書籍紹介


「10年右肩下がり」をV字回復させた20代社長の超・現場主義
ミスターミニット代表取締役社長 迫 俊亮 氏

第2回 リーダーが常に心がけておかなければならない大切な要素

第2回 リーダーが常に心がけておかなければならない大切な要素

弱冠29歳で社長に就任し、
「10年連続右肩下がり」
「鬱で休職&退職の管理職続出」
「新サービスはすべて失敗」
「経営と現場は完全に相互不信」

......という典型的なダメ会社だったミスターミニットを見事V字回復に導いた迫俊亮氏。なぜ、社長一年生だった迫氏が改革に成功したのか。その秘訣はただひとつ、「現場中心の会社づくり」にあった。

本連載では新刊『やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力』でも語られた、社員が自ら動き出す「リーダーシップ」と「仕組み」を再編集し、お届けしていく。

部下との関係に悩むすべての営業リーダー・管理職必読!

第1回 「現場を知らない経営陣」が会社をダメにする
第2回 リーダーが常に心がけて置かなければならない大切な要素
第3回 「うーん、ウザい」でぶち壊された、僕のリーダーシップ像

前回は、私がどのようにミスターミニットが長年抱えた問題を認識し、現場の職員とコミュニケーションの場である喫煙所に参加するために、葉巻をも吸い始めたことをお話した。第2回となる今回は更に踏み込んで、現場と私がどのように共通言語をもつようになったか、そして現場の社員をどのように活性化させていったのかに関してお話したい。

社員との間に共通言語を作る

白状すると、僕はミスターミニットに入社する前、とりたてて靴が好きなわけではなかった。前職ではそもそもほとんどスーツを着ていなかったので、革靴なんて1足しか持っていなかったのだ。そこで入社前、少しは靴について勉強しなければと、なけなしの貯金をすべて握りしめてイギリスとフランスとイタリアを回り、工房で職人に話を聞き、一気に12足ほど購入した。

すると不思議なもので、いままでまったく興味がなかったはずの靴の世界に、俄然興味が湧いてくる。知れば知るほどその奥深さに魅せられ、それからは自宅の玄関の靴箱が溢れるほど靴にはまってしまった。

「意志で好きになる」......というと、計算高い印象を与えるかもしれない。しかし、その世界の最高峰のものに触れたり、その世界が好きでたまらない人にレクチャーを受けたり、「聖地」と呼ばれる場所に行ったりすれば自然と興味をもち、 好きになれるものだ。また、こうして僕が靴を好きになったことは、図らずも現場の社員とのコミュニケーションにも活かすことができた。お手入れ方法を教えてもらったり、好きな靴について話した り......。「靴」や「ファッション」という共通言語ができたのだ。

基本的に、ミスターミニットの社員は、職人気質だ。休みの日もひたすら靴を磨いているとか、匂いを嗅いだだけでどの糊やゴムか当てられるといった「靴オタク」も少なくない。そんな彼らが、僕が靴やファッションが好きだというだけで話しかけてくれたり喜んでくれたりするのは、こちらも嬉しかった。アパレルなら洋服、ウェブサービスならIT、出版社なら雑誌......。その事業が好きな人が集まっているような会社なら、なおさら「好き」は共通言語となるはずだ。

人事は会社のガソリンである

現場で働く社員との間にコミュニケーションの場をもった私は、「ミスターミニット再生のカギは現場にあり、人にある」という思いのもと、「店舗への追加人員投入」を一丁目一番地の施策として位置づけた。しかしそこから、さらに「仕組み」そのものの抜本的改革も不可欠だった。その中でも人事評価制度は組織にとってガソリンとなる。質の高い制度があれば、社員は目に見えて活性化されていく。

僕が入社したときのミスターミニットの人事評価制度は、複雑怪奇、細かすぎて誰も理解できないものだった。さながら幕の内弁当のように、いろいろ盛り込まれてはいるけれど、結局何がメインなのかよくわからなかった。「どんな社員になるべきか」が伝わりにくいから、社員が評価基準を意識することもなかった。まずは、から揚げ弁当を目指すのか、のり弁当を目指すのか、というところから決めなければならない。評価制度の「選択と集中」として、会社の存在意義とも言える「お客様が喜んでくださる行い」と、より強みを活かすべく「ミスターミニット『らしい』行い」の2点に評価基準を絞り込んだ。

新しい評価制度の作成作業は、現場を熟知している現場出身のリーダーたちに任せた。彼らに伝えたのは「シンプルで現場が頑張ろうと思える制度にしてください」だけ。また、すでに現場感覚を十分にもつ彼らだが、より最適解を目指すため、あらゆる年代や階層、エリアの社員には「どんな制度にすればモチベーションが上がるのか」を、リーダーたちには「どんな人を出世させたいか」もヒアリングしてもらった。その結果できた評価基準は以下の4つである。

  • 明るく気持ちよく接客する
  • 満足していただけるサービスを提供するための技術力を身につける
  • 人を育てる
  • 新しいことに挑戦する

これを意識していれば、しかるべき評価が得られるというわけだ。これまで細かく基準分けされていた技術評価に関しても、現場のリーダーを尊重し「彼らが合格と言えば合格」というざっくりとした基準へと変わった。

スター社員を一人でも多く生み出す

さて、「良質なガソリン」としての人事制度を生み出すことができても、それでリーダーの仕事が終わるわけではない。社員たちのロールモデル、憧れとなるようなスター社員を生み出し、現場の活性化を続けなければいけない。そしてそのためには

「ええっ! あいつがマネジャーになったの!?」

そんな驚きを伴う抜擢人事が欠かせない。入社して日が浅くても、昇格条件を満たしていなくても、心から「やりたい!」という気もちと現場での評価のある人を、大きく引き上げてしまうのだ。

僕は社長になってしばらくは、自ら率先して、そして人事権を委譲してからも、意識的に「いままであり得なかった」抜擢人事を推奨する空気をつくっていった。抜擢人事のいいところは、ついこの前まで同じ舞台で同じ役職だった仲間がスターになって活躍し、「自分もあの舞台に立ちたい!」「頑張れば自分もスターになれるかもしれない!」とみんなが期待し、全体が盛り上がるところだ。適切なチャンスは、組織を活性化する。いわば毎日がオーディションのようなものだから、張り切り甲斐だってある。そう、スターを一人でも多く生み出すことが、リーダーの大切な仕事であり、自分がスターになろうとする必要はまったくないのだ。

ただし、抜擢人事はリスクでもあることを忘れてはいけない。実力以上のポストに抜擢されても、サポートされずに放置されれば、その多くは失敗してしまう。そうして失敗した人がたくさん生まれると、「ああはなりたくない」「抜擢されたくない」という空気が蔓延してしまう。そうならないためにも抜擢人事を行ううえでは「ケア(CARE)」と呼ばれるようなフォローアップの仕組みが不可欠となってくるのだ。

CAREとは

  • C=Capability (ケイパビリティ、能力)
  • A=Authority (オーソリティ、権限)
  • R=Responsibility (レスポンシビリティ、責任)
  • E=Evaluation (エバリュエーション、評価)

の4つの頭文字であり、「当人の能力に合わせてフォローアップし(Capability)、適切かつ思い切った権限委譲を行い(Authority)、その責任を明確にした上で(Responsibility)、納得のいく評価とフィードバックが高頻度でなされる(Evaluation)こと」。

この4つが揃ったときに初めて「ケアができている」、すなわち抜擢人事が適切に機能する状態となる。抜擢されたからといって、みんながすぐに活躍できるわけではない。いや、初めから万事うまく行く人なんて、ほとんどいないだろう。研修を受けてもらったり、抜擢した人が責任をもって、引き上げた人の能力開発をしたり、適切な評価を与えたり、期待の言葉をかけたりすることで、少しずつ資質が花開く。そうして「スター社員」になっていくのだ。だから、「新米スター社員」として活躍させることができるか、それとも「元スター社員候補」にして潰してしまうのかは、抜擢した側の責任だと僕は思っている。

「CARE」は、リーダーが常に心がけて置かなければならない大切な要素だ。

(第3回へつづく)

[やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力より一部抜粋・加筆]

やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力
戦略よりロジックより、大切なものがある。

著者:迫俊亮
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2017/1/26


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