書籍紹介


「10年右肩下がり」をV字回復させた20代社長の超・現場主義
ミスターミニット代表取締役社長 迫 俊亮 氏

第3回 「うーん、ウザい」でぶち壊された、僕のリーダーシップ像

第3回 「うーん、ウザい」でぶち壊された、僕のリーダーシップ像

弱冠29歳で社長に就任し、
「10年連続右肩下がり」
「鬱で休職&退職の管理職続出」
「新サービスはすべて失敗」
「経営と現場は完全に相互不信」

......という典型的なダメ会社だったミスターミニットを見事V字回復に導いた迫俊亮氏。なぜ、社長一年生だった迫氏が改革に成功したのか。その秘訣はただひとつ、「現場中心の会社づくり」にあった。

本連載では新刊『やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力』でも語られた、社員が自ら動き出す「リーダーシップ」と「仕組み」を再編集し、お届けしていく。

部下との関係に悩むすべての営業リーダー・管理職必読!

第1回 「現場を知らない経営陣」が会社をダメにする
第2回 リーダーが常に心がけて置かなければならない大切な要素
第3回 「うーん、ウザい」でぶち壊された、僕のリーダーシップ像

3回目となる今回は、会社におけるリーダーシップの重要性についてお話したい。会社を正しく機能させるために、さまざまな仕組みづくりや戦略が重要であることは間違いない。しかし、それにも優先して重要なのは、組織においてリーダーシップを発揮することだと思う。そのために、私の考えるリーダーシップとその発揮の仕方について考えてみたい。

リーダーシップを発揮すること

多くの人が、会社を立て直すのに必要なのは「一朝一夕では身につかないリーダーシップより、すぐに結果が現れる戦略や仕組みの作り直し」だと考える。私自身も、ロジカルシンキングによって、問題を整理し、それを解決する美しい戦略を、鼻息荒く描いていた。しかしそれは間違いだった。

「うーん、ウザい」

ミスターミニットを改善するための戦略を朗々と語った僕に言い放たれたのは、こんな一言だった。この言葉が僕のリーダーシップに対するイメージをぶち壊してくれたのだ。

29歳で社長になった僕に、ファンドは「誰か一人、メンターをつけましょう」と提案してくれた。そこでメンターになってくださったのがファミリーマートの代表取締役社長でもある澤田隆司さんだった。僕からファンドに依頼して、澤田さんにお願いした。澤田さんは元々ユニクロに勤め、柳井正さんの抜擢により副社長にまで上り詰めたことでも有名な方である。ユニクロを退社後、クリスピー・クリーム・ドーナッツやコールド・ストーン・クリーマリーなどの飲食業を日本に浸透させた、日本有数の経営者だ。そして、敏腕経営者であるだけでなく、深い愛をもっている。社員からも慕われていて、店舗に足を運べばアルバイトの子からも「あ、澤田さん!」と声をかけられるような人だ。

僕は、ミスターミニットの過去と現在の状況から、自分なりにベストだと思える改革プランを一生懸命語った。しかし、その結果澤田さんの口から出たのが「うーん、ウザい」の一言だった。

「靴修理屋の社長じゃなくてさ、マッキンゼーのコンサルタントみたいなんだよね。君の言っていることは多分正しい。でも、いくら正しくても、29歳の社長がいきなり頭の良さそうな正論を語り始めたら、、社員にとってはウザいだけだよね? だれもついてこない。むしろ敵だよ」

その言葉にハッとした。

僕は、経営者の仕事というのは、組織の課題を見つけ、戦略を練り、確実に実行することだと思っていた。正しいことをやれば必ずうまくいく、と。けれど、「論」の正しさをいくら振りかざしても、人はついてきてはくれない、と澤田さんは言う。新米リーダーである僕が最初にしなければならないことは、みんなの信頼を得ることだった。「信頼されるリーダー」にならなければならなかったのだ。

リーダーとは、フォロワーがいる存在である

澤田さんに「ウザい」と言われ、あるべきリーダーシップについて考えているなかで、一つの概念が浮かんだ。

「リーダーとはフォロワーがいる存在である」

フォロワー、つまり支持してくれる人。「leader」の文字通り、ついてきてくれる人だ。信頼してついてきてくれる仲間たちがいなければ、いくら大きな権限をもっていて、役職が高くても、リーダーとは呼べないということでもある。役職は人をリーダーにはしてくれない、人をリーダーにするのは、あくまで回りにいるフォロワーたちなのだ。

では、フォロワーを増やすにはどうすればいいだろうか? 相手から「信頼されよう」と気負う必要はない。こちらが、相手に敬意をもつだけでいい。しかしその敬意は、決してぶれてはならない。そこで僕が意識したのは「100%の敬意を、100%形にする」ことだった。まず、社員への敬意は大前提だ。ただし、たとえ100%の敬意をもっていたとしても、その「表現」に少しでもほころびがあれば、信頼は一気に失われてしまう。だから、リーダーにはオンとオフがあってはならない。四六時中、同じスタンスでいなければ、それは「ウソ」になってしまうからだ。そして、ウソは必ず伝わる。家族と話すときも、友だちと話すときも、頭の先から爪の先まですべての言動に、現場への敬意が込められているから、「本当」になるとも言える。

リーダーから先に部下のリクエストを聞く

僕は、社長になってから半年間近く、ひたすら現場社員の要望に応えていた。傍から見たら、御用聞きか、はたまた小間使いのように見えていたかもしれない。「何か困っていることはないですか?」と声をかけ、「電気が切れている」と言われれば、その場で総務に電話をかける。「ユニフォームがダサいし動きづらい」と言われれば、デザインを刷新する。職人気質の現場社員に少しでも興味を抱いてもらうため、カバンいっぱいに新しい部材のサンプルを詰め込み、一つひとつ試してもらって感触を聞く。「ほかに変えた方がいいものは、ないですか?」「この部材もダメだよ」「じゃあ変えましょう」。

このとき、ROI(投資対効果)や経営的な優先順位は極力考えないようにした。小さな要求から多少コストがかかる要求まで、すべて、そしてなるべく早く実現しまくることだけを意識した。「会社のために自分がすべきこと」は思いつかなくても、「会社にやってほしいこと」なら誰しもが思いつくはず。そう考え、まずは現場の「やってほしい」を集中して叶えようと決めたのだ。

なぜか。

現場を尊重していることを「形」にして示すためだ。

それまでないがしろにされ続け、不信感しかない現場に、共感の気もちを表現するためだ。そしてひいては、リーダーとして信頼してもらうためだった。もちろん、いつまでも御用聞きのままではない。自分を信頼してくれていると感じ始めたころ、こちらのリクエストも伝え始めた。

なんとも地道に思えるかもしれない。しかし、こうして時間をかけて何度か相手の問題解決を繰り返すことで、少しずつ頼ってもらえるようになり、同時に、彼らから情報をもらえるようにもなっていく。また、相手の要望をスピーディに叶えることで、実行力や決断力をもつ人間だとアピールすることもできる。初めから自分がやりたいことを押しつけず、まずは、相手の希望を叶えるところから始めよう。大きな施策に手を出すのは、フォロワーができてからでいい。「自分は何をしてほしいか」を伝える前に、「あなたは何をしてほしいのか」を問うのだ。

リーダーに「自意識」はいらない

前職であるマザーハウスに努めている頃、全速力で走り抜けながらも、ずっとモヤモヤしたものを抱えていたように想う。「自分には、なにか足りないものがある」と感じ続けていた僕は、その「なにか」を探すため、もっと成長しようと考えた。経済学の本を100冊読んだり、アートの学校に通ったり...自分のスキルを高めるためにあらゆる手を尽くした。でも、それが結果に結びついている感覚は乏しかった。その理由は、いまならわかる。

結果を出すためには、「自分の成長」を考える必要がなかったのだ。自分の成長は「事(こと)」に当たることの副産物でしかない。それなのに、その「副産物」を目的にして、とらわれていた。おそらく、口では「マザーハウスを成長させよう!」と言いながら、アートの学校に通う僕の姿に「ブレ」を感じていたメンバーもいたのではないかと思う。リーダーは、自己成長なんて考えなくていい。そんな自意識なんていらないのだ。

同じように、「自分が好きか嫌いか」「やりたいかやりたくないか」も、リーダーは考える必要はない。「自分がやりたいかどうか」ではなく「現場との距離を縮められるかどうか」を叶えるのがリーダーの仕事なのだ。

「現場の力をもっと活かすにはどうすればいいか」
「現場の人が幸せに働くにはどうすればいいか」

ミスターミニットの社長になった僕は、気がつくと自分の成長なんてちっとも考えていなかった。会社を作り直し、大きく成長させることだけを考えていたら、主語が「俺」だったときよりも、ずっとリーダーとしていい働きができている。そして、自分の成長を考えているときより、100%やるべきことに集中している今のほうが、結果的にずっと成長しているのだ。当たり前だが、個人の野心を満たすために組織があるわけではない。リーダーの仕事は、組織の可能性を100%発揮できるよう導くことだ。僕は、現場のみんなによってリーダーにしてもらえた。

本当に、そう思う。

(了)
[やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力より一部抜粋・加筆]

やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力
戦略よりロジックより、大切なものがある。

著者:迫俊亮
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2017/1/26


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