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幸せになれる正しい目標設定の仕方
コピーしました コピーに失敗しましたHappy New Year!
あけましておめでとうございます。
いよいよ東京オリンピックを控えた2020年が始まりました。
あなたはどんな目標を立てましたか?
良い目標を設定できるかどうかでコーチングの成否の大半が決まると言われるほど、目標を設定する能力は、達成までのプロセスの中でも重要なものです。
また、目標到達までの時間を、ワクワク希望に満ちた時間にするのも、苦痛でしんどい時間にするのも、目標次第と言っても過言ではありません。
それほど大切な目標設定について、今回のコラムでは、"幸福"という観点で捉えてみたいと思います。
幸福度とパフォーマンスの関係
幸福度がパフォーマンスに及ぼす影響については、たくさんの研究があります。
「幸福学の父」とも称される米イリノイ大学心理学部名誉教授のエド・ディーナー博士らは、「幸福感の高い社員の生産性は平均で31%、売上げは37%、創造性は3倍高い」ことを示しています。(※1)
「幸福度」がパフォーマンスに30%以上も影響を与えるとなると、常日頃、組織のパフォーマンスを上げるべく四苦八苦している私たちリーダーにとって、組織メンバーの主観的な幸福感は放ってはおけない要素です。
幸福感を高めるキーとは?
では、幸福感を高めるためのキーとは何でしょうか。
神戸大学の西村和雄教授と、同志社大学の八木匡教授が実施した調査結果は興味深いものです。(※2)
日本人2万人を対象に、所得、学歴、健康、人間関係、自己決定を説明変数として分析を行ったところ、所得や学歴よりも「自己決定」が強い影響を与えていることが明らかになったそうです。
調査結果から、両氏は次のように述べています。
「自己決定によって進路を決定した者は、目的を達成するために自らの判断で努力することによって、成果を達成する可能性がより高くなる」
「結果に対して責任と誇りを持つことができ、達成感と自尊心が生まれ、幸福感が高まると考えられる」
また、「日本は国全体で見ると『人生の選択の自由』の変数値が低く、そのような社会で自己決定度の高い人が、幸福度が高い傾向にあることは注目に値する」とも添えています。
自分自身の経験を振り返っても、これまでのコーチングを振り返っても、"自分が決めた"目標について話しているときは、明らかにそうでない時と比べ、表情や声のトーンが異なります。
やる気や覚悟、情熱はおのずと相手に伝わるものなので、自分で決めたかどうかは、すぐに分かります。
コーチとしてこれまで200人以上の目標設定に立ち会っていますが、確かに、はじめから「自分で決めた」目標を話す方は少ないかもしれません。会社の目標からのブレークダウンだったり、上司からリクエストされた数値目標だったり。
その目標は、自分で選択した結果ですか?
さて、みなさんが年初に設定した、もしくは、設定しようとしている目標は、「自分が決めた」と言える目標でしょうか?
本当に、混じりけ無く自分の意志に基づいて決めた目標でしょうか?
先述の通り、「幸福感」は所得や学歴という外部基準ではなく、「自分が決めた」と思えるかどうかが重要ということですから、その目標が組織のロジックに合っているかどうかや、周囲と整合性が取れているか以上に、「本人の主観」に注目する必要がありそうです。
もしも、あなたが部下や後輩の目標設定をサポートする立場であれば、その相手の主観、つまり、「どう思っているか?」「どう感じているか?」を聞くことが何よりも重要になるのではないでしょうか。
目標を「自己決定」するために
目標に対する主観を明らかにするための具体的な方法として、目標のベースにある目的(自分が手に入れたい状態)にアプローチするアイデアをご紹介します。
- この仕事は何のためにするのか?
- この仕事は誰の役に立つのか? 誰に喜ばれるのか?
- この仕事を通じて自分はどうなりたいのか?
実はこの3つの質問は、数年前、ちょうど年初の目標設定をしている期間に、自分のコーチから問いかけられた質問です。
ありきたりな業務目標設定をした私からは、きっと覚悟も情熱も伝わってこなかったのでしょう。
コーチは、ゆっくりと、少し重いトーンで、この3つの質問を私に投げかけました。
1か月近く、この3つの問いは私の頭の中をぐるぐる回り、否応なしに自分のやりたいことと対峙することになりました。
そして、次第に自分のやりたいことがシンプルになり、当初コーチに話していたものとは全く別の「自分が決めた」目標をセットすることができました。
結果的に、その年は目標達成もでき、あらゆる挑戦を楽しく捉えることができました。
2020年を幸せに満ちた年にするために、今年最初の取り組みとして、「自分が決める」目標設定をお勧めします。
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【参考資料】
※1 「PQ: ポジティブ思考の知能指数 ~幸せな気持ちになると、何事もうまくいく~」、ショーン・エイカー、ハーバードビジネスレビュー2012年5月号
※2 幸福感と自己決定―日本における実証研究 西村和雄, 八木匡
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