Coach's VIEW

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コンサルタントとコーチ

コンサルタントとコーチ
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弊社では、コーチ・エィという会社を多くの方に知っていただくことを目的に、YouTubeを使った発信を始めました。私も『コンサル出身コーチ集結』(※1)という回で、コンサルティングファーム出身の弊社コーチたちと座談会を行いました。

私は、新卒から約20年間アクセンチュア株式会社に勤務し、その後コーチに転身しました。このコラムでも、改めて「コンサルタントとコーチ」について考えてみようと思います。

20年で大きく変わったコンサルティング業界

私が新卒だった頃、コンサルティングはメジャーな業界ではありませんでした。しかしいまや、コンサルティングファームは多くの企業のパートナーとなっており、世の中に大きな影響を与えています。

実際、私の入社した当時のアクセンチュアは、日本では社員2,000人、グローバルで75,000人の会社でしたが、いまや日本で2万人以上、グローバルでは70万人以上の規模です。

週刊ダイヤモンドの『コンサル大解剖』によると、東京大学から210名がコンサル業界に就職し、なんと就職先トップはアクセンチュア(57名)とのこと(※2)。先日、息子の保護者説明会に行ったときも、卒業生の就職先としてまずアクセンチュアの名前が出てきたことに驚きました。

コンサルティングとコーチングの歴史

まず、コンサルティングとコーチングの歴史を振り返ります。

『コンサル100年史』には、経営コンサルタントはフレデリック・テイラーから始まったと書かれています(※3)。テイラーは、「科学的管理法」を提唱し、1911年に集大成として『科学的管理法の原理』を発表。各国の産業界に大きな影響を及ぼしました。その後、1926年にマッキンゼーが設立され、マービン・バウワーが経営コンサルティングの基盤を作ったとされます。

1970年代には米国のコンサルティングファームの日本支社が設立されており、コンサルティングは、グローバルで100年以上、日本では50年以上の歴史があります。

一方のコーチングです。『コーチングのすべて』(※4)によると、もともと主にスポーツで活用されていたコーチングが、1974年に転換点を迎えました。その年に出版されたティモシー・ガルウェイの『新インナーゲーム』(※5)がきっかけです。1990年代には、現在のCoach Uを創業したトマス・レナードを中心に、主にアメリカで発展。1995年頃には企業で活用されるようになり、大企業としてコーチングを本格的に導入したのはIBMといわれます。

日本では、弊社の前身であるコーチ・トゥエンティワンが設立されたのが1997年です。企業での活用は、世界では約50年、日本ではまだ30年も経っていません。

コンサルティングと比較するとコーチングの歴史は浅いものの、最近では大企業の組織変革に活用されるようになってきています。今後、コンサルティングのように世の中に大きな影響を与える存在になっていくのではないかと期待が膨らみます。

コンサルティングとコーチングの違い

両者の違いについては、まともに書くとそれだけで一冊の本が書けそうですが、シンプルには、以下のように整理することができます。

組織のありたい姿・目指すゴールに向けて組織を変革する上では、「戦略・仕組み」が必要です。しかし、どんなにいい戦略や仕組みがあっても、それを動かすのは「人」です。そう考えると、「仕組み・戦略」と「人・関係性」は、組織を変革する両輪と考えられます。

さらに、コンサルティングとコーチングを、目的やアプローチなどの切り口で対比して示したのが以下の図です。

大きくは、「コト」を扱うのか「ヒト」を扱うのかの違いとも言えるかもしれません。

組織変革において「戦略・仕組み」には多くの投資がされます、一方で、「人・関係性」は同じぐらい重要なはずなのに、どこか見過ごされがちではないでしょうか。

私には、前職時代に組織変革における両輪の大切さを強く感じた苦い経験があります。

あるプロジェクトで、基幹システムの刷新から情報系システム、それから業務の変革を行うトランスフォーメーション・プロジェクトの責任者を務めていました。

3ヵ月で戦略を立て、先方のCEOにも承認いただいて実行フェーズに入りましたが、理屈上ではうまくいくはずだったものが大失敗しました。現場から「なぜ変えなくてはならないのか」という大きな抵抗に遭ったのです。

それをきっかけに、クライアント側のプロジェクト推進チームも自信を失ってしまい、我々との信頼関係も崩れていきました。その結果として、当初の計画の倍の時間がかかってしまったのです。

コンサルタントとコーチのコラボレーションの可能性

ジェームズ・オトゥールという教授が提唱した「変革を拒む33の憶見(おっけん)」によると、人が変化に抵抗する理由は33個あると言われます(※6)。

  • 自分は間違っていないというエゴやプライド
  • 価値観の違いによる対立
  • 変化に対する不安や恐れ
  • 誰かがやってくれるだろうという当事者意識の欠如 など

こうした人の主観に絡む、正解のない厄介な問題は、組織変革を阻害しスピードを落とします。

その点で、コーチングには大きな可能性があると考えています。人の主観を排除したり、抑えつけたりするのではなく、その力も活用しながら、コラボレーション、共創の可能性を探る。コーチングには「ヒト」の意識や行動に変革を起こす力があります。

実際に「コーチ・エィさんには、変革に向けたエネルギー・火を起こし続けることを支援してほしい。戦略や仕組みは自分たちや他でやるから」と、うまくコンサルタントとコーチを使い分けられているお客様もいらっしゃいます。

コーチ・エィに入社以来、私がずっとやりたいと思っていることがあります。それはコンサルタントとコーチのコラボレーションです。今年は、小さいながらもそうした事例をつくることができました。

コンサルティングが広く世の中に受け入れられるようになったように、組織変革にコーチングが活用されることが当たり前になり、コンサルタントとコーチがコラボレーションする。そして、日本企業の変革を今よりもっともっと促進させ、グローバルにおけるプレゼンスを高めることに寄与していく。

そんな未来を思い描くと心からワクワクします。コンサルタントとコーチの両方を経験している自分だからこそ、その未来につながるように多くの仲間やお客様と、ともに取り組んでいきたいと思います。

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【参考資料】
※1 コーチ・エィ公式YouTubeチャンネル、『【コンサルコーチ集結】なぜコーチに転職したのか? 組織開発の選択肢としてコーチングを選んだ理由とは?
※2 ダイヤモンド編集部(著)、週刊ダイヤモンド『コンサル大解剖』、ダイヤモンド社、2024年6/22号
※3 並木裕太(著)、『コンサル100年史』、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2015年
※4 ジョセフ・オコナー、アンドレア・ラゲス(著)、杉井要一郎(訳)、『コーチングのすべて――その成り立ち・流派・理論から実践の指針まで』、英治出版、2012年
※5 W.T.ガルウェイ(著)、後藤新弥(翻訳)、『新インナーゲーム』、日刊スポーツPRESS、2000年
※6 「変革を拒む33の憶見」は、デンバー大学ダニエルズ・カレッジ・オブ・ビジネス教授のジェームズ・オトゥールが、周囲が自分に反対して組織変革が進まない時に眺めるべき表として作成したもの。

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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