プロフェッショナルに聞く

さまざまな分野においてプロフェッショナルとして活躍する方たちに Hello, Coaching! 編集部がインタビューしました。


学校のつくりかた
軽井沢風越学園設立準備財団 理事長 本城慎之介 氏

第1回 学校のつくりかた、チームのつくりかた

第1回 学校のつくりかた、チームのつくりかた
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第1回 学校のつくりかた、チームのつくりかた
第2回 自分を確認して「根」を伸ばした16年
第3回 「根」が伸びるにつれ見えてきたこと
第4回 さまざまな場での経験を糧にして

今回、インタビューをさせていただいた本城慎之介さんは、楽天株式会社の創業メンバーのお一人です。また、2000年初め頃からコーチングを活用されているお一人でもあります。その本城さんが「学校をつくる」と宣言して楽天の副社長を退いたのは2002年のこと。現在、軽井沢で、幼稚園と義務教育学校の設立準備をされています(軽井沢風越学園 2020年4月開設予定)。今回は、本城さんの学校設立の取り組みについて、そこに至る背景も含めてお話を伺いました。

第1回 学校のつくりかた、チームのつくりかた

学校設立に向けて、実際に動き始めたのは2016年のこと。動き始めることができたのは、最初に仲間と出会ってからスタートしたからだと本城さんはおっしゃいます。そのきっかけはコーチからの「誰と一緒にやりたいか」という問いかけだったそうです。

「誰と一緒にやりたいか」

本城さんが「学校をつくる」と宣言して楽天の副社長の職を辞してから、何年くらいになりますか。

本城 16年です。(2018年11月現在)

2020年4月に軽井沢風越学園の開校を控えていらっしゃいますが、これまでの期間は学校設立のための準備期間だったということでしょうか。

本城 準備期間といえば準備期間といえるでしょうか。ただ、学校設立を目指して準備をしてきたというわけではなく、いろいろ試してみたけれどなかなか実現に至らなかったという側面もあります。いま振り返れば「準備」といえるのではないかという感じですね。正確に言うと、いろいろなことを試しながら、自分の立脚点を確認していた時期と言えると思います。

これまで実現に至らなかったことが、具体的に動き始めたのには何か理由があるのでしょうか。

本城 僕はそれこそ楽天時代から今に至るまでずっとコーチをつけているのですが、2016年の1月のセッションでコーチと話したのが大きなきっかけです。1月という月は、その年の抱負を考えたり、数年先の未来のことについて考えたりする機会が多いですよね。コーチとそんなやりとりをしていたのですが、話しているうちに「学校づくりに真剣に取り組まないで死ぬのは後悔する」という想いがバーッと湧き上がってきたんです。

そのときにコーチから問いかけられたのが「学校づくりに真剣に取り組むとしたら、誰と一緒にやってみたいですか?」という質問でした。これまでは「どんな学校を作ろうか」とか「何をしようか」といったことを考えてきたのですが、「誰と?」という発想はしたことがなかった。

コーチにそう聞かれたときに、パッとある人の名前が頭に浮かびました。それが、いま一緒にやっている岩瀬(軽井沢風越学園設立準備財団副理事長)です。彼とは過去に2回会ったことがある程度で、「いつか一緒に学校をつくろう」なんて話していた相手ではない。でも「誰と」と聞かれて、彼の名前が浮かんできて「あ、彼とだったらできる。彼とだったらやってみたい」と思ったんですね。

今回の学校づくりがグッと前に進んだのは2016年9月なのですが、実際に動き出すことができたのは、まず岩瀬をはじめとする仲間と出会うところから始めたからだと思います。

先ほど「これまでの16年間は立脚点を確かめていた時期だった」と言いましたが、その間はずっと一人で考えていたんです。今回はコーチの質問をきっかけに、仲間と共に歩むことができたからこそ前に進んでいくことができました。

仲間と共に進んでいるとのことですが、現在は何人くらいのチームで設立準備をされているのですか。

本城 いまは10人くらいのチームです。チームとしては課題も多く、まだまだ発展途上です。

目指す先より足もとが大事

学校づくりに向けてどんなチームづくりをされているのでしょう。

本城 正直なところ手探りです。でもまあ、対話していくことかな、と思っています。まずは僕と岩瀬で対話をします。「どういう風にしていく?」とか、「今やろうとしているのは、つまりどんなことなんだろう?」とか。それを繰り返しながら、「これはやったほうがいい」、「やらないほうがいい」、「ここはもうちょっとこっちに寄ったほうがいい」という風に決めていきます。ただ、一番の対話の相手は自分自身ですね。

学校の理念といったものも、そうやってつくっていらっしゃるのですか。

本城 実は、そういった「学校理念」のようなものはあまり明確にしたくないと考えています。そういうものがあると、みんな、そっちに向かって行ってしまいますよね。

もしその理念が間違っている、あるいは、少し違っているというときに、みんなが同じ方向を向いていたら全滅してしまいます。であれば、みんなが同じ方向に向かうような理念はないほうがいいのではないかと思うのです。

目指すところとしての「理念」より、いまはむしろ「これは大事にしていこう」「こういうふうに進んでいこう」と、足もとをしっかり固めていくのが大事ではないかと考えています。進み方の共通理解というのでしょうか。たとえば、僕はこっちに行き、岩瀬は違う方向に行ってみて、「そっちはどう?」「何が見えている?」とコミュニケーションを取りながら進んでいく。

「岩瀬の視点からは、今、どんな景色が見えてる?」
「僕のほうからは、こんなふうに見えている」
「そっか、そっか。だったらこの山はもしかしたらこんなかたちなのかもね」

と、やりとりしていき、そこに3人め、4人め、5人めが加わってくれば、山のかたちがもっと立体的になり、全容がわかる。いまは、そういう進め方を大事にしています。

バランスを自らに問いながら

ご自身でおっしゃっていましたが、まさに「手探り」で前に進めていらっしゃるような印象です。

本城 そうですね。混沌とした中で「手探り」で進めていくプロセスが好きです。混沌としたままでいるのも好きだし、面白い。性格的には整理整頓が好きなところがあるせいか、一方で筋道をつけていくのも面白いんです。学校づくりはこの両方が味わえるプロジェクトだと思うし、開校してもその両方を楽しみながら進めていけるといいなと思います。

学校をつくるというプロセスの中には、混沌としたままにしておける部分と、筋道をつけていかないといけない部分の2つの側面があるということですか。

本城 これまでの「認可申請を提出する」というフェーズでの学校づくりは「パワーとスキル」を重視して進めてきました。短期間の勝負ですから「力と技」でググッと進めてきたのです。でも、スタッフも増え、関係者が増えてくるこれからのフェーズの学校づくりは、それに加えて「コミュニケーションとデザイン」の視点も重要になってきます。これからは「混沌としたものを整理整頓して進めていく方向」と「混沌としたものを混沌としたまま進めていく方向」の両方がより求められる状況になるのではないかと思います。

準備段階でももちろん両方の側面があるので、そのバランスを自分の中でうまくとるにはどうしたらいいかが、僕自身の今のテーマです。

バランスを取っていないと、どちらかに傾きそうになるという意味でしょうか。

本城 傾いてもいいんです。傾いてもいいのですが、傾いていることを自覚する。そして、必要だったらその傾きを修整する。物事を進めていく上での問いとして、

「いま、バランスはどうなっている?」
「それって、この場面において本当に適切だろうか?」
「パワーとスキルのほうに行き過ぎてないか?」
「コミュニケーションとデザインを重視し過ぎてないか?」
と、繰り返し繰り返し自問自答しています。

インタビュー実施日 2018年12月14日


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