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リーダーと「創造的退行」

リーダーと「創造的退行」
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社内外の環境変化に対応するために、リーダーは発想の大きな変化を求められています。

いかにしたら、リーダーは、慣れ親しんだ発想から飛躍して、自身に、そして組織により創造的な発想を生み出せるのでしょうか。

ノースダコダ大学で行われた、心理学の実験があります。大学院生を無作為に2つのグループに分けます。

1つのグループには、「あなたは7歳です。1日好きなことをやっていいとしたら何をしますか。どこにいきますか。誰に会いますか」などの質問をして、10分間、その質問に回答してもらいます。

もう1つのグループには、「7歳」という設定だけをなくして、同様の実験を行います。

その後、「創造性に関する思考テスト」を2グループに実施します。すると、「7歳」と想定したグループの方が、「創造性」の成績は優位に高い結果がでました。

「7歳の子供」の頃に戻るという体験が、被験者である大学院生の意識を変化させ、創造性を刺激したようです。

深層心理学では、発達状態が前の状態に戻ることで何かしらの「創造的」な物や事を生み出すことを「創造的退行」と言います。偉大な芸術作品も、「創造的退行」の結果、生み出されたものと考えられています。

日常の規則や時間の拘束が少ない、子供時代のような自由な環境を意図的に自身や社員に与え、組織の創造性を刺激しているリーダーがいます。

現在でも、最もイノベーティブな企業ランクの常連に入る3Mは、1948年、多くの会社では厳格なルールが主流であった時代に、仕事の15%を、空想や創造のために使ってよいという、あの有名な15%ルールをつくりました。

ポストイットをはじめ、数々の発明がそこから生まれたことは皆さんも周知のことと思います。




あるエンターティメント系の会社役員のコーチングをしました。

この役員は、コーチングの中で、たくさんの質問を受けたことで複数の視点を持てたことから、自らも部下に多く質問するように意識したそうです。

そして、質問する際には、そのビジネスを知らない人、あたかも小学生にでもなったつもりで、奇抜な質問をすることを心がけていると言います。

部下の方々からその役員の近況を伺う機会がありました。

彼らの話では、とにかく最近、役員は、「無邪気な質問魔」であるといいます。

時間があれば、社内を歩き回り、「毎日を日曜日の気分にさせるのは、どんな商品だろう?」「僕たちは、(お客さまにとって)どんなヒーローになりたい?」「ぼくらの世界一とは何だろう?」など、部下に問いかけ、その反応を好奇心を持って聞くそうです。

そして、とりわけ多いのが「なぜ?」「もしも〜?」の質問だそうです。

「もし、この商品とあの商品が結婚したら、子供としては、どんな商品が生まれるの?」
「もしも、僕たちのチームがオーケストラだったら、どんな音を出している?」
「なぜ、この商品は(通常3万円ぐらいの価格)、300万円では売れないの?」

そして、役員がこれらの質問をする時の問いかけ方は、好奇心のままに無邪気なトーンなのだそうです。

そういった質問を起点に対話していると、役員と部下の間に今までは当たり前だと思っていた前提が崩され、自由に発想が広がり、気づくと、そこに新しい学びや創造が生まれると言います。

今では、そういった問いかけをすることが組織全体にも広がり、以前に比べて、チーム自体がさまざまな視点から物事を考え、発想する集団に変わってきているそうです。

『イノベーションのDNA』の著者でもある、ハーバード大学のクレイトン・クリステンセン教授らは、「イノベーターは、まずは、多種多様な質問を通して、現状を深く理解する」「イノベーターは、何故なのか? もし〜だったら? の質問を通して、現状に風穴を開き、直感に反する想いがけない答えを探し求める」と説きます。

リーダーは、時に自ら「創造的」に「退行」することで、自身と組織の創造性を高めていくことができます。



【参考文献】
『アンシンクUNThink眠れる創造力を生かす、考えない働き方』(講談社)
エリック・ウォール(著)、住友進(翻訳)

『イノベーションのDNA破壊的イノベータの5つのスキル』(翔泳社)
クレイトン・クリステンセン(著)、ジェフリー・ダイアー(著)
ハル・グレガーセン(著)、櫻井祐子(翻訳)

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