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我々を悩ます「目標」と「やりたいこと」

我々を悩ます「目標」と「やりたいこと」
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2021年になり、はや1ヶ月が経ちました。みなさんは今年、どんな目標を立てられたでしょうか。また、目標に向けて順調に行動できているでしょうか。

順調に進んでいる人がいる一方で、目標の見直しに取り掛かっている人もいるのではないかと思います。

「適切な目標設定ができれば、半分以上は達成している」と言われますが、この言葉は、目標設定がいかに重要かを教えてくれると同時に、目標設定が簡単ではないことも示唆しています。

Have toの目標、Want toの目標

目標には、Hope to、Have to、Want toの3つの種類があります。

Hope toの目標とは、「こうなりたい」「こういうことをしてみたい」といった憧れや夢に近いものです。「目標」とは目指す到達点を指しますから、もし行動が起こらない憧れや夢であれば、それはそもそも「目標」とは呼べないかもしれません。

そして、Have toの目標は、周囲からの期待や仕事上の義務から設定している「しなければならない」目標。Want toの目標とは、自らが「こうしたい」と思える目標です。

内発的動機に基づき、達成するために自ら動き続けることを可能にするのがWant toの目標なので、目標を設定するにはWant toの目標がいいと言われます。

しかし、職場での目標は、多くの場合Have toの目標です。なぜなら組織の目標があり、それがそこで働く一人ひとりの目標として分配されるからです。仕事上の義務から発生する目標なので、Have toの目標になることが多いでしょう。「組織」も、生存や成長を目指す一つの生命体と捉えることができますから、組織で働く以上、自分のWantではなく、組織の維持のための目標をもつことは当然のことと言えるでしょう。

このように、職場における目標はHave toになることも多く、Want toの目標設定に苦労するケースは、自身のマネージャーとしての経験にもありますし、クライアントであるリーダーが体験する姿も数多く目にしてきました。

職場における目標を考える際に、Want toの目標を設定するための鍵は何でしょうか?

Want toに至る鍵は「今」にある

「あなたのやりたいことは何か?」と問われた時に、みなさんはどのように「やりたいこと」について考えるでしょうか。

多くの人がやりがちなのは、「やりたいことは何か?」と答えを外側に探し求めることです。ここでいう「外側」とは、今の自分自身と距離のあるものを指します。たとえば、ほかの人がやっていることや、やってみたいと思ってやっていないこと、また、過去に体験したこと。そのこと自体に意味がないとは言いませんが、いくら「外側」を探しても、Want toが見つかることは多くないように思います。

Want toの目標を設定するには、自分の内側に目を向けること。それは「今、自分がしていること」について考えることにほかなりません。

人にとって、自分の外側にあるものを対象として認識することは簡単ですが、自分の内側は自分と一体化していて距離がないため、認識しづらいものです。自分を客観視するために、コーチなり、マネージャーなり、他者からの問いかけは力を発揮します。もちろん、自分一人で自分を客観視することも可能ですが、他者の存在はそのプロセスをずっと容易にしてくれます。

「今やっていること」の意味を問い直す

「なぜ、あなたはこの会社、この仕事を選び続けているのですか?」
「この仕事をすることで、あなたは何を実現したいのですか?」
「そのことは、あなたのどういう体験から来ているのですか?」

これらは私自身が自分のWant toを言語化した際に、大きなきっかけとなった問いです。

自分がまだやっていないことを探し出すのではなく、自分が「今やっていること」に目を向け、意味を見出す。これらの問いを考えるプロセスは、自分が「今やっていることの意味」をはっきりさせるプロセスでした。

上記の問いを通じて、私は、現在のコーチの仕事が自分自身のマネジメントの体験につながることに気づきました。

前職でマネジメントに携わるようになり、組織長を担当する度に、組織運営がうまくいかず、理想の組織とはかけ離れてしまったこと。

様々な手を打っても変えることができなかったのが、自分のコミュニケーションを変えただけで、好転し始めたこと。

一人で何とかしようとするのではなく、相手とコミュニケーションをとって関係性を育むことで、成果も上り、自分も楽になったこと。

こうした一連のプロセスを、世の中の一人でも多くの組織マネジメントに携わる人が経験できるようにしたいと思ったこと。

私がコーチという仕事を選び続ける意味を見出した瞬間であり、職場でのHave toの目標と自分のWant toが深くつながっていることを自覚した瞬間でもありました。

過去の体験から見出したWant toですが、過去の体験だけを見ていても、見つけることはできなかったでしょう。「今やっていること」からスタートしたからこそ見つけることができたのです。

*  *  *

私たちが今とっている行動は、本人が認識しているいないにかかわらず、その人が大切にしている価値観、考え方と密接な関係があります。つまり「今自分がやっていること」の中に、 Want to のヒントがあるのです。

「将来多くの人が集う大聖堂を創る」という目標を持ったレンガ職人の有名なエピソードのように、何をするにせよ、自分の中で意味を見出したことは、達成に向けて自らを駆動し続ける目標になるはずです。

みなさんがご自身の2021年の目標を改めて考える際、自分が今やっていることの「意味」を見出すところからスタートするのはいかがでしょうか。

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