さまざまな分野においてプロフェッショナルとして活躍する方たちに Hello, Coaching! 編集部がインタビューしました。
【こばかな氏インタビュー】第2章 コーチングはUXが悪い
2020年02月03日
※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
コーチングに関する情報をツイッターやnoteで発信している「こばかな」さんは、THE GUILD所属するUX(ユーザーエクスペリエンス)デザイナー。「コーチングはとてもいいものなので、たくさんの人に知ってもらいたい。だからコーチングの『布教』活動をしています」とのこと。積極的は発信は、コーチングのUX改善の取組みの一環でもあります。
UXデザイナーだからこその観点で「コーチング」について分析するこばかなさんに、コーチングに興味をもった理由や、これからどんなことをしていきたいかなどについてお話をうかがいました。
第1章 | 学び始めてすぐに実感したコーチングの価値 |
---|---|
第2章 | コーチングはUXが悪い | 第3章 | コーチングをもっとあたりまえのものに |
本記事は2019年7月の取材に基づき作成しています。
内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
第2章 コーチングはUXが悪い
学び始めてすぐに実践し、コーチングの価値を感じたこばかなさんは、自身のツイッターやnoteなどで積極的にコーチングについて発信を始めます。その理由はコーチングのUXの改善のためでした。
クライアントにフォーカスすると話の聞き方が変わる
コーチングを学んで、自分の中にはどんな変化がありましたか。
こばかな いろいろありますが「クライアントにフォーカスする」ということが大きいかもしれません。それまではクライアントに提案する時に「あなたはこうした方がいい」という感覚がありました。コーチングを学んで、提案の時間が変わったことを実感します。クライアントが「本当はどうありたいのか」を探り、相手のことを真剣に考える時間になったのです。
また、コーチングを始める前は、転職するかどうか悩んでる友人や、彼氏と別れるかどうか迷ってる友人の話を聞きながら、「こうすればいいのに」とか「なんで転職しないんだろう?」ともやもやすることがよくありました。でも、コーチングを学んで、それはあくまでも「自分の感想」に過ぎないということが腑に落ちたんです。いまは、本人の事情や気持ちを理解していくことができるようになりました。相手に集中できると言うか、相手のことを思えるようになったのが大きな違いです。
相手の反応にも変化があるのでしょうか。
こばかな コーチングのフレームワークを使いながら話を聞くと、相手が自ら「次はこれをやればいいんだ」とネクストアクションを見つけます。その瞬間、話を始めたときには曇っていた表情が明らかにパッと変わるので、それを見ていると嬉しい気持ちになります。そういった体験からも、クライアントにフォーカスしたほうがいいのだと実感できましたね。
note.com/kobaka7: コーチングとは何か図説してみた
もともとのきっかけであったユーザーインタビューにはどんな変化がありましたか。
こばかな 相手の話を「誘導」しなくなりました。誘導してしまうのは、自分がこうしたいという気もちがあるからです。ユーザーインタビューでも相手の言っていることが大事だと思えるようになったのは、コーチングを学んだ成果だと思います。
また、相手の話をよく聞くとことができるようになったので、同じ質問を繰り返したり、相手の話を遮ってしまうようなことがなくなり、クライアントが本当に言いたいことを拾いやすくなってきている実感はあります。
コーチングのUX改善のためにできること
こばかなさんは、ツイッターやnoteなどで積極的にコーチングについて発信をされていますが、どんな思いで発信を続けていらっしゃるのですか。
こばかな UXの観点からみて、コーチングはUXがよくないからです。
UXを改善する上の基本的な考え方は、多くの人にインパクトを与えられるよう、より手前の部分を重視するというものです。
webサービスのアプリの場合、ユーザーが(スマートフォンに)アプリをダウンロードして、最初に開いた画面、つまり全員が通る場所で「登録してみよう!」と登録に進んでもらうことが何より大事。そこで離脱する人が多いと実際の利用者が少なくなってしまうので、ここがいちばんしっかりしている必要があります。
そのプロセスを通過した後は、このアプリをどう使えばいいのかきちんと理解できること、そしてメインの機能を使った時に「本当にこのアプリが好き」、「これを使ってよかった」と思ってもらえることが重要です。とにかく最初のピークのが何より大事なので、一番手前の幹の太い部分をまず改善していくことが必要になるのです。
その点、コーチングはUXがよくない。コーチングを受けたいと思っても、肝心のコーチを探しづらいし、探せたとしてもコーチングを経験するまでのハードルが高い。まず金額がよくわからない。無料でやっている人もいれば、有料の場合は金額がそれなりに高い。無料は無料で不安だけれど、よくわからないものに結構な値段を払うのは抵抗がある。
今はコーチングについて興味をもったら、「本を読んで独学する」か「スクールに通う」かの二択しかないのが現実です。スクールももちろんいいのですが、コーチングに興味をもった人が、どんなものかを知って試すことができるようなちょっとした機会が存在しません。
期待値が上がれば、高いお金を払ってコーチングを体験してみようと考える人が増えると思うのですが、コーチングの場合は、期待値がそもそも上がりにくい構造です。
企業の管理職でコーチングを学ぶ人も増えていると思いますが、マネジメントも、コーチングだけではできませんよね。マネジメントする際には、コーチングもティーチングも、コンサルティングもするのだと思います。現場での使い方がわかりづらいことも、コーチングのUXの悪さにつながっているのではないでしょうか。
私はコーチングはとてもいいものだと思うし、多くの人に知ってもらいたい。なので、「コーチング」とはいったいどういうものなのかということを、とにかくわかりやすく一番手前にもってくる必要があると思い、ツイッターやnoteでコーチングについて発信を続けています。
コーチングと「UXデザイン」の共通点
こばかな 実は、コーチングの現在の状態と、少し前の UX デザインの状態って似てるんじゃないかと思っているんですよね。「UXデザインが大事」と言う人が出てきた当初は、「なぜUX?」「UXって何?」という人もいて、一種の論争がありました。そんな中、徐々に定着してきて「UXデザインが大事」という認識が共有されるようになりました。コーチングでも同じ現象が起きる可能性があるのではないかと思います。
どんなプロセスを経る必要があるのでしょうか。
こばかな コーチングは体験しないと価値がわかりづらいという特性があると思うので、基本的には「成果が上がった」というリアルな声がたくさんあるといいでしょうね。たとえば、ツイッターのフォロワーがたくさんいる人が「コーチングを受けて本当に良かった」と発信したり、権威も知名度もある人が「よかった」と発信したりするような構造をつくれるといい。「組織にコーチングを導入したことで大成功した」という大きなエピソードなんかもあるといいですね。
とはいえ、成果が第三者にわかりづらいのもコーチングの課題だと思います。成果があっても「本当にコーチングのおかげなのか」がわかりづらい。おまけに守秘義務の観点からコーチ側からは発信ができないために「コーチングの成果はこれです!」と見せづらい。意識的に何かしら発信していかないと、コーチングの価値は伝えづらいと感じています。
(次章に続く)
聞き手・撮影: Hello Coaching!編集部
この記事を周りの方へシェアしませんか?
※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。