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ビジョンづくりに必要な、たったひとつのこと

ビジョンづくりに必要な、たったひとつのこと
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10月になりました。

上半期を振り返ったり、目標を再設定したりする機会も増えているのではないでしょうか。

コーチングのプロセスでも、目標設定はとても重要です。

なんとしても手にしたいワクワクするビジョンがはっきりし、そのための目標をセットすることができれば、おのずと行動は加速し、コーチングは前進します。

「実現したい」と強く思えるビジョンや目標を明確にすることができれば、すでにコーチングの半分以上が成功していると言ってもいいかもしれません。

それほどまでに重要なビジョンや目標設定ですが、みなさんは、コーチングの際に、どれぐらいの時間をかけているでしょうか?

相手にビジョンを聞く時に、どんな工夫をしているでしょうか?

三者三様、建築家たちのアプローチとは?

私は今、家族と家づくりに取り組んでいます。

どんな家にしたいのか家族のすり合わせも不十分で、理想のイメージも曖昧だったスタート時に、勉強と情報収集のために3人の建築家とお会いすることにしました。

3人は、それぞれ異なるアプローチのコミュニケーションを取りました。

Aさんは、家族構成や最低限必要な条件などのスペックをヒアリングし、後日ファーストプランをプレゼンテーション。その後、気になる点をチューニングしていく流れで、Aさんにこだわりと自信があることが伝わってきました。しかし、私たち家族のこだわりについて触れることはほとんどありませんでした。

Bさんは、非常に物腰柔らかく話を聞いてくれる方でした。

しかし、私たちの夢が広がり話が乗ってくると、「それは法律的に無理」「この条件では難しい」「このやり方がいい」と、話せば話すほど、現実に引き戻されていきました。

そしてCさんは、まず私たちがCさんに問い合わせをした理由を聞き、なんとその後3時間、とりとめのない私たちの話をメモを取りながら、気長に聞き続けてくれました。

Cさんと話していると、不思議と家族が楽しく生活をしている絵が頭に何枚も浮かんできました。

結果的に、Cさんとご一緒することを決めたのはご想像通りです。

その後、Cさんとコミュニケーションを重ねる中で、私は、コーチングにおけるビジョンの明確化や目標設定について思いを巡らせていました。

  • 私のクライアントは、ビジョンを躍動的に描けている感覚があるだろうか?
  • 私は、AさんやBさんのようなアプローチをとっていないだろうか?
  • そもそも私とクライアントさんは、ビジョン作りや目標設定にワクワクしながら取り組んでいるだろうか?

なぜ「ビジョンを聞く」のは難しいのか?

ビジョナリーな名経営者は別として、数百人のビジネスリーダーをコーチしてきた経験を振り返ると、最初から魅力的で自分自身をモチベートするようなビジョンを語れる方は、そう多くはありません。

目の前の仕事に毎日没頭しているビジネスパーソンにとってはなおさら、長期的なビジョンは、どうしても曖昧なものになりがちです。

曖昧な話をする相手の話を聞き続けるには、聞くスキルはもちろん、忍耐力もエネルギーも必要です。

さらに、「ビジョンとはかくあるべきだ」という思考の枠を持ってしまうと、その枠以外のことを聞くことが難しくなりますし、「相手の話していることが"よく分かった"」と思えば、さらに聞く必要はないだろうと、積極的に質問するのを止めてしまうでしょう。

「相手のビジョンを聞く」というのは、意外と難しいことかもしれません。

ワクワクするビジョンを聞くために大事な、たったひとつのこと

ある時、Cさんに設計で大事にしていることを伺いました。すると、

「まず、クライアントの、家に対する固定観念を外すことを考えています」と教えてくれました。そして、、

「お客様とは、できるだけたくさん会話することを意識しています。
 家族の毎日のこと、家族で大切にしていることなどです。
 何気ない話の端々に、お客様の感性や好きな空間を知るヒントが
 たくさん隠されているんですよね」

と続けました。

コーチングに置き換えると、Bさんの言う「常識的に」や「現実的に」といった誰しもが少なからず持っている思考の枠(固定概念)からいったん出て「聞き続ける」ということではないでしょうか。

また、ビジョンを話すからといって、「未来」について一点集中で対話を組み立てるのではなく、過去や現在、趣味やプライベートまで幅広く多様な視点で聞きながら本当に実現したいことをクライアントと「一緒に探索していく」ことのように思います。

この2つのポイントから、ビジョンの明確化や目標設定の際にコーチとして大切にしたいスタンスは、とにかく、「焦らない、急かさない」ということです。

私たちは、ビジネスの中でコーチングをしているわけですから、期限や実現可能性、論理性を意識するでしょう。

ただ、コーチがそれらを気にし過ぎて焦ると、当然それはクライアントに伝わります。

何でも自由に表現していいはずのコーチングの場が、枠のあるコミュニケーションの場となり、探索は難しくなります。

その結果、"適度に"ワクワクするビジョン、"そこそこ"達成したい目標設定になってしまう可能性が大きくなります。

気乗りしないビジョンや目標に、当事者意識は宿りません。

Cさんに未来の家で暮らしているイメージを一切せかされることなく気長に聞いてもらうことで、私たちの曖昧だった理想のイメージはだんだんと言葉になり、必要だと思っていたものが、実はいらないものであることに気づいたりしました。

コーチングでも、Cさんのようなビジョンの明確化、目標設定がしたいものです。

対話を通じて、曖昧だったものが明らかになり、最初に想定していた目標とは、まるで違う目標となるかもしれません。

しかし、このビジョンや目標が変化していくことこそがクライアントの成長、前進であり、自分が本当に手にしたいことをクリアにできた価値は、とても大きいのではないでしょうか。

本当に手にしたいことが定まった時の、エネルギーとクリエイティビティ、パフォーマンスの高さは計り知れないからです。

「焦らない、急かさない」で聞く。

ワクワクするビジョンづくりの、シンプルなポイントです。

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