リーダーの哲学

自分に影響を与えた一冊の本を題材に、各界で活躍されるリーダーの方々に「リーダーとしての哲学」を語っていただくインタビューシリーズです。


組織内のコミュニケーション ~ 環境へのアプローチと人へのアプローチ
株式会社イトーキ 代表取締役社長 平井嘉朗氏 × 株式会社コーチ・エィ 鈴木義幸

第4章 トップの強い意志と、部下に何を問うかで、対話が活性化され組織の成長へとつながる

第4章 トップの強い意志と、部下に何を問うかで、対話が活性化され組織の成長へとつながる
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株式会社イトーキ代表取締役社長の平井嘉朗氏と株式会社コーチ・エィ代表取締役社長の鈴木義幸が、「組織におけるコミュニケーションの価値」について語ります。オフィス家具国内大手のイトーキでは、『明日の「働く」をデザインする。』というミッション・ステートメントを掲げ、空間づくり・環境づくりの視点から、働き方改革を進める企業を支援しています。コーチ・エィは、コーチングという自発的行動を促すコミュニケーションを通じて、経営者を起点とした企業の組織開発を手がけています。コミュニケーションに対する、環境からのアプローチと人へのアプローチ。それぞれの立場から見えるものを語り合いました。
今回は、イトーキが自らの働き方を実践する場として、そのノウハウを結集し具現化したイトーキ東京本社「ITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)」にて対談を実施しました。

第1章 イトーキのミッション/コーチ・エィのミッション
第2章 組織力の成長には、コミュニケーションの質が大事
第3章 コミュニケーションは、出会いを生むことから始まる
第4章 トップの強い意志と、部下に何を問うかで、対話が活性化され組織の成長へとつながる

人の行動は自分への問いかけで決まる

 コーチングの視点からは、どのような環境や条件が揃うと、組織内のコミュニケーションが活性化するとお考えでしょうか。

鈴木 いろいろなプロジェクトをいろいろな企業様と進めてきましたが、先ほども申し上げた通り、トップの意志がどれだけ強いかというのがコミュニケーションを活性化する上で非常に大きなポイントです。現場がどれだけ頑張ってコミュニケーションの活性化に力を注いでも、トップの方のコミットがないと、残念ながら成果も限定的です。

先ほど申し上げたように、一言でコミュニケーションといってもさまざまな種類がありますが、大別すると“tell(言う)”か“ask(問いかける)”しかないんですね。そして、通常、上司は部下に対して“tell”を使うことが多い。人は自分の内側で、自分に問いかけながら答えを出すコミュニケーションを繰り返しており、心理学では、この問いかけて答えを出す作業の反復を「思考」と呼んでいます。例えば朝起きて、「今日は何を着ていこうかな」「あぁ、大事な会議があるからスーツを着ていこう」「何色のスーツを着ていこうかな」と、こういう具合に自分の中で問いかけて答えを出してと、思考していくんですね。

平井 なるほど。

鈴木 そうすると、人の行動というのは、自分に何が問いかけられているかの連続で決まるわけです。ですから、オフィスの中でそれぞれの社員が何を自分に問いかけているか、あるいは経営陣や上司が社員に何を問いかけているかが大事になってきます。

平井 そうだよなぁ。

鈴木 一人ひとりの社員が、「上司に怒られないようにするためにはどうしたらいいかな」と自分に問いかけていたら、これはあまりよくない状態です。けれども、「どうしたら周りの人をもっと動かすことができるだろう」「どうしたらもっと会社に貢献できるだろう」「どうしたらもっと活性化できるだろう」という問いを自分にしていたら、たぶん行動もそれに応じて変わってくる。つまり、経営陣や上司は、社員の中にどういう問いが流れているかということにもっと意識を向けたほうが良いということなんですね。

平井 すごく参考になりますね。

鈴木 そうすると、社長が意気込んで社員全体に「いいか!顧客満足だ!CSが大事だ!」と言う。ところがふとエレベーターで一緒になった社員に、「おい、お前、あれ、売れてるか?」と問う。

平井 うわぁ...(笑)。それ、いかにもありそうですね...(笑)。

鈴木 そう。そうなんです(笑)。人は問いに答えることの方に脳をフル稼働させるので、言われたことよりも、問われたことの方が影響するんですよね。ですから、社長が何を問いかけているかは、社員の内側の問いにすごく影響を与えます。組織全体のコミュニケーションや行動を変えようとするためには、何を問いかけているか、何が問いとして場に共有されているかがすごく大事です。話すこと以上に、質問していることの方が影響しているんです。

平井 はぁ...。とても参考になりますね。今のお話を伺って、問うことが大事なんだなというのは改めて実感しました。私はどちらかというと喋りまくるからね...(笑)。

オフィスデザインが社内コミュニケーションに与えるインパクト

 お二方からさまざまなアプローチや視点をお聞かせいただきましたが、それぞれに共感された部分などをお話しください。

鈴木 少し前に、オフィスを移転したばかりのお客様のご支援に入らせていただいたことがあります。プロジェクトとしてはうまく進んでいましたが、現場でのコミュニケーションがどうもうまくいっていないというお話があって、現場を視察する機会をいただきました。そこで、新オフィスのレイアウト設計がコミュニケーションの状態に影響していると気づきました。新オフィスでは、周りの視線が気にならないようにという配慮から、デスクを流線形に並べ、すべてのデスクに目が隠れるくらいの高さのローパーティションが取り付けられていました。移転前のオフィスでは、パーティションなどなく、オフィス全体を見渡せる仕様だったんですね。その時に、組織内のコミュニケーションにとって、オフィスなどの環境デザインは大事だと思いました。我々はコミュニケーションというソフトを扱っていますが、オフィスという環境設計はコミュニケーションにとても影響力があると実感したんです。いつかお客様の組織開発の視点で、イトーキさんとコラボレーションができればと思います。

平井 嬉しいですね。ぜひそうしたいですね。我々もまさに、鈴木さんが今おっしゃったような思いでいろいろなお客様をお手伝いしていますが、さらに突き詰めたいと思っていることが、お客様にとって本当にそれが良いと我々が心から思えているのか、ということです。

楽しく仕事をする

当社では、働きながら健康になろうという健康経営の視点から「Workcise(ワークサイズ)」という考え方を推し進めています。これは、“Work”と“Exercise”を掛け合わせた造語で、これも一つのイトーキの売りとしてお客様にご提案しています。ただ、もし私がお客様だったら、「コンセプトはよくわかった。だけど、そもそもそれを導入して、あなたはどれくらい健康になったの?」と問いたいんですね。この問いに対して、営業やデザイナーが、自らの実践した経験談をもとに、明快に答えられるようにしていきたい。そう思っています。と同時に、環境づくりのアプローチだけでは、なかなかあるべき姿にまで到達できないとも思っています。先ほどお話ししましたコミュニケーションの質の問題もそうですが、社員間のコミュニケーションを誘発しようと、例えば、部署と部署の中央に集いやすいコーナーを設えたり、窓際の景色の良いところに外側を向いて座れるコーナーを用意したりしてみても、必ずしもそれが意図したとおりに効果を発揮するかというと、そうでもないケースもあるんですよね。それにはいろいろな要因があるわけですが、環境づくりだけのアプローチでは、なかなか本当にありたい姿にまで到達できないとも思っています。かなりの部分はイトーキ単独でもできるのですが、限界があるのも事実。ですから、お客様がありたい姿にたどり着くために、当社の枠を超えて、御社も含め人事系やIT系など、さまざまな外部の方々とコラボレーションしながら一緒にご提案していくことが、今後ますます必要になってきていると思います。

鈴木 平井さんは、会社は業績を上げることも大事だが、個人一人ひとりが、楽しく健康的で働いてほしいという思いで経営していらっしゃるということですよね。

平井 そうあってほしいなと思って、「楽しく仕事をしようよ」とはよく言うんですよ。「楽」という字は「らく」とも読みますから生ぬるい印象を抱かれるかもしれませんが、私は「楽しい」という言葉にはもっと深い意味があると思っています。やはり当社は、『明日の「働く」を、デザインする。』会社ですから、我々自身がポジティブにいきいきと働くことができ、そしてお客様にもそんな姿を感じていただき、こんなイトーキと一緒にオフィスづくりをしたいなと思っていただけたらと思います。まだまだ課題はありますが、そういう世界をつくらないといけないと思っていますね。

鈴木 見学に来られる方は、御社のオフィスデザインだけでなく、そこで働いている社員の方々の様子もご覧になりますよね。いきいきと楽しそうに働いていらしたら、本当に素敵だなと思いますよね。

平井 そうですね。

鈴木 今日はとても刺激になるお話をたくさん伺いました。ありがとうございました。

平井 こちらも勉強になるお話ばかりでした。ありがとうございました。

ITOKI TOKYO XORK見学その4:健康建築の最高レベルを取得

平井 健康経営という視点では、この新本社オフィスは、米国の健康建築性能の評価制度である「WELL認証」*の最高レベルである「ゴールド」を取得しています。働く人たちの健康や快適性に焦点を当てた評価制度なのですが、現時点では日本国内でのゴールド以上の取得事例はまだX3件しか取得事例がありません。

鈴木 中階段の設置も、コミュニケーションの活性化に加えて健康経営の観点とおっしゃっていましたものね。

平井 はい。社員は一日、優に1万歩は歩きますよ。WELL認証は環境工学だけでなく医学の見地からも検証が加えられていまして、オフィス内の空気も温度・湿度のほか細かい基準があります。

鈴木 確かに、きれいな空気を吸っている気がします。

平井 花粉症に悩んでいる社員やお客様からは、「このオフィス内ではその症状が全く出ない」という喜びの声を聴いています。

鈴木 それはすごいですね。

*WELL認証:米国・健康建築性能評価制度『WELL Building Standard™』。建物内で暮らし、働く人たちの健康・快適性に焦点を当てた世界初の建物・室内環境評価システム。

(了)

インタビュー実施日: 2020年1月29日
聞き手・撮影: Hello Coaching!編集部


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