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部下のセルフトークに責任をもつ

部下のセルフトークに責任をもつ
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人は、何か行動を起こす時、その前に自分の内側で「自分」と対話をしています。

行動の前には、必ず自分への問いかけがあるのです。その問いに対応して、行動を起こしているのです。つまり、自分自身の行動を変えるには、自分自身との対話、「セルフトーク」そのものを変える必要があります。

たとえば、上司から仕事のやり方を変えるように指示された場合、部下は、その場では指示に従い行動を変えるかもしれません。

しかし、本人のセルフトークが変わることなく、単に指示されたからという理由でやっているのであれば、行動が元の状態に戻るのは時間の問題です。セルフトークが変わらなければ、行動は変わりません。

そして、私たちは一人ひとりがパターン化された「セルフトーク」を持っているために、行動にもその人なりの傾向、パターンが表れるのです。

「やるだけ無駄。どうせダメに決まっている」

ネガティブなセルフトークが繰り返されれば、気持ちは暗くなり、行動は起こりにくくなるでしょう。

「やってみなければわからない。うまくいくことだってあるかもしれない」

ポジティブなセルフトークを繰り返していれば、気持ちは明るくなり、行動的になるわけです。

また、セルフトークの特徴は、堂々巡りが起こることです。自問自答を繰り返しても、同じところを回るだけで、新しい視点、今までと違う視点を持つことはできません。自分の中で行き詰まってしまうことになります。

コーチングによって、より高い生産性を実現できる理由の一つは、第三者であり、訓練されたコーチとの対話を通して、より機能的なセルフトークを作ることができるからだ、ということができるでしょう。


この夏、私の長女が3年間務めた会社を辞めて転職をしました。

憧れていた会社に入社し、自分がやりたかった業務についたものの、毎日終電で帰れるか帰れないかという激務をこなしていく中で、セルフトークがネガティブなものに変わっていく。

新卒、第一希望で入社した会社を辞めるに至るプロセスは、仕事が嫌になる、という単純なものではなく、さまざまな葛藤の中で本来の自分を見失い、視野が狭まっていくようなセルフトークの連鎖が起こっていったのだと思います。

そして、その連鎖を断ち切り、変えていくのは、自分の力だけでは難しい。

自分自身の力では視点を変えることができないので、行き詰まっていくのです。労働条件や待遇等、離職の要素は複雑ですが、もし、セルフトークを途中で変えることができれば状況は変わっていたのかもしれません。

離職する本人はもちろん、企業にとっても、社員の離職は大きなダメージがあります。一人の社員を一人前にするために企業は多額の投資をしています。採用費、教育研修費など、また、OJTなどで多くの人も関わっています。

その社員が一人前になり、本来ならばこれから会社に貢献できるという矢先に離職が起こるのは、社員にとっても会社にとっても幸せなことではありません。

セルフトークを変えるには、第三者からの「問いかけ」が必要

では、どのようにしたらセルフトークを変えることができるのでしょうか?

自分自身の力でセルフトークを変えるのは、とても難しいことです。いくら頑張っても、自分の「思考の枠」の中で自問自答が繰り返されてしまうからです。

セルフトークを変えるには、第三者からの「問いかけ」が必要なのです。

もし、良い「問いかけ」があれば、セルフトークを変えるきっかけになるでしょう。第三者からの、自分自身には無い、良質で新しい問いかけが、自分のセルフトークに組み込まれるのです。

娘は、離職の気持ちが固まった時に、以前の上司に相談をしました。その上司は彼女にいくつか質問をしたそうです。

「君はこの間、何を考えて、何を感じていたのかな?」
「今、君にとって一番大切なことは何?」
「君は、何のために仕事をするのかな?」

彼女は、その問いかけに、その場では答えられなかったそうです。そして、家に帰って私に言いました。

「就職してから、自分の考えていることや自分の気持ちとかを、後回しにしてたんだと思う。もし、もっと早く前の上司と話していたら、辞めなかったかもしれない」

家に帰る道々、彼女の中で上司の問いかけが頭の中を駆け巡っていたことは想像に難くありません。

上司は、部下をうまく行かせるために、問いかけ、対話する、必要があります。

部下のセルフトークに働きかけ、より機能的なセルフトークを作る。

上司は、部下のセルフトークに責任をもつ必要があるのです。

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