Hello, Coaching! 編集部がピックアップした本の概要を、連載形式でご紹介します。
すばる舎編集部 編集次長 水沼三佳子 氏
【編集者インタビュー前編】一流のリーダーになるために「とにかく黙って聞く」
2017年10月13日
コーチ・エィ 桜井一紀の近著『一流のリーダーほど、しゃべらない』の編集を手掛けられた、すばる舎編集部次長の水沼三佳子氏。桜井へのインタビューを重ねながら、自ら職場でコーチングを実践。その体験が、本作りにどのように反映されていったのか、また、ご自身や組織をどのように変化させていったのかなどについて、著者であるコーチ・エィ 専務取締役 桜井一紀を交えて伺いました。(聞き手はコーチ・エィ広報 大谷恵)
前編 | 一流のリーダーになるために「とにかく黙って聞く」 |
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後編 | 本の制作現場がコーチングで変わる |
なぜ、「しゃべらない」だったのか
本の企画についてご連絡いただいたのは、2016年の初夏でした。どのような思いでこの「しゃべらない」という企画をされたのか、お聞かせいただけますか。
水沼 自分自身がずっと「上司」という立場で仕事をしてきているので、「上司」に向けた本を作りたいという気持ちがありました。長年部下をマネジメントする中で、「自分にはコーチングが必要なのかな」と思い始めたときに、知り合いの紹介で、コーチ・エィさんのプログラム、coachAcademiaの説明会に参加しました。
その時のお話がすごく面白くて。講師の方が、「上司はとにかく黙って聞かなきゃいけないんだ」と言うのを聞いて、「え、え~っ」「結構大変だな」と衝撃を受けました。また、途中で口をはさまずに、相手の話をひたすら「聞く」というエクササイズをやったのですが、「自分は、『聞く』ことが5分間もできないんだ」ということに驚愕しました。「『聞く』には、聞く方法、聞く手段が必要なのだ」といったことにも初めて気づいたんです。
ご自身にコーチングが必要なのでは、と思い始めたのには、どのような背景があるのでしょうか。
水沼 私はどちらかというと、ティーチング型の上司なんです。おせっかいを焼いて、押し過ぎてしまう(笑)。自分ではそれを「よし」としてやってきましたし、私の教育で自分の部署がとてもよく回っているとも思ってきました。でも、振り返ってみると、私がいないと仕事が回らない。そんな状況になっていたんです。それでも、自分では「私は重要人物だ」と思いこみたいところがありました。
でも、あるとき「私はリーダーとしての仕事をしていないのではないか?」とふと思ったんですよね。このままでは次に行けない、とハッとなったんです。
コーチングにはもともと興味がおありだったんですか?
水沼 コーチングとコーチ・エィさんにはとても興味をもっていました。冒頭でお話したcoachAcademiaの説明会で、面白い図がありました。リーダーの能力を「専門力」と「コーチ力」の2軸で分析した関係図です(図1)。さらに、その関係図が示す4つのリーダータイプごとの組織の活性度を示すグラフがありました(図2)。「専門力」と「コーチ力」の両方が高い上司の組織が、一番組織の活性度が高いのは当たり前なのですが、次に高いのが「専門力」は低くても「コーチ力」が高い上司の組織だというのは、かなり衝撃的でした。
自分では、上司に実力があれば部下はそれを学んでついてくるし、伸びていくのかなと思っていたのですが、そんなに甘いものではないなと感じました。
自分自身、10年間上司として仕事をやってきましたが、そろそろ次の段階に行かなければならないと思っています。私はまだまだ二流のリーダーなので、一流になるためには「しゃべらない」というレベルに到達することが必要だと感じます。そして、「しゃべらない」のに、教えないのに、語らないのに、部下が一人前になるというのが理想だな、と思った次第です。
コーチングに関する誤解
著者は最初から桜井をご指名頂きました。当社には、コーチが100人以上いるのですが、なぜ桜井だったのでしょうか?
水沼 そうですね。コーチ・エィさんのコラムをいろいろ読ませていただく中で、桜井さんだけが異色だったんです。なんて言うのか......泥臭い(笑)。私はずっとビジネス書を手掛けてきて、中小企業の方とお仕事をすることも多いのですが、泥臭い人が大好きなんです。
コーチングというと、スマート、エリートといったイメージがあったのですが、桜井さんの文章は、いい意味での泥臭さが出ていて、「偽善的ではない」ところがすごくいいなと思いました。現場をよく知っている感じがいいなあと。
そこで、桜井さんのコラムのよかったところを全部印刷して、社長に見せました。すると「ぜひお願いしてみたら?」という話になり、桜井さんにお願いしたのです。
すごく嬉しいです。「泥臭い」とか「偽善的でない」という点で、何か具体的に思い出すことはありますか。
水沼 私は今まで、コーチングでは理想論的なものを扱うのだと勘違いをしていました。たとえば、「部下の話はちゃんと聞かなくてはいけない」といったものです。ところが、桜井さんは、「でも、僕しゃべっちゃうんだよね」とか「僕も昔こうだったんだ」というように「そう簡単にはやれませんよ」と言ってしまうんです。そういうところに「泥臭さ」を感じました。御社のCoach's VIEWのコラムでも、経験のある上司にとっては、「部下の話を聞こうと思っても、我慢ができない」と桜井さんが書いていらっしゃったのが私には新鮮でした。
恐らく、世の中の上司の方々の多くは、「コーチングが大事なのは知っているけれど、そんなのやれないよね」と思っている。そういう方々の気持ちをすくい取ってくれる。そこが桜井さんのすごいところだと思っています。
桜井 ありがとうございます。
水沼 他にも、「コーチングを選んだらティーチングはやってはいけない」と思っている方も多いように思います。ですから、桜井さんが「両方やっていいんだよ」とおっしゃっていることは、私にとって非常に「目からウロコ」でした。
惚れられない人とは仕事はできない
「他の人ではなく、桜井さんだからお願いをしたい」という、水沼さんの絶対の決めが、私はとても嬉しかったです。
桜井 実は、最初に本のお話をいただいた時は、仕事も増え始めていたので「引き受けてしまって、大変になったら嫌だな」とか「周りの人に迷惑をかけちゃうんじゃないかなあ」という懸念があり、お断りしようかなと思いました。でも、そのときに、「僕に書いて欲しいからこの本を出したい」と言われ、「やっぱり受けよう」と思えたんです。嬉しかったですね。
水沼 私自身は、企画の段階から惚れられない人と仕事はできないんです。長期間にわたる仕事なので。ですから「この人のここがいい、こここそ表に出したい!」という方を選ぶことになります。
桜井 嬉しいですね。
(後編へ続く 10/19掲載予定)
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