Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。
組織開発の成功のキモとは?
2019年07月16日
Language: English
「対話と挑戦の文化を作る」
「イノベーションが創出される風土を作る」
「従業員同士の対話力を高め、エンゲージメントを向上させる」
これらを目的としたさまざまな組織開発プロジェクトに取り組んできました。その中で成果や変化を感じながらも、依然として課題に感じていることがあります。
それは、「組織開発プロジェクトを、いかに全従業員が参画できるものにするか?」です。
全社プロジェクトで起こりがちなこと
プロジェクトが進む過程で、こんな様子に出会うことがあります。
- 「組織開発プロジェクトで一部のメンバーが盛り上がっているけど、私には声がかからない」と、ふて腐れるベテラン社員
- 「そもそも、私はプロジェクトの内容自体を理解していない」とあっけらかんと語る経営メンバー
- 「次から次に、新しいことを始めるんだよね~」と、他人事のように話すリーダー層
こうした方々の下でプロジェクトに取り組む社員には、
「周りに知られないプロジェクトに時間を割くのは気が引ける」
「上司の協力が得られないから、できる範囲で取り組もう」
といったことが起こり始めます。
全社の取り組みとして始めた組織開発プロジェクトが、いつの間にか局所的になり、成果もささやかなものになっていくのです。
「一部の盛り上がり」で終わってしまうのは、組織開発プロジェクトだけでなく、新規事業立ち上げのような場面でも頻繁に起きているのではないでしょうか。
では、組織開発も新規事業も、選ばれたメンバーだけが「局所的」に取り組むのではなく、全社で取り組むには、何ができるのでしょうか?
私は、プロジェクト概要を全社に知らしめた上で、全従業員が「何かしら」の役割を持ち、取り組めるようにすることが大事なのではないかと思っています。
それはつまり、「プロジェクトの傍観者を作らない」ということです。
「傍観者」を作らない。
一万人以上の社員がいるA社では、社長がプロジェクトオーナーとなり、従業員同士の対話を促進することでエンゲージメントを向上させようと、何年にもわたりコーチングを導入しています。
半年以上にわたってコーチングを学んだ数百人の「社内コーチ」が職場で、対話の必要性やコツを伝授、自分なりの方法で職場での対話を実践するよう説いています。
定期的な組織調査では、「私は、職場の人との対話によって自身の成長を実感している」や、「私は、〇〇プロジェクトについて週に10分以上話す時間を作っている」といった項目に上昇傾向が出てきています。
A社の取り組みを通して分かったのは、全従業員がプロジェクトに参画するには、「良質な対話と仕組み」この両面が必要だ、ということでした。
まず、経営トップやプロジェクトオーナーが「全従業員にむけてプロジェクトの目的や意図をメッセージします。
そして、全従業員が、社内の誰かと次の3点について対話できる仕組みを作るのです。
- このプロジェクトについてどう思っているのか?
- このプロジェクトを通して「あなたは」何を実現したいか?
- プロジェクトで行動したことによって、どんな進捗、成長があったのか?
仕組みとしては、
- 上司部下との定期的な1on1でトピックの一つとして話す
- 階層別、部門別に集まる会議の場で、出席者同士で対話する時間を取る
- 組織を越えた社員が集まる場を作り、ワークショップのような形式で部門間交流も兼ねて対話する場を作る
など、上司と部下の間だけでなく、部門を越えて対話の可能性もあるでしょう。
では次に、「良質な対話」はいかに作られるのでしょうか?
「良質な対話」のつくり方
今、様々な企業が1on1制度を取り入れています。しかし、その実施率を高めることには注力しても、1on1の質の向上まで取り組まれている企業様はまだまだ少ないようです。
しかも、社員の中には、全社プロジェクトに対して「心からの賛同はできかねる」「やっても無駄だ」「昔、同じようなことに取り組んだが心折れた」「働き方改革を推奨するなか、なぜこんなことに時間を割くのか?」など、いろいろな想いを持つ人もいるでしょう。
さまざまな想いをもつ人たちと「良質な対話」をするには、
- 未来に対して肯定的な問いかけをする
- 一人ひとりがやるべきことでなく、何をしたいか考えられるようにする
- アクションを心から後押しする
など、聞く側の姿勢が、大きく関係していると思います。
- 相手が気持ちよくアイデアや考えを話せるには、どう関わるのがいいだろうか?
- 相手は、誰と意見を酌み交わすことで気づきが多い機会になるだろうか?
- 相手が行動を続けるためには、どんな支援ができるだろうか?
- この取り組みを通して、相手にどんな成長を感じてもらえたらいいだろうか?
このような問いをもちながら対話を進めることができれば、プロジェクトを自分事として考える「良質な場」となるのではないでしょうか。
一人ひとりが本音で考え、言葉にすることは、組織開発を全社の取り組みにする成否がかかっているように思わずにいられません。
ドラえもんのひみつ道具のような何かを会社にパッとかぶせて、理想とする会社の姿へ、パッと変えることができたらと思いますが、そうは簡単ではないようです。
でも、組織のいたるところで思考し、互いに話す場が増えれば、組織の開発は加速するのではないか。私はそう思っています。
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