Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。
リーダーとして行き詰まった時に試したい5つの質問
コピーしました コピーに失敗しました私たちコーチが、クライアントとのコーチングに行き詰まることがあります。その行き詰まりをブレイクする有効な方法の1つ、それは、自らコーチを受けること。
・その質問はクライアントのため、それとも、自分の好奇心を満たすためのものか?
・パワフルな問いをするに相応しい瞬間はいつだろうか?
・コーチとしてのあなたの前提には何があるか?
こうして、「自分に向けられた質問」によって自分自身を分析し、固定化した視点に囚われている自分を認識します。
クライアント側に原因を求め、その分析を続ける限り、行き詰まりは止まりません。
行き詰まりのブレイクスルーを探るリーダーA氏
伝統的な化学メーカーでイノベーションを生み出すミッションを背負う事業のトップ、A氏は、革新的なサービスを生み出せないチームに行き詰まりを感じていました。
「従来のモノづくりを脱却し、革新的なサービスを生み出したい」
数か月もの間、繰り返しチームメンバーに訴え続けていました。
日々議論は尽くすものの、新しい発想が生まれない。生産的で革新的な議論ができる方法論やフレームワークを取り入れても、目立った改善もブレイクスルーの兆しも一向に見られない。
A氏のコーチングがスタートしたのは、そのようなタイミングでした。
最初に、チームメンバーへのヒアリングの機会がありました。
革新的なサービスを生み出すためにチームとして何ができるかを尋ねていく中で、社外から採用されたばかりの新しいメンバーが興味深い指摘をしました。
「このチームには、成功体験が豊富な人たちが集まっている。それが裏目に出て、自分たちに都合よく現実を見て、相手の方を変えようとしてしまう。しかし、今、変えるべきは、"こちら側"なのかもしれない」
A氏は、この指摘にはっとしました。
気づかぬうちに、自分たちが陥っていたことであり、解決の糸口のようにも思えたのです。そして、自分はどのように現実を捉えているのか、さらに自分はリーダーとしてどんな枠組みに囚われているのかを知りたい、と言い出しました。
枠組みを探るためにコーチが用意した「5つの質問」とは?
そこで、かつて私が自分のリーダーとしての枠組みに気づきを得た5つの質問(※)を準備し、A氏に投げかけることにしました。
「あなたのリーダーシップの定義は何ですか?」
「リーダーであることは、あなたにとって何を意味しますか?」
「あなたは、何の基準をもってリーダーを評価しているのですか?」
「あなたは、リーダーであり続けるために何をしていますか?」
「自分はどんな枠を持っていると思いますか?」
自分に向けられたこれらの質問に、A氏は、一つひとつ考え込むように話し始めました。
「ビジョンを示し、人を率先するのがリーダーだと思い実行して来た。その成功体験を前提にした動きを生み出している。それが今、通用していないのではないか」
「今必要なのは、新しい発想で、自分たちの知らないことに挑戦すること。それは、自分たちの知らない領域の人たちと繋がり、議論しないと分からない。しかし、自分たちはそこに飛び込んでいない」
自分のやり方の前提となっていることを捉え、現実を自覚しはじめたとき、A氏はすっきりした表情になっていきました。
続いて、A氏はこのプロセスをチームのリーダーにも求め、6人のチームリーダーに同じ質問をし始めたのです。
「今の状態を作り出している"自分たちの前提"には何があるのか?」
革新的なサービスを生み出すための問題解決の方法に目を向けるのではなく、問題を創り出している「自分たち」について質問を向け始めたのです。
最初は、抵抗もありました。
しかし、ある若手のチームリーダーが、これまでには見られなかった、新しい行動を起こし始めました。自分たちの事業計画を、他部門や顧客に持って行き、プレゼンを始めたのです。
「自分で解決できる」
自分が囚われていたその前提と、もはやそれが機能していないことを認め、現実に留まるのを止める選択をしたのです。
「自分たちだけでは考えられない。であれば、オープンに他部門や顧客と一緒に考えよう」
心からそう思えたとき、自然とこれまでとは違った行動をとり始めました。
「変えられるもの」は何か?
相手の反応は悪くはありませんでした。
相談された他部門や顧客が、さらに議論できるネットワークを紹介してくれるなど、2カ月足らずで、話す相手や議論の内容がガラリと変わるきっかけとなりました。
「他部門や顧客に対する私たちの捉え方が変わりました。自分たちの前提を問うことがなかったら、変化を起こすのは難しかったと思う」
「変えられるもの」に目を向け、変化の手応えを感じたA氏とチームは、自信を取り戻し始めました。
その出発点は、「自分」に向けられた質問でした。
私たちは、行き詰まりを打開したいとき、ともすると「その状況」を分析し、解決方法について考えがちです。
しかし、行き詰まりを生み出しているのは「自分たち自身である」という前提に立ち、自分に向けられた質問によって自己分析できたとき、自らの意思で変えられるものが見えてくる。
これが、A氏とチームメンバーがブレイクスルーしたきっかけでした。
今抱えている行き詰まり、それを打開するために、自分、そして自分たちには、どんな質問を投げかけられるでしょうか?
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【参考資料】
※ Judy Elkin, “Executive Coaching Questionnaire”
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