Coach's VIEW

Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。


私を魅了するコーチング

私を魅了するコーチング
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私がコーチ・エィに入社してから、今年で12年です。以前は3~5年という短いスパンで転職をしていた私が、なぜ飽きずにコーチングを学び続け、より意欲的にコーチという仕事を続けられているのか。今日は、私の感じるコーチングの魅力を思いきり語りたいと思います。

コーチングは組織を変え得るのか?

コーチングに魅力を感じる大きな理由の一つは、個人と組織の変化は不可分だとコーチングを通して実感できることです。

コーチ・エィは、チームで企業の組織変革の支援を行っています。私もこれまで大きな組織変革のプロジェクトを複数担当してきました。自らがコーチとして参加する他、プロジェクト・マネージャーとしてプロジェクトの運営を担うこともあります。プロジェクトに携わりながら、組織内のクライアント一人ひとりは目標を定め、行動を起こし、変化しているにもかかわらず、個々の変化の総和と等しい変化が組織全体には起こっていない、という違和感をもつことがありました。(※ クライアントとは、コーチングを受ける人 のことを指します。)

そんなタイミングで、コーチ・エィのコーチング研究所が、興味深いデータを発表しました。それは、組織の変化との相関が高いのは、変革を牽引するリーダー個人の影響力よりも「社員間のつながり」であるというデータです。

図1

変革を目指す多くの組織は、未来に向けて社内に新しい発想や行動が増えることを求めています。そして変革を牽引するリーダーたちに、コーチングをはじめさまざまな支援を行いますが、リーダー個人の能力が上がるだけでは変革には不十分だというのです。このデータは、クライアント個人に焦点を当てていた私をハッとさせると同時に「クライアント個人へのコーチングを通して、どのように社員間のつながりまで生み出していくことができるのか?」という問いを残しました。

定義の変化がもたらしたコーチングの変化

コーチ・エィは、2020年にコーチングの定義を刷新しました。

「コーチングとは、対話を通して、クライアントの目標達成に向けた能力、リソース、可能性を最大化するプロセスである」

それ以前のコーチ・エィのコーチングの定義は、次の通りです。

「コーチングとは、クライアントの目標達成に必要な知識、スキル、ツールが何であるかを棚卸しし、それをテーラーメイド(個別対応)で備えさせるプロセスである」でした。

コーチ・エィは、組織開発に関する世界中の最先端の知見にアクセスし、コーチングの哲学とプログラムをアップデートし続けています。この定義の変更の背景には、とくに「対話型組織開発」のジャーヴィス・R・ブッシュ氏、ロバート・J・マーシャク氏や、社会構成主義の第一人者のケネス・J・ガーゲン氏等の概念があります。

この定義変更は、私のコーチングに変化をもたらしました。そして、先に抱いた「コーチングによって社員間のつながりをどう生み出すか」という問いにも答えを与えてくれました。

まず「対話を通して」という言葉が入ったことで、私自身のコーチの存在の捉え方が「質問する人」から「対話に参加している人」とガラリと切り替わりました。対話なので、クライアントとコーチの双方が、自分の経験や解釈、価値観をコーチングセッションに持ち込みます。お互いが持ち込んだことに刺激を受け、コーチングの中でお互いの思考、視点、アイディアが拡張していく楽しさが生まれるようになりました。

さらにはクライアントに「このような対話を、周囲の誰と試してみたいですか?」と問いかけるようになり、クライアントが周囲の人との関わりにチャレンジすることが増えるようになりました。コーチングの定義の変更が、クライアントの周囲との関わりに変化をもたらしたのです。

コーチングの定義の変更が私自身のコーチングに変化をもたらしたことは、実際のデータでも確認することができます。

表1

[調査対象:コーチ・エィのプログラムでコーチングを学習した77名から職場内でコーチングを受けた322名 / 調査内容:D-meterにおける「リーダーとしての意識や行動(10項目)」 / 回答形式:7段階回答(1.全くあてはまらない~7.とてもよくあてはまる) / 調査期間:2021年3月~2024年3月] コーチング研究所 2024年
注意:・アセスメント項目(D-meter)に関する著作権その他一切の権利は株式会社コーチ・エィに帰属します。・本資料に掲載している質問紙の複製,改変,転写,転載,改ざん,二次利用,部分利用及びこれらに準ずる行為を固く禁じます。

表1は、私が組織変革を支援している複数の医療機関のプロジェクトで実施しているアンケート結果の分析です。全職種で「目標達成に向けた新たな関係構築」が変化度1,2位に入っており、コーチングによって「社員間のつながり」を起こせるようになった手応えを感じました。

コーチングによる個人の変化は、組織の変化に確実につながっていく。コーチとしてそれを体感したことは、コーチングにハマるきっかけになりました。

コーチングが可能にする自己変容

もう一つの魅力は、自らが成長し変化、成長し続けることで、コーチとしてクライアントへの提供価値を最大化することのできる仕事だということです。

『なぜ人と組織は変われないのか』という本で、著者のロバート・キーガン氏は成人発達理論の中の「知性の三段階」を紹介しています(図2)。

図2

※「『成人発達理論』を活用して、多様化する人材をマネジメントする方法とは」より引用

キーガン氏は、最後の「自己変容型」に至っている人は成人の1%だといいます。その観点からいえば、組織のリーダーの多くは「自己主導型」の段階にいるといえるのではないでしょうか。もちろん私もその一人です。

対話の場には、対話に参加している人たちが、お互いに自分の経験や解釈、価値観を持ち込みます。そこには楽しさもありますが、自分が持ち込んだものを否定される可能性もあれば、自分のレベルをさらけ出す怖さもあります。また、対話の場に持ち込まれたものから新しい解釈を見出すことを、自分の無自覚な固定概念が邪魔することもあります。

キーガン氏は本の中で、知性の発達により、これらの恐れや障害を乗り越え、多くの人とより高い次元で相互に理解し合い、成功をつくり出し、精神的に幸せで自由になれるといいます。そして、知性の発達にはコーチングが寄与することも紹介しています。

私は「自己変容型」の域に達することを、私のコーチと共に目指したいです。そして、私のクライアントにも一緒に挑戦することに誘いたいと思います。

コーチングは、私を「人としての成長」に向き合わせてくれ、私の人生をより豊かにしてくれています。コーチングで、多くの人により豊かな人生と幸せをもたらすことを心から願い、自分自身のコーチとしての洗練の旅を続けていきたいです。

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【参考資料】
・ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー (著)、池村千秋 (翻訳)、『なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流 自己変革の理論と実践』、英治出版、2013年
・佐藤彰、「成人発達理論」を活用して、多様化する人材をマネジメントする方法とは、UPGRADE、2022.5.24

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