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WHYを手放せ!

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私たちは、自分のことをどれだけ知っているでしょうか?

  • 年初に「絶対達成しよう!」と目標を立て、しっかり計画を練ったにも関わらず、未達のまま年末を迎えてしまう。
  • 優先すべき仕事があるのに、メールやスマホに時間を費やしてしまう。
  • 部下の話を聞いて後押しするつもりだったのに、なぜか否定的なことを言ってしまう。
  • 関係を深めなければならない相手なのに、どうしてもその相手を避けてしまう。

頭では分かっているつもりなのに、どういうわけか意図通り動かない自分がいる。そんなことはないでしょうか?

せっかく立てた2020年の目標ですから、年末には、気持ちよく達成していたいものです。

目標に向かって自分自身をしっかり操っていく。

そのためには「自分自身を知る」ということが大切になります。

ディズニー/ピクサー映画が描く「人の内側」で起きていること

私が「自分自身を知る」ということに興味を持ったのは、『サピエンス全史』の著者ユヴァル・ノア・ハラリ氏の新著『21 Lessons』(※1)の最後の章に書かれた次の一節からでした。

自分の呼吸を観察していて最初に学んだのは、これまであれほど多くの本を読み、大学であれほど多くの講座に出席してきたにもかかわらず、自分の心については無知に等しく、心を制御するのがほぼ不可能だということだった。どれほど努力しても、息が自分の鼻を出入りする実状を10秒と観察しないうちに、心がどこかにさまよいだしてしまう。私は長年、自分が人生の主人であり、自己ブランドのCEOだとばかり思い込んでいた。だが、瞑想を数時間してみただけで、自分をほとんど制御できないことが分かった。私はCEOではなく、せいぜい守衛程度のものだった。

人類の過去や未来を壮大なスペクタクルで描いてきた著者。私からすれば、人類について誰よりも知っているであろう著者の一人です。そのハラリ氏が自分に目を向けた時、「自分のことについては何も知らず、自分を制御することも出来ない」と言うのです。

* * *

リーダーに必要だとされる「自己認識」についてはさまざまな定義がありますが、組織心理学者で『インサイト』の著者ターシャ・ユーリック氏は「自己認識には2つの種類がある」と言います。

ひとつは、自身が見る自分と他者が見る自分との違いを自覚する「外面的自己認識」で、もうひとつは自己の内面世界(思考と感情)を観察する「内面的自己認識」。

「内面的自己認識」とは、自分の価値観、情熱、願望、反応(思考、感情、態度、強み、弱み)などをいかに明確にとらえているかを示し、仕事や人間関係の満足度、自己および社会的コントロール、幸せに相関しているそうです。

では、皆さんは、自分の内側にある感情や、それが自分に引き起こしていることをどれだけ把握しているでしょうか。

2015年公開のピクサーとディズニーによるアニメーション映画「インサイド・ヘッド」は、私たちの内側で起きているこの難解な出来事を分かりやすく描写しています。

主人公の女の子、ライリーの頭の中には、人間の5大感情である喜び、悲しみ、怒り、恐れ、嫌気を代表するキャラクターが存在し、それぞれが彼女を幸せにしようと、日々頭の中の司令部で奮闘するという物語です。

この映画は、私たちの内側には複数の感情があり、それらが複雑に絡み合って私たちを動かしていることを教えてくれます。

5つの感情は、時に互いにコンフリクトを起こし、一つの感情が主導権を握ることもあれば、複数の感情がうまく協調しあうこともあります。

例えば、ライリーが父親と口論になりかける場面。

父親のイラついた発言に、ライリーの中の「怒り」のキャラクターが主導権を握り、自分も怒りの態度で言い返そうとします。

「怒り」に対して「恐れ」のキャラクターが「そんなことをしたら、事態はライリーに良くない運びになるぞ!」と制止します。しかし「怒り」に聞き入れられず、「怒り」の感情が主導権を握ったまま、ライリーと父親はぶつかり合うことになってしまいます。

ライリーは成長する過程で、大きな感情だけに身をゆだねて行動するのではなく、それ以外の感情にも気づき、それらを踏まえた「より高度」な振る舞いが出来るようになっていきます。

「複雑な内側」の見つめ方

では、どうしたら私たちはこの「複雑な内側」をより明確に把握できるようになるのでしょうか。

前述のターシャ・ユーリック氏は、調査によって「内面的自己認識力」の高いリーダーは、内省する時に「Why」ではなく、「What」の問いをより使うことを発見しました。

「何故そうしたのか」と内省するために問いかけても、自分の内側で起きている複雑な状況を紐解くことはできません。自分を観察する代わりに、自分を正当化し、納得できる解釈、作り話を考えてしまうのです。

一方、「What」による問いは、客観的な事実を洗い出すことで自分の内側を紐解き、未来志向を保つ一助になると言います。

例えば、意図せず人を傷つけてしまったようなとき、「なぜ(Why)そう言ってしまったのか」と振り返るのではなく、「何が気になったのか」「何に否定的だったのか」「湧いてきた感情は何か」「何を優先させたのか」「そういった行動をとってしまうときに共通していることは何か」「より建設的にするために、やれることは何か」と「What」で問うのです。

「What」の問いは、自分を納得させるストーリーではなく、自分をより深く知る機会になると考えます。

* * *

私たちを取り巻く環境はより複雑になってきています。

より多くの人たちと協力し、答えが明確ではない時代を乗り越えていくことが求められています。

2020年、その傾向は更に加速することでしょう。

この難しい環境下で目標を達成するために、自分の内側に目を向け、自分自身をより知ることを通じて、「自分を操れるレベル」を一段上げてみてはいかがでしょうか。

「あなたは今日、自分について何を学びましたか?」

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【参考資料】
※1 ユヴァル・ノア・ハラリ(著)、柴田裕之(翻訳)、『21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考』、河出書房新社、2019年


・「リーダーに不可欠な『自己認識力』を高める3つの視点」、ターシャ・ユーリック

・「ネガティブな感情をコントロールする方法」、スーザン・デイビッド、クリスティーナ・コングルトン、ハーバード・ビジネス・レビュー(2014年10月号)

・「セルフ・コンパッションは自分とチームを成長させる ~リーダーシップの源泉」、セリーナ・チェン、ハーバード・ビジネス・レビュー(2019年5月号)

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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