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「自己認識」を高める、たった1つの方法とは?

「自己認識」を高める、たった1つの方法とは?
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みなさんはこれまで、もらったプレゼントを「全く使わなかった」とか「あまり気に入らなくて、他の人にあげてしまった」というような経験はありますか?

誕生日、結婚祝い、出産祝い、クリスマス、お土産など、プレゼントをもらう機会はいくつかありますが、もらったプレゼントにいつも大喜びするかというと、残念ながらそうではないこともあります。

「残念なプレゼント」はなぜ生じるのか?

ハーバード大学のフランチェスカ・ジーノらがこんな実験をしました。(※1)

90人の被験者を、贈り物を「贈る」役と「もらう」役に分け、アマゾンから1人20ドルの予算内でなんでも送っていい、という実験です。

「もらう」役は全員「ほしいものリスト」を作成して「贈る」役に公開しました。「贈る」役は、相手の「ほしいものリスト」から選んで送ってもいいし、自分で好きなプレゼントを選んで送ってもいい、とされました。

実験の結果、「贈る」役の多くの人は「ほしいものリスト」から選ぶのではなく、自分でプレゼントを選んで送っていました。ところが、プレゼントを受けとった「もらう」役の多くは、プレゼントを見て「ほしいものリストから贈って欲しかった」と答えたのだそうです。

「贈る」役は「もっと驚かせよう」「もっと喜ばせよう」と、相手のためを思ってわざわざ自分でプレゼントを選ぶという方法にしたのかもしれません。その背景には「自分は相手を驚かせたり、喜ばせたりするプレゼントを選ぶことができる」という心理があると考えられます。

このような現象は、よく知られている「ダニング=クルーガー効果」から説明できます。

コーネル大学のデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーは、エンジニアが自分自身の能力をどのように評価するのかを調査しました。

すると、企業Aでは32%のエンジニアが自分たちの能力を「トップ5%」だと評価し、企業Bでは42%のエンジニアが自分自身を「トップ5%」だと評価していました。

そして、人は誰でも「実際の能力が低い分野ほど、自分の能力を高く評価してしまう」傾向があるということがわかりました。この傾向はなんと、文法、金融、数学、チェスなど、あらゆる分野に当てはまったのです。(※2)

能力が低い分野では、「自分の能力」と「自分以外の人の能力」の差を正しく評価できません。それが自分を過大評価する傾向につながる、と考えられるのです。

プレゼントは、贈った相手から正確なフィードバック(特にネガティブなフィードバック)をもらいにくい性質があります。そのため、私たちは「相手に喜ばれるプレゼントをする」能力を高める機会が少ないのです。

「実際の自分の能力」と「自分が思う自分の能力」のギャップは、しばしば「自己認識」という言葉によって説明されます。一般的には、このギャップが小さい人は「自己認識が高い」、このギャップが大きい人は「自己認識が低い」と言われます。

企業において、リーダーの「自己認識」は無視できません。

「自己認識が高い上司」の組織は、「自己認識の低い上司」の組織よりも業績が良いことが分かっているからです。(※3)

ある調査では、「上司を辞めさせられるなら昇給はなくても構わない」と答える社員は65%、自分の上司のことを「基本的に退屈な人」だと答える社員は82%いました。一方で、上司の70%が「自分は人を勇気づけたり、動機づけたりすることが得意」だと答えています。(※4)

多くのリーダーは自己認識をさらに高める余地がありそうです。

自己認識はどのようにして高めることができるか?

実は、私はエグゼクティブコーチとしての経験の中で、気づいたことがあります。それは、「自己認識の低い人は質問をしない」ということです。

たとえば、飲み会のような場でワイワイと盛り上がっている中に、よく見ると、話す量に違いはなくても「質問をする人」と「質問をしない人」がいます。

「質問をしない人」は、必ずしも「話をしない人」や「話を聞かない人」ではありません。だから気付きにくいのですが、相手が話し終わったら質問をするのではなく、相手の話題に関連した自分の話を始めるのが、こういった人の特徴です。

私は、たまたま複数のクライアントが集まった場で、クライアントの360度フィードバックにおける「自己認識のスコア」が低い人ほど「質問をしない」という傾向に気づきました。詳しい分析はこれからですが、「自己認識の低い人は質問をしない」光景をしばしば目にします。

では、なぜ自己認識が低い人は質問をしない傾向があるのでしょうか?

私は、「質問をしないから、自己認識が高くならない」のだと考えています。

子どもはとても多くの質問をします。ある研究によると2歳から5歳までの3年間だけで周囲に4万回の質問をすると言われています(※5)。

子どもの質問の中には、「どうして食べちゃダメなの?」「どうして僕だけ叱られるの?」のように、「自分が感じたこと」と、「他の人が感じたこと」のギャップの原因を探る質問が多く含まれています。このような質問を繰り返しながら、子どもは少しずつ、自己認識と他者認識のギャップを埋めているのです。

自分が感じていることと、周囲が感じていることにギャップがあるのは、大人も同じです。

しかし、若い頃ならまだしも、それなりの年齢、ポジションになると「この文章、意味が分からないよ」「お客さんの前であの態度はないだろう」「その服装だとちょっと失礼じゃないかな」などと言ってくれる人がどんどん少なくなります。自己認識が低くなるリスクは、役職が上がるごとに高くなるのです。

もし、「この文章って、わかりやすいかな?」「さっきの会議、みんなはどう思ったかな?」「この組織の方向性はどのくらい明確だと思う?」のような質問を自分からする習慣があれば、自己認識は低くなりにくいはずです。

「ダニング=クルーガー効果」では、どのような分野でも、自分の不足している部分に気づくことが増えれば自己認識は高まる、ということが分かっているからです。(※6)

「自己認識を高めよう」と考えても、何をしたらいいか分からないかもしれません。ですが、「周囲に質問をする」ということなら、今すぐ始められるでしょう。

プレゼントをあげた人に「どうでしたか?」と聞くだけで、プレゼントを贈る能力が高まる可能性があるのです。

自己認識を高めるためのたった1つの方法、それは、質問をすることなのです。

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【参考資料】
※1Francesca Gino,Francis J.Flynnb, Give them what they want: The benefits of explicitness in gift exchange

※2 David Dunning, Why incompetent people think they're amazing

※3 Cashman, K., 2014, Return On Self-Awareness: Research Validates The Bottom Line Of Leadership Development,2014 Forbes.com LLC

※4 「リーダーは経営幹部のあり方以前に、人としてのあり方を学び直すべきである」
ラスムス・フーガード,ジャクリーン・カーター,ヴィンス・ブリュワートン
HBR.ORG
翻訳リーダーシップ記事 2018年03月09日

※5 『子どもは40000回質問する ~あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力~』(光文社)
イアン・レズリー(著)、須川綾子(翻訳)

※6 『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80』(講談社)
池谷裕二

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