Coach's VIEW

Coach's VIEW は、最新のコーチング情報やリサーチ結果、海外文献の紹介を通じて、組織改革や人材開発、リーダー開発グローバルビジネスを加速させていくヒントを提供するコラムです。


なぜ、海外駐在にコーチングは役立つのか?

なぜ、海外駐在にコーチングは役立つのか?

今年の6月、弊社がタイのバンコクにオフィスを構えて4周年となります。

拠点の開設以降、同国では反政府デモ、軍事クーデター、国王の逝去、景気の下降傾向など、様々な変化が起こっています。しかし、バンコク周辺の工業団地群は日本やアセアン諸国の製造業の重要拠点として、その重要度をさらに高めていると言えます。

それに伴い、日系企業の現地化はますます重要かつ緊急な課題となっています。そして、めまぐるしく変化する状況の中でも、コーチングを導入し、売上や利益等を伸ばし、業績向上に成功している企業もあります。

業績向上を実現している3人の社長の話

先日、コーチングを導入している日系企業3社の社長から、最近の様子を聞く機会がありました。

●自動車部品メーカー

  • コーチングを導入して3年
  • 導入前の2010年~13年は、工場の生産性の上昇率は13%
  • 導入後の13年~16年の上昇率は28%
  • タイ全体で景気が低迷している時期にも生産性は向上している

●オフィス関連機器販売

  • 2013年からコーチングを導入
  • 社長の考えを部下に押し付けるスタイルから、部下の考えを聞きながらベクトルを合わせて進めるスタイルに変化
  • マネジャー層もメンバーとの信頼関係を最重視するようになった
  • 会社全体の風土が変化し、業績好調につながっている

●自動車メーカー

  • 2015年からコーチングを導入
  • 導入以来、数名の社員へのコーチングを継続
  • コーチングの中で現場の生の情報が手に入り、経営判断や人事施策に役立っている

これらは一例ですが、成功している企業で、コーチングはどのように機能しているのでしょうか?

社員がリーダーに求める要素、タイと日本の違いは?

コーチング研究所が15ヵ国(地域)でおこなったリーダーに関するリサーチがあります。(※1)

企業に勤める20~30代の社員(非管理職)を対象に、リーダーにどのような要素を求めているかを調べた結果、タイと日本、それぞれのトップ5は以下の通りでした。(全18項目)

<タイ>

  1. 人を鼓舞する
  2. 戦略的である
  3. 活力がある
  4. チーム力を高める
  5. 多様性を重んじる

<日本>

  1. 戦略的である
  2. 発想が豊かである
  3. 謙虚である
  4. 人の話を聞く
  5. 権限委譲できる

「戦略的である」がいずれも上位にくるという共通点はありますが、リーダーに求める要素は二つの国でだいぶ異なることが分かります。

また、同じ回答者に、価値観(人生で最も価値をおいていること)を聞いています。8項目中トップ3はそれぞれ以下のようになっています。

<タイ>

  1. 誠実であること       50%
  2. 平穏に暮らすこと      30%
  3. 好きなことをして暮らすこと 11%

<日本>

  1. 好きなことをして暮らすこと 24%
  2. 平穏に暮らすこと      21%
  3. 誠実であること       19%

トップ3の項目は同じでしたが、タイ人にとって50%を占めるトップの「誠実であること」は日本人にはわずか19%と、そのウエイトはだいぶ異なるのが分かります。

もし、日本人駐在員がリーダーシップや価値観に対するこのような意識の差を知らずに、自分の考えを押し付けていたとしたら、信頼関係を築くことはできないでしょう。自分にとっての当たり前や常識も、国や文化が違えばまったく別のものになるのです。

私たちは、この違いを当然理解してはいるのですが、現実には微細なところで食い違いが起こります。「理解された」「共有した」と思っていたことが実は共有されていない。何回も言っているのに間違える、などということが日常的に起こっているわけです。

コーチングで向上した海外駐在員の能力とは?

海外駐在員にとって、コーチングがどれくらい有効なのか。2016年3月から2017年2月の間にコーチをつけた海外駐在員に実施したアンケートをご紹介します。(※2)

「コーチングによって、相手と考え方や価値観が違っても、合意点を見つける能力がどれくらい向上しましたか?」という質問への回答結果は下図のとおりです。

n=36
コーチング研究所調査 2017

全員が「やや向上した」以上を選択し、「変化はなかった」と回答した人はいませんでした。

そして、コーチングによって得られた効果としては、次のような回答がありました。

  • 実行するチームを作るために我慢して、メンバーに意見やアイデアを引き出すようにした。それがもっとも近道であると分かり、実践できた。(オランダ駐在)
  • 部下から提案してくることが増えた。(中国駐在)
  • 海外赴任での全く新規の業務開始で不安を抱える中、自分自身の立ち位置、進むべき方向を明確に出来た事が大変助かった。(アメリカ駐在)

海外での文化や価値観の違いに対応するためには、まず、赴任者自身が変化することが求められます。異なる考え方や価値観をもつ相手には、意見を聞くことだけでなく、背景にある考え方や、その人が持っている価値観、赴任者のリーダーシップに求めていることは何か、などを聞くことが必要です。

その上で、自分の意見や考え方、価値観を相手に伝え、それに対してまた相手の意見を聞く。「対話」を通してお互いの間に共有や理解が生まれるのだと思います。

前述の3社の共通点は、日本人の社長以下、複数名の日本人マネジャー、タイ人マネジャーが同時に社内でコーチングを実行していることです。これら3社においても、アンケート結果同様の効果があったことが予想されます。

社内の一部でなく、いたるところで「対話」を起こし、そこで、合意点を見出し、ビジョンを共有し、一緒に考えながら未来を創っている。

コーチングは「対話」のプラットフォームを創るのに有効に働くのだと思います。

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【参考資料】
※1 コーチング研究所調査
 「組織とリーダーに関するグローバル価値観調査2015」(2015年)

※2 コーチング研究所調査
 「海外駐在員がコーチをつけて伸ばす能力とは」(2017年)

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