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海外事業を成功させるリーダーの共通点

海外事業を成功させるリーダーの共通点
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あなたは、目の前で予期せぬ悪い事態が起こったときに、どのような反応をしますか?

昨年は、中国華南地域での仕事が増え、現地で経営に携わる方々約100人とお話することができました。経営の現況はさまざまで、ネガティブな状況にあることも少なくありません。

それこそ、「予期せぬ悪い事態」のエピソードも、盛りだくさんです。

にもかかわらず、きわめて順調な経営をされている方にもお会いしました。

・8年間で、ゼロから40億円まで、ビジネスを育てた方
・離職率を、20%から3%まで下げた方
・ここ3年間、増収増益を続けている方

皆さんと対話を重ねていくうちに、私は、経営が好調な企業のリーダーが繰り返し言う共通の言葉があることに気がつきました。

業績好調のリーダーが繰り返す言葉とは?

「それって、面白いよね」

外国人が中国で生活をし、経営をしていくことには、たくさんの苦労があるのはご想像のとおりです。ところが、一部のリーダーにとっては、その困難さえもが「面白さ」であるようなのです。

私は、この「面白がる力」こそが、海外事業を成功へ推し進めるひとつのヒントなのではないか、と思うようになりました。では、この「面白がる力」の正体とは、いったい何なのでしょうか?

彼らにひとつ共通して言えることは、新しいことに対して非常に強い「好奇心」を示す、ということです。

「好奇心」というのは、大変興味深いものです。

子ども時代には、誰もが「好奇心」の塊であるのに、成長をしていくうちに、その状態には大きなばらつきが出てきます。ですが、多くの専門家は、現代のリーダーに求められる重要な能力のひとつとして、「好奇心」をあげています。

GEやP&Gなどのグローバル企業がどのように中国やインドといった市場を開発したかが記されている書籍『リバース・イノベーション』(※1)では、海外事業を成功させるマインドセットについて、このように表現しています。

「今日の科学や技術を用いて、途上国で満たされていないニーズに対応したいと思うなら、謙虚さと好奇心を持って始めなくてはならない。たとえるならば、たったいま火星に降り立ったと考えてみるのが最も有効だろう」

世界的なヘッドハンティングファーム、エゴンゼンダ社は、CEOとして着任後に成功するエグゼクティブと、失敗するエグゼクティブの観察の結果から、21世紀のリーダーに求められる素質のひとつに「好奇心」をあげました。(※2)

つまり、ビジネスを加速させるには、リーダーの「好奇心」が鍵になると考えられます。それでは果たして、リーダー自ら「好奇心」をマネジメントすることは可能なのでしょうか。

「好奇心」のマネジメントとは?

皆さんは、ご自分自身の「好奇心」の現状レベルは、どれ位だと考えられますか。イアン・レズリーは「好奇心」に関する著作(※3)の中で、好奇心は生まれながらの個性ではなく、環境によるものだと明記しています。

さらに、好奇心を決定づける要素として、「情報の空白」という理論が紹介されています。それによると、好奇心の高まりを縦軸にした場合、「知識」の高さを横軸に、逆U字型の変化があるとしています。

つまり、ある事柄について、知らなすぎると何の関心ももてず、逆に「全て知っている」と過信していても、同様に好奇心は下がってしまう。また、「自信」と好奇心の関係についても同じことが言えるそうです。

「自己不信」も「自信過剰」も好奇心を駆り立てない、ということです。

たとえば、ある実験によると、アメリカの州都を3つ知っている人は、「自分は州都を知っており、他の州都を知りたいと思わない」が、37の州都を知っていれば、「自分は残り3つの州都について知らない」と認識し、「残りの3つを知りたい」と答えたそうです。

どうやら、適度な「情報の空白」があるとき、好奇心は反応するようです。つまりは、「面白がる」好奇心が旺盛なリーダーは、

1)多くの情報を収集し、大量のインプットをしている
2)それと同時に、「まだ自分が知らないこと(自らの未知)がある」と明らかに認識している

といえます。

リーダーにとってチャレンジングなのは、2点目であることにお気づきでしょうか。

なぜなら人は、経験が豊富になればなるほど「私は全て知っている」という過信に陥りやすい特性をもっているからです。

経験と自信を積み上げながらも、なお「自らの未知」を持ち続ける環境をいかに作り出せるか。これが、リーダーにとって、ひとつの挑戦と言えそうです。

そこで、皆さんが「自らの未知」を探り当てるためのヒントとして、海外事業を成功させたリーダーたちのブレイクスルーのきっかけになった行動をご紹介します。

□あまり話したことのなかった社員と1対1で話す時間をもつ
□同僚の中で、すこし苦手なタイプの人から、アドバイスをもらう
□家族に、「最近の自分はどう見えているか?」を聞く
□いつもは断る外部とのミーティングや会食のアポイントを入れる
□オフィスの中で、普段は行かない場所に行って過ごす
□ずっと気になっていたが、手にしていなかった雑誌や本に目を通す

「それって面白いね」と思われるものはありましたでしょうか?

3つ目の、「家族との対話」は、海外駐在員ならではの項目かもしれませんが、予想以上に大きなインパクトがあるようです。

どれも少しだけ勇気のいる行動ですが、それだからこそ、「情報の空白」を作り出す鍵となるのでしょう。

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【参考資料】
※1  ビジャイ・ゴビンダラジャン(著)、クリス・トリンブル(著)、小林 喜一郎(解説)、渡部典子(翻訳)『リバース・イノベーション』、ダイヤモンド社、2012年
※2 Claudio Fernández-Aráoz ,21st-Century Talent Spotting,
Harvard Busines Review, JUNE 2014
https://hbr.org/2014/06/21st-century-talent-spotting
※3  イアン・レズリー(著)、須川綾子(翻訳)、『子どもは40000回質問する ~あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力~』、光文社、2016年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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