ」を証明しようとした瞬間、目の前にいる人は、自分の正しさを証明するための道具と化してしまうからです。相手は道具となり、その場にいっしょにいても「いない人」となってしまうからです。道具であれば、その人である必要もないわけですから。

今以上の幸せを創り出す

2024年に、私は役職定年を迎えることになり、改めて自分の今後の生き方を考える毎日が続いています。それは改めて、自分にとって「コーチング」とは何かを考えるいい機会になっています。

私が、初めてコーチングに出会ったのは、1997年のことでした。この年の3月、当時のコーチ・ユニバーシティ(現コーチ・ユー)の副社長だったデビッド・ゴールドスミス氏が来日し、日本で初めてのコーチングのワークショップが開催されました。

いま振り返ると、当時のコーチングは、コミュニケーションのスキルに焦点が当たっていたように思います。そのワークショップでのコーチングの印象も、私たちが感覚的にやっているコミュニケーションが、とてもうまく言語化、体系化されているというものでした。

その後、「対話によって相手の目標達成をサポートする」というパーソナル・コーチングは、それを専門に行う職業として認知され、世界中で多くのプロフェッショナルコーチが誕生しました。コーチングの認知が高まってくると、今度はビジネスの現場で、エグゼクティブ・コーチングや、コーチングマネジメントとして進化し、さらにコーチングを使った「人材開発」から、対話型の「組織開発」へと発展を遂げ、現在に至ります。

このように、コーチングの活用される領域が広がっても、変わらないことがあります。それは、コーチングの原点が「今以上の幸せを創り出すこと」にあることです。

「目標達成」「自発性」「主体性」「人との関係性」「対話型組織開発」などの要素は、その実現のためにあるといっていいでしょう。

「コーチというあり方」を選ぶ

そう考えると、たとえ目標が達成されたとしても、もしそこで「ごきげん」が損なわれているなら、それはコーチングとして成功しているとは言えないのではないでしょうか。

お互いの幸せ。
お互いのごきげん。

それは、なんとなくその場をやり過ごして手に入るものではありません。相手を不機嫌にしないことを優先し、本当は言ったほうが相手のためだと知りながらも黙っていれば、その瞬間の「ごきげん」は担保されるかもしれません。でも、そのあとに訪れる「嫌な感じ」は、身に覚えのある人も多いのではないでしょうか。

お互いに耳に痛いことも聞く、伝え合う。その瞬間はぎくしゃくしたとしても、すがすがしさにつながる関わり。それこそが本当の意味での「ごきげん」です。そのためには「自分の心に誠実であること」が大切なのだと思います。

コーチングでは、傾聴、質問、アクノレッジなどのコーチングスキルが注目されがちです。しかし、コーチングの原点としての目標は、相手も、自分も、その周囲も、ごきげんな状態をつくることです。スキルはそのための手段に過ぎません。

相手をうまくいかせる。

コーチとして、この大原則を思い出すことができれば、冒頭の「二極化」の落とし穴に落ちることはありません。そう考えると、コーチとして大切なことはスキルより何より、「コーチというあり方」を選び続けることにあるのだと思います。

もし、今日が地球最後の日だとしたら、あなたは何をしますか?

これは、よくある問いですが、かつてこの問いに対して本気で考えたことがあります。そのときに出てきた答えは「家族と一緒に、全く普通の一日を過ごす」というものでした。

私にとっての幸せは、もう一度「コーチというあり方」を選ぶことなのかもしれません。

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