リーダーの哲学

各界で活躍される経営者やリーダーの方々に、ご自身にとっての「リーダーとしての哲学」お話しいただく記事を掲載しています。


さくらインターネットCEO 田中邦裕氏 × コーチ・エィ対談

第2章 「田中さんの会社」から「さくらインターネット」へ

第2章 「田中さんの会社」から「さくらインターネット」へ
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本記事は、2020年9月28日に行われたイベントでの、さくらインターネットの田中邦裕CEOと、田中CEOのコーチを務めるコーチ・エィのエグゼクティブコーチ 栗本渉の対談をまとめたものです。

さくらインターネット様は、2009年から、エグゼクティブ・コーチングやリーダーへのコーチングなどさまざまなスタイルでコーチングを活用されています。

第1章 社長の機嫌がよくなった
第2章 「田中さんの会社」から「さくらインターネット」へ
第3章 コーチとメンターの違いは?

第2章 「田中さんの会社」から「さくらインターネット」へ

栗本 以前の田中さんは、経営者としての責任感から、自分である程度解決しなければと考えていらしたところがあったように思います。周りの方たちも「どうせ田中さんが全部決めるだろう」と思っていたのではないでしょうか。それがある時、「自分には限界があるから人に頼る」という姿勢に変わられ、その途端に、会社も「田中さんの会社」から「さくらインターネット」へとパッとステージが上がった瞬間がありました。

田中 実はいまだに「自分がやった方が早い」という思いが僕の中にあるようで、つい先週も役員たちに「これは自分がやる」と言い切ってしまいました。最終的には、いろいろ考えた末に「任せた方がいい」と思い直したのですが。

栗本 今回、一度は「自分がやる」と言ったものの、考え直されたということですよね。コーチングは、今回田中さんがされたような「立ち止まって振り返る」という機会でもありますが、以前の田中さんにはそういった習慣はなかったのではありませんか。

田中 3年ほど前に、コーチングの中で「仕事を休んではどうか」という話になり、1ヶ月間、実際に仕事を休んだことがありました。当時、休むことについては2つの不安がありました。一つは「会社が回らなかったらどうしよう」、もう一つは「会社が僕なしでうまく回っていたらどうしよう」というものです。

経営者には「自分がいなくても会社がうまくいったらどうしよう」という、自分の存在価値を見出したい気持ちがあるように思います。「自分がいないと周りが困るだろう」と思いたいんですよね。

とはいえ、会社をさらに大きくするためには、僕自身がもっと大きな仕事をしなければなりません。そのためには、今ある仕事を役員に任せ、役員にも成長してもらわないといけません。

頭ではそう理解していても、自分の存在価値を確認したくなることがあります。そういうときに、一度立ち止まって考えることができるかどうかは大きいですね。

最近は周囲に任せられるようになってきているので、今は「自分がやるべきこと」を見つけることがテーマの一つです。

栗本 田中さんから「自分自身が成長しきれない」という言葉が出てくるようになってから、実際に会社が変わっていったように思います。

田中 そうですか(笑)。現在の売上規模は約220億円ですが、それを倍増するのは本当に大変です。新規に創業した友人の会社がものすごい勢いで成長している様子を見たりすると、起業家の僕としては、もっと小さい規模でもいいのでまた最初からビジネスを作る方がエキサイティングなのではないか、と心が揺れることもあります。

それでも最近は、会社のステージを上げていくことで自分が成長し、世の中にインパクトを与えられるような仕事をしたいと思うようになりました。

提供 さくらインターネット株式会社

栗本 私も、コーチ・エィという会社の経営陣の一人として、田中さんのお気持ちがわかります。田中さんが私をコーチングするような瞬間もなきにしもあらずで、「経営」に関する問いが二人のあいだで共有され、お互いがコ・ラーニングしているような感覚があって、私にとってもとてもエキサイティングです。

コーチングをより効果的にするために必要だと思うことは?

栗本 どのようにコーチングを使うとうまくいくか、あるいは逆にうまくいかないか、といったことについて、田中さんのお考えを教えていただけますか。

田中 本人が心からコーチングを受けようと思わない限り、あまり成果は見込めません。僕自身も最初はコーチングを受けようと思ってはいなかったので、最初の数回は全くうまくいきませんでした。

僕は大阪の商売人的な経済感覚で「お金を払っているのにもったいない」という気持ちがあったので続けましたが(笑)、もしかすると、うまくいっていない状態のままコーチングを終えてしまう人もいるかもしれませんね。

ですから、コーチングにはどういう効果があって、受ける側がどのような姿勢で臨むと効果的なのかというセットアップをしてから導入するのが効果的だと思います。

コーチングにおけるテーマ設定も、最初から受ける側が考えて出すのがいいと思います。

栗本 2009年から御社とは一緒にお仕事をさせていただいていますが、田中さんとのコーチングだけを11年間ずっと続けているわけではありません。開始3年間は田中さんのコーチングだけ、その後の2~3年は役員のみなさんのコーチもするなど、いろいろなかたちで関わらせていただいています。

役員のみなさんにコーチングをさせていただいた際に、必ずしもうまくいかなかったことがあったと思います。トップ一人だけではなく、役員など複数のエグゼクティブを対象にコーチングを活用する場合のヒントとして、うまくいかなかった理由などについても田中さんの視点からお話しいただけるとうれしいです。

田中 実際のところ、役員のコーチングに関しては、うまくいった人といかなかった人がいます。乗り気でない役員にも無理矢理受けさせたので「社長に言われたから仕方ない」という気持ちから抜けられなかった役員もいました。そういったケースでは、全く効果がありませんでしたね。一方で、ものすごくコーチングがハマった人もいて、その人の部下との関わりは大きく変化しました。やはり、最初のセットアップが重要なのだと思います。

栗本 今ではコーチ・エィでもセットアップの重要性を強調していますが、当時は私たちのほうも、そういう準備が不足していましたね。また、田中さんのような立場の方、つまり導入を決定されたプロジェクトオーナーの方から、「何のためにやるのか」「どうすれば価値を最大化できるのか」といったことについて妥協せずに対象の方に話していただく時間をとることができると、とてもよい投資になると思います。

田中 正直なところ、コーチングは安いものではありません。ただ、経営者にうまく作用すれば、会社の成長につながるので安い投資だということもできます。成長につながらなければ、ただの無駄になってしまうので、「コーチングを受けることで、こういう成果を手に入れる」ということを受ける立場の人間が認識すること、また、「投資したからにはモノにしてやる」という執着も大事だと思います。

(次章に続く)

対談日:2020年9月28日
内容および所属・役職等は当時のものを掲載しています。
表紙写真: さくらインターネット株式会社提供


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