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戦略的な3分間

戦略的な3分間

多くの組織で当たり前のように使われているパフォーマンス・マネジメントのひとつに「査定評価」がありますが、US版Harvard Business Reviewの10月号に興味深いレポート「The Performance Management Revolution」がありました。

その一部を要約すると、次のようになります。

世界中で、さまざまな企業が「年次評価」を廃止し、その代わりに、上司からの「頻繁」な「関わり」と「フィードバック」に切り替えていっている。「デロイトのマネジャーは、『査定評価』プロセスは、『もはや企業のビジネスニーズに合わない組織中を巻き込んだ180万時間の投資』」(Cappello and Tavis, 2016)という浪費になっている、と。

「査定評価」の歴史は、第一次世界大戦のときに創られたアメリカ軍のメリット(成績)制に遡る。

それは、「除名および異動すべきパフォーマンスの悪い人を見極めるため」(Cappello and Tavis, 2016)のものだった。それが、急速に、ビジネス世界に浸透した。ところが、ここにきて、このシステムに限界がきている。

というのも、「組織は、かつてよりもはるかにフラットで、上司がマネジメントしなければいけない部下の数は劇的に増加し、さらに、部下を、全体を統括しながら、同時に、上司本人にも、会社への貢献が求められるようになった」(Cappello and Tavis, 2016)からである。

『仕事は複合的(complex)』で、『個人からチーム単位』になり、『変化は急激で、プロジェクトは、<短期間で進行しながら変わって行く>』ようになる中で、12カ月後もまだ『意義がある』年間ゴールを設定するのが難しくなったのである(Cappello and Tavis, 2016)

2008年に『3分間コーチ』という本を出版しました。

その中で、「今では、企業のマネジャーのほとんどが、プレーイング・マネジャーとして、『マネジャー』と『プレーヤー』両方の役割を担っているがゆえに、部下育成が後手に回っている」という問題提起をしました。

今は数字が上がっていても、部下が育たなければ、やがて、組織の業績は下がってしまうからです。

年1回の面談の段階で、部下についてはじめて気が付くことがあるようでは遅すぎます。常に「今」の「生」の部下の状態と業務の状態を知らなければ、組織に求められている成長のスピードは到底得られません。

そこで、『3分間コーチ』で提案したのは、プレーヤーとしての時間を犠牲にしない「短さ」で、マネジャーとして部下との関わりの「頻度」を上げることだけです。

スキルも大切です。けれども、それ以前に重要なことがあります。

内容をとやかく言う以前に、まず、「3分の時間」を、その人のために取る。「ついで」ではなく、その人と話す、という目的を持って。

そして、上司であるあなたから、部下に、具体的な質問をすること。

ただし、その「質問」に対して、部下が、のびのびと自由でいられるようにすること。「正解」だけを求めるのでは、部下は萎縮してしまうだけです。萎縮させていては、「育てる」ことはできません。

もし、部下の「クリエイティビティ」を引き出そうと考えるのであれば、「イエス」を要求しないこと。

私自身も、部下について知るための「質問リスト」を作ってきました。質問のリストをつくる行為そのものが「部下について考える」ことになります。

ところで、読者のみなさんは、自分の「リーダーシップ」がどれくらいなのか、について考えたことはあるでしょうか?

あなたは「自分にはリーダーシップは無い」「自然に身に付く」と思っているでしょうか?

『リーダーシップ・チャレンジ』の著者で、35年以上に渡りリーダーシップを研究してきたKouzesと Posner氏は、新著『Learning Leadership』で、多くのビジネスパーソンの足を引っ張っている「誤った思い込み」について次のように指摘しています。

言っておくが、「リーダーシップ」が、ある人の遺伝子にはあって、それ以外の人の遺伝子には無いというエビデンスは全く存在していない。

「リーダーシップを学ぶことは無理だ」というのは「神話(でっち上げ)」でしかない。「ある」か「無い」か、ではない。

真実は、「最高のリーダー」が「最高」になっていたのは、「それ」に向けて「相当な努力」をし、何時間も「練習/実践」に費やしてきたからだ。

「有能なリーダー」は、「優れたリーダーのビヘイビュア」を、より劣る、それ以外のリーダーたちよりも、「より頻繁」に「実践」している。問題は、その「頻度」を、いかに増やせるか、だ。

(Kouzes and Posner, 2016)

仕事のスキルや知識は高くても、人との関わりを軽視するあまり、大きな損失を出している企業が少なくありません。

「会話上手になってから」ではなく、関わりの「頻度」を増やすことで、あなたの対話の「質」が変わります。「頻度」は「質」を変えます。

常に、対話し、お互いに学ぶ。

そのプロセス抜きに、組織運営は難しいと思います。

先述のHarvard Business Reviewにあった「査定評価」を廃止した企業は、上司たちに、問題のある部下を「迅速に」見極めることを求めるようになったようです。

Adobeの報告によれば、新しいシステムによって解雇が減ったという。というのも、問題を抱えた社員は、以前に比べて、かなり緊密にモニターされ、コーチされるようになったからだ。

NASAやFBIですら、これまでのアプローチを考え直していて、こう結論付けている。

(業績に対する)責任は、「集団として」求めるべきであって、上司がやらなければいけないことは、 部下を、より効果的に「コーチ」し、「開発する」ことだ。

(Cappello and Tavis, 2016)

一概に、すべての企業が「査定評価を廃止すべき」とは思いませんが、考えていただきたいのです。

今、組織として、やっていることは、あなたの組織の「成長」をどれだけ促せているのでしょうか?

そもそも、あなたの会社は、どうなりたいのでしょうか?

あなたの会社は、今の社員たちに、どうなってもらいたいのでしょうか?

採用当時、どんな価値を彼らの中に見出して、仲間に入れたのでしょうか?

その後、その彼らが持っていた価値を、会社は、引き出して、活用してきたのでしょうか?

彼らを「活かしている」のは、誰なのでしょうか?会社は実体ではありませんから、具体的には、誰なのでしょうか?

彼らは、その部下たちと、何をしているでしょうか?何をしてもらいましょうか?

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【参考文献】
Cappelli, P. and Tavis, A., 2016, The Performance Management Revolution, Harvard Business Review

Anderson, R.J. and Adams, W.A., 2016, What Does Effective Leadership Mean?, Chief Learning Officer – CLO Media.

Kouzes, J. and Posner, B., 2016, Learning Leadership: The Five Fundamentals of Becoming an Exemplary Leaders, Wiley

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