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普通の上司は「何」を扱い、優れた上司は「誰」を扱う
コピーしました コピーに失敗しました私たちがコーチングの取り組みを始めてから、今年はちょうど20周年に当たります。現在の「Coachacademia(現、coachAcademia: コーチ・エィ アカデミア)」、当時のコーチ・トレーニング・プログラムの最初の電話会議クラスは、1997年11月に行われました。
アメリカのcoach universityとライセンス契約を結び、テキストは翻訳したものを使いました。当時のテキストのテーマタイトルは全部で50。そのすべてをやりきるには、3年かかるという膨大なプログラムでした。
その中のタイトルの一つに、「"何"ではなく"誰"をコーチする」というものがありました。
内容を読んだとき、今までの自分にはない、新しい切り口を目の当たりにして、とても新鮮だったことを記憶しています。
「上司の関わり」は部下に影響があるのか?
上司は日々、部下の生産性を高めるために腐心しています。
どうやったらモチベーションを高められるか?
どうやったら自発的、自律的に動いてくれるか?
どうやったら効率的に仕事を進めてくれるか?
自分自身の関わり方が部下に大きな影響を与えていることを、私たち上司はみな、身にしみて知っています。
部下をもっている上司、あるいはマネージャーと呼ばれる人に、「部下とのコミュニケーションはどうですか?」と聞けば、おそらく多くの人が、「たくさん話している」とか、「毎日のように話している」と答えるでしょう。
次の資料は、ある病院の協力を得て、「上司の関わり」と「個人の状態」の関係を調べ、上司144名、部下825名の回答をグラフ化したものです。
部下に「上司の関わり方」について評価してもらい、その平均値をとり、平均以上と、平均以下に分け、それぞれのグループの「部下の状態」への影響を見たものです。
点線の左側は、部下からの評価が「平均以下」のグループです。このグループは、上司の関わり方と部下の状態に、相関がありませんでした。つまり、部下の状態への影響がほとんどなかった、といえます。
点線の右側は、「平均以上」のグループです。このグループは、上司の関わり方と部下の状態に、「正の相関」がありました。
上司の関わりを通して部下の主体性や、目標達成に向けてた挑戦や創意工夫、積極性などを高めるためには、平均以下の関わり方では影響を与えることが難しく、平均レベル以上の関わり方をする必要がある、と考えることもできます。
部下は、上司に本当は何を期待しているのか?
同じ病院で、「上司の関わり方」に関する24項目について、上司の自己評価と部下からの評価をみました。その結果、上司の自己評価よりも部下評価が上回っている項目は、
・定期的な対話
・目的を持って会話する
・気づきを起こす対話
・明確な提案・要望
・新しい視点を得る質問
など。逆に、部下評価が上司の自己評価よりも下回っている項目は、
・相手の考えへの関心
・変化・成長に気付いて伝えること
・フィードバックを求めること、活用すること
・育成への意欲
・成長支援
などでした。
この結果からは、上司は部下と、定期的に目的を持ち、気づきや新しい視点を与え、提案や要望をしており、部下はそれを高く評価していることがわかります。
一方、会話の内容は「業務」が中心で、部下の側は、
・自分の考えに関心をもってほしい
・自分の変化や成長に気づいてほしい
・自分にフィードバックを求め、それを活用してほしい
・自分を育成し成長させてほしい
など、「業務」の話だけではなく、「自分自身」に焦点をあてた会話をして欲しいと思っていることが推測できます。つまり、部下は「業務」=「何」についての会話だけでなく、「自分自身」=「誰」に焦点をあてた会話を望んでいると考えることができます。
上司と部下の関わりについては、病院に限らず、話している内容を振り返ってみると、その要素は多岐にわたります。
しかしそのほとんどは、「何」について、つまり「業務」について話しているのだと思います。「業務」、つまり、その人のパーツについて話しているのであって、その人全体である「人そのもの」について話しているわけではないのです。
平均以上の関わり。
その一つのヒントは、「何」だけでなく「誰」を扱うことなのかもしれません。
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