リーダーの哲学

各界で活躍される経営者やリーダーの方々に、ご自身にとっての「リーダーとしての哲学」お話しいただく記事を掲載しています。


組織内のコミュニケーション ~ 環境へのアプローチと人へのアプローチ
株式会社イトーキ 代表取締役社長 平井嘉朗氏 × 株式会社コーチ・エィ 鈴木義幸

第3章 コミュニケーションは、出会いを生むことから始まる

第3章 コミュニケーションは、出会いを生むことから始まる
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株式会社イトーキ代表取締役社長の平井嘉朗氏と株式会社コーチ・エィ代表取締役社長の鈴木義幸が、「組織におけるコミュニケーションの価値」について語ります。オフィス家具国内大手のイトーキでは、『明日の「働く」をデザインする。』というミッション・ステートメントを掲げ、空間づくり・環境づくりの視点から、働き方改革を進める企業を支援しています。コーチ・エィは、コーチングという自発的行動を促すコミュニケーションを通じて、経営者を起点とした企業の組織開発を手がけています。コミュニケーションに対する、環境からのアプローチと人へのアプローチ。それぞれの立場から見えるものを語り合いました。
今回は、イトーキが自らの働き方を実践する場として、そのノウハウを結集し具現化したイトーキ東京本社「ITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)」にて対談を実施しました。

第1章 イトーキのミッション/コーチ・エィのミッション
第2章 組織力の成長には、コミュニケーションの質が大事
第3章 コミュニケーションは、出会いを生むことから始まる
第4章 トップの強い意志と、部下に何を問うかで、対話が活性化され組織の成長へとつながる

偶発的な出会いをつくりだす

鈴木 2019年にオフィスを視察させていただいた会社の中に、NVIDIA(エヌビディア)という米半導体メーカーがあるのですが、創業者のジェンスン・フアン氏は、社員が分散してしまうことを嫌い、オフィスはワンフロアであることに強いこだわりを示していらっしゃいました。東京と違って土地の広いカリフォルニアにあることもあって、そこは従業員5000人がワンフロアに入れる平場のオフィスなんです。いろいろと話を伺いましたが、階が一緒だと偶然出会う確率が95%なのに対し、階が分かれるだけでそれが約6%にまで落ち、ビルまで分かれてしまうと偶然出会う確率はほぼ0%になるというマサチューセッツ工科大学との共同リサーチ結果があるそうです。だから従業員が何千人になろうと一つのフロアにして、とにかく偶然出会わせて会話が生むようにする。トップのジェンスン氏の強い思いでこうしたオフィスが実現しています。

平井 この新本社オフィス「ITOKI TOKYO XORK」は2018年秋からスタートしたのですが、その前は都内に4か所のオフィスを構えていました。分散されていたんですよ。ですから、オフィスを一つに集約移転するということも目的の一つでしたし、それ以上に、そもそも我々はこういう事業をしているので、我々自身が実践したことを、リアリティをもってお客様にご提案できるようにしたいという思いもありました。特に大手企業のお客様のオフィスはメガプレート(ワンフロアの面積が大きいこと)に入られることが多いですから、そうしたお客様に対して組織内のコミュニケーションのあり方までご提案する我々の側が4~500坪のオフィスというのは、理論的な話しかできずリアリティが薄かったですしね。鈴木さんがおっしゃった、ビルが分かれていると偶発的な出会いがほとんどないというのは、オフィスを集約する前のリアリティとして我々も経験しています。

鈴木 そうなんですね。

人間の最小単位は「二人」

平井 都内ですのでワンフロアに集約するのは物理的に難しく3フロアとなっていますが、3フロアをつなげている中階段が、実は非常に大きな効果を見せています。中階段にしたのは、まさに我々も、出会いを生み出すことでコミュニケーションを増やしたいという狙いがあったからなのですが、離れていたら、まず間違いなくメールか電話でのコミュニケーションになっていたところが、ぱっと歩いて行って話したほうが早く、お互いの意思疎通も深くできるということで、皆、よく使います。健康にも良いですしね。皆、部署が異なっていても必ず何らかの仕事上の関係はあるわけです。だから、ちょっとその辺で二人で話しましょうか、というシーンは本当に良く見ます。今、私があえて「二人で」と申し上げたのにも意図があるのですが、このオフィスは、働く人の行動を“10のアクティビティ”に分けていますが、その中でも、二人用の作業スペースの利用率が非常に高いんです。例えば二人で同じ画面を見ながらコミュニケーションを取って仕事を進めるなど、そういうスペースなのですが、この二人作業が実は効率的だということを、多くの社員が実践によって気づき、そのスペースを増や多くの社員が実践によって気づき、そのスペースを増やしたりもしています。

鈴木 『Powers of Two 二人で一人の天才』(ジョシュア・ウルフ・シェンク著)という本があります。その本の中に引用されている言葉として「人間の最小単位は一人ではなくて二人」というものがあります。ソニーの井深大さんと盛田昭夫さんや、ホンダの本田宗一郎さんや藤沢武夫さん、ビートルズのポール・マッカートニーとジョン・レノンなど、イノベーションは二人で起こしたものが非常に多いんですよね。複数人数で行うブレインストーミングには、そこにいろいろな視点が出るという良さはありますが、本当に何かを生み出すというときには、実は「二人」という単位がクリエイティブを生んでいるという話です。二人の関係性であったり、二人でする話の中から未来を創り出す。いずれにしても二人という単位を大切にしているというのは、環境として大事なポイントだと思います。

平井 確かにそういう面はあるかもしれませんね。ただ、課題も見えてきているのも事実です。どこで働いてもいいとしていますから、チームとしての連帯感が薄れたというのも社員アンケートから出てきています。今までだったら「おい」とすぐそこの部下に言えましたし、すぐそばにいる肌感覚で、プロジェクトの進行具合を感じていられたのが、今となっては様子がわからないまま1週間過ぎた、なんていうことが十分あり得ますからね。ここをどう克服するかというのが課題です。もちろん、あらかじめそうした問題が解消できるよう、部員が今どこにいるのかの位置情報をスマホで把握できるようにするなどの工夫をしたりはしていますがね。ただ、そういう課題があったとしても、その課題を超えてでも社員が来たいと思う空間があるということ。それは、自由度が個人の最大のパフォーマンスを発揮するということにつながっているんだと思います。もちろん、各個人が当然自律していないといけないという前提があるので、「自由度のある働き方が自律人材の育成にもつながっている」と、そう言いきれたら良いなと、そんな思いを持っています。

組織にいることで、人はより大きな自由を手にする

鈴木 自由という話の中で、思うところがあります。米国だと、コーチはほぼ個人事業主で、集団でコーチを抱えている会社はあまり例がありません。一方、当社で社員約200名のうちコーチが120名ほどいます。当社のコーチの中にも、スキルがついてくると独立をしたほうが自由度が増すと考える人も出てきます。それでも組織として存在する意味は何なのかと考えたときに、複数でやったほうがより大きな自由を手にできるという考え方があるのです。組織であることで、より多くのことにチャレンジできる。つまり、組織において人は、個人では手に入らない大きな自由を手にする。組織にいる方が自由度を制限されるように感じる人もいますが、イトーキさんが今まさに取り組んでいらっしゃるのは、組織の中で個人がある意味で自由にふるまい関わり合うことによって、全体として大きな自由を手にしようとしている、そんなチャレンジをされているんだなという印象を持ちました。

平井 なるほど。そこに組織化する意味があるんですね。

ITOKI TOKYO XORK見学その3:イノベーションを生み出す「二人」のための空間

平井 こちらが二人で対話をしながら業務を進めるスペースです。

鈴木 こちらのデスクは、ただ同じ画面を見るだけでなく、机も曲線になっているんですね。

平井 はい。コミュニケーションを高めながら業務が効率よくはかどるように工夫を凝らしています。二人用スペースはここ以外にも、上司と部下の間で評価やキャリア相談などを想定した部屋もあります。そちらは周りが気にならないとか、向き合ったときに緊張せずにリラックスできるよう、考慮された設えになっています。

鈴木 こうした環境で二人の対話を通じてイノベーションが生まれると良いですね。

(次章に続く)

インタビュー実施日: 2020年1月29日
聞き手・撮影: Hello Coaching!編集部


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