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効果的な内省を促すために、気にしておきたい1つのこと

効果的な内省を促すために、気にしておきたい1つのこと
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期末面談の季節です。

1年間の自分を振り返り、現在地を把握し、次に向かってもらう、そんな面談ができると効果的です。

相手の内省をどう効果的に促進できるのか、それが本稿のテーマとなります。

相手に、より深く内省して欲しい時、皆さんは、どのような問いを投げかけますか?

例えば、下記のような問いを通じて、相手に考えさせ、内省を促そうとすることは、珍しくないかもしれません。

なぜ、この評価になったと思う?
なぜ、あの行動を取ったの?
なぜ、そう考えるの?

問われることで、改めて、自分について考えるきっかけになりそうです。

しかし、ハーバードの研究チームは、これらの質問は、内省を促す上で、非常に「非効率的」であることを発見しました。

要因は「なぜ?」という質問にありました。

「なぜ」が、非効率な理由

実際に、深い内省に到達した人達の問いのパターンを調べたところ、「なぜ」の問いが150回程度だったのに対し、「なに」の問いは1000回以上使っていた、ということが分かりました(※1)。

そして「なぜ」の弊害について、

「勤務評定がふるわなかった従業員が、『なぜ評価が低かったのだろう』と自問する。すると、自分の強みや弱みに対する理性的な評価ではなく、自分の恐れ、欠点、不安感に支配された釈明に終始しがちになる。(「なぜ」の質問によって)いくら探し求めても、私たちは無意識の思考、感情、動機の大部分にはアクセスできない」と指摘しています。

「なぜ?」と問われたとき、何かドキドキした経験はないでしょうか?

もしかすると、私たちが「なぜ」の質問とどう向き合ってきたのか、その歴史や経験が影響しているのかもしれません。

「なぜ、言うこと聞けないの?」と親から問われ、
「なぜ、そんなこともできないの?」と友達に笑われ、
「なぜ、結果が出せないの?」と上司に詰められる。

いつしか、「なぜ」の質問は、これから始まる否定を予告するサインとなってきました。

ご存知の通り、人は否定に対して反応をします。

否定のサインは、大脳辺縁系が目敏く察知し、闘争・逃走の反応を何よりも優先させます。そしてそれは、他の脳の機能を停止させてまでも、自らを守ることを優先にするほど強力です。

具体的には、創造的思考を司る大脳新皮質の機能も止め、自由に発想する前に、身を守らせる、というように(※2)。

コーチの「なぜ」の使い方

私のクライアントが面白いことを言っていました。

彼は、エンジニア出身の経営幹部でした。

「『なぜ』を5回問う。それが自分の成功原則だった。
『なぜ』を課題やものに問い続けた。すると、解決や品質が手に入った。
『なぜ』を人や組織にも問い続けた。すると、沢山の言い訳が手に入った」

「なぜ」の問いが、セオリー通り大脳辺縁系を刺激し、人や組織の防衛機能を起動させたのかもしれません。

「なぜ」という問い自体が問題ではなく、感情を宿す対象には、注意して使った方が良さそうだ、ということなのでしょう。

私たちコーチも、経験上「なぜ」は慎重に使います。例えば、下記のように、敢えて"変換"して使う工夫をします。

なぜ、そう決断したの?
 →決断の判断基準はなに?

なぜ、君はそう考えたの?
 →なにがきっかけで、そう考えるようになったの?

なぜ、顧客は不満だと思う?
 →顧客の不満はなにを教えてくれた?

問われたときに、どんなニュアンスの違いを感じますか?

次の面談で、より深い内省を促してみたいとき、このわずかな違いを創ってみてはいかがでしょうか?

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※1
What Self-Awareness Really Is (and How to Cultivate It)
Tasha Eurich
JANUARY 04, 2018
Harvard Business Review
Copyright © 2017 Harvard Business School Publishing.
※2
The Kaizen Way P.46
One Small Step Can Change Your Life
by Robert Maurer 2004

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