Coach's VIEW

Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。


「問い」は、新しい意味を創造する

「問い」は、新しい意味を創造する
メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

会社の状態を理解しようとするとき、人は、組織のある状態を捉えて観察しようとする傾向があります。会社組織が静止している状態で観察しようとするわけです。しかし、会社組織は常に動いているものです。観察したときの状態が、永遠に続くわけではありません。

会社の中で起こる問題と向き合うときも同じです。誰しも、自分自身と問題を切り離し、外側から問題を見ようとします。しかし、実際には自分自身もその「問題」の一部です。会社組織の外側に自分を置いてしまえば、それはまた違う組織になるわけです。

会社は、機械的なシステムではなく、人間の集合と集団によって成り立っていますから、機械を外側から見るようにはいきません。停止した車のボンネットを開けて、エンジンやバッテリーを観察するのとは違うのです。

この法則は、コーチとクライアントの関係においても当てはまります。

自分も関わりの一部である

人が存在し、そこに関わりが生まれたとき、その関係を無視して、相手だけを客観的に観察することはできません。自分自身もその「関係」の一部であり、切り離して考えることはできないのです。

コーチは、クライアントに「質問」をするわけですが、このような構造の中で、コーチはクライアントに「答え」それも「正解」を求めがちになるものです。

コーチングにおける「質問」の目的は、クライアントから正解を引き出すことではありません。「質問」に「答える」過程で、お互いのあいだに新しい意味や理解を創造することにあります。

そのプロセスは「探索的」なものです。決して、直線的に答えに行き着くわけではありません。

視点を変えたり、時間軸を変えたり、さまざまな考えを巡らせるそのプロセスを、「問い」は求めています。

解は一つではない

時に、コーチは、自分自身の「答え」をもったまま、クライアントに質問する場合があります。それはコーチ自身が自分でも気がついていない「良し悪しの判断」であったり、人の「あるべき状態」の信念が前提となった質問です。

「アクティブ・リスニング(傾聴)は、上司としてもつべきスキルであり、能力である」という前提をもったコーチは、クライアントに対して、

「部下の話をどの程度聞いていますか?」
「部下の話す量と、あなたが話す量とではどちらが多いですか?」

と聞くときに、

「上司は部下の話を聞くべきである。そのスキルを身につけるべきだ」

というコーチのもつ「正解」に、質問を介してクライアントを誘導することがあります。

では、アクティブ・リスニングは、企業の業績向上にどう関係するのでしょうか?「アクティブ・リスニングが上司部下のギクシャクした関係を改善する」とか、「アクティブ・リスニングが業績向上に貢献する」という根拠を、目にしたことはありません。

これは、アクティブ・リスニングは役に立たないという話ではありません。部下の話を聞こうとしない上司が、部下の話に耳を傾けるようになることは、部下にとっても組織にとってもプラスになると思います。

ただ、アクティブ・リスニングが、部下の生産性向上や企業の業績向上、こじれた人間関係や問題の解決につながる「唯一の方法ではない」ということです。

問題というのは、もっとずっと複合的なものです。「正解」をもち、合っているかどうかをチェックするような質問は、コーチングにおける「質問」とは言えません。

自分はどんな前提をもっているのか?

人間は、交換可能なシステムのパーツではなく、一人ひとりが異なる存在です。また、目的志向のある能動的な存在であり、自分自身と自分を取り巻く環境を変えていく存在です。

コーチングは、その考え方に基づいて行われるものであり、コーチの「質問」も、その上でなされるものだと考えられます。

コーチがクライアントに質問をする目的の一つは、クライアントが、自分の「前提」となる考え方や、物事の解釈を問い直す機会をつくることです。

そうであれば、一歩下がって、コーチも自分を「検証する」ための「スペース」を創り出したいものです。

クライアントに向けて質問をするとき、自分に向けても問いかける。

「誰のための質問か?」
「何を目的とした質問か?」
「質問をする、その目的は何か?」

質問は、コーチから一方的にクライアントに向けられるものではなく、クライアントとコーチの間におかれるものです。そこでは、たった一つの正しい答えが求められることはありません。

「問い」の創造をコーチする

質問は、自分自身の行動や言動を違う視点から眺めることを可能にします。

一つの質問によって考える。
新しい考え方や解釈を試してみる。
新しい選択肢を探す。

「何を知る必要があるのか?」
「何を用意するか?」
「何を扱うのか?」
「次のステップは何か?」
「どのような決断をするのか?」
「どんな情報に影響されているのか?」

一つの問いかけであっても、そこから連動し、さまざまな質問が生まれます。

コーチの投げた一つの問いから、クライアント自身が自分に向けて問いかける質問を次々と創り出していく。そのプロセスをコーチすることこそが、コーチの仕事なのです。

コーチがすべての質問するわけではなく、クライアントが「問い」を創造し始める。

つまり、「問い」は、新しい意味を創造するための刺激であり、この創造のプロセスがクライアント自ら実践できるようになることが、コーチングの目的であるといえます。

先日、コーチ・エィのコーチングを受けているアメリカ人のクライアントにインタビューをする機会がありました。

印象に残ったのは、

「自分はまだ変われると思った」

という言葉でした。

それは心に残りました。

この記事はあなたにとって役に立ちましたか?
ぜひ読んだ感想を教えてください。

投票結果をみる

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。

ラーニング 意識変革 視点を変える

組織へのコーチング導入や組織リサーチ、グローバル人材の開発についてなど、お気軽にご相談ください。

メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

関連記事