Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。
何のためのコーチング? 誰のためのコーチング?!
コピーしました コピーに失敗しました「働く人にはみなコーチングを学んで欲しい」
「コーチングは誰にでもできる、その気にさえなれば」
コーチ・エィに入社後、そう思い続けて15年が経ちました。
「人は関わりの中に存在している。誰からも影響を受けずに生きることはできないし、誰かに影響を与えずに生きることもできない」
このような前提に立つコーチ・エィのシステミック・コーチング™においては、自分の存在意義と組織の存在意義の結合点を自ら見出し、組織変革に当事者意識をもって取り組む人の数をいかに増やせるかに、フォーカスが当てられます。
1時間のセミナーであらわれた変化
年初より、このシステミック・コーチング™を体験的に理解していただくための、2週間のプログラムの提供を始めました。2回のオンラインセミナーと自分にとってのキーパーソンに対するコーチングが、このプログラムの主な内容です。1回目のセミナーでは対話について考える時間をもちます。その後、次のセミナーまでの間にコーチングを実践し、2回目のセミナーでは、その体験を振り返ります。
ファシリテーターとして毎回驚かされるのは、たった1時間のセミナーを受けただけにもかかわらず、参加者はキーパーソンへのコーチングを通して有意味な時間を体験している、ということです。
以下は、プログラムに参加された方が、コーチングをした相手から言われた内容の抜粋です。
「日々、目の前の仕事に押し流されているが、少しでもこのような時間があると『本当は、自分は何がしたかったんだっけ』と立ち返ることができる」
「最初は違和感を感じたが、重要な場面でこういう方法でコミュニケーションすれば、お互いの本音を理解しながら、わかり合える気がした。それがきっかけで、上司や他部門の理解も広がるような気がする。解釈の仕方は人それぞれだが、それを広く受け入れてもらえる感覚をもてた」
「自分にも何かできることがあると思った。またこのような時間をとって欲しい」
2回目のセミナーのなかで、参加者のみなさんは自らがコーチした相手からの反応を嬉しそうに共有してくださると同時に、コーチングの有用性を実感したと口にされます。
これまで、数多くのトレーニングや講演等でコーチングスキルをご紹介した際に、実際の職場でのコーチングがうまくいかない例や、スムーズにスタートできない例を何度も目の当たりにしてきた私にとっては、今回のプログラムでのみなさんの成功体験に驚き、何が起きているのだろうと非常に興味が高まりました。
参加者がキーパーソンと有益な時間を作ることができた理由
1回目のセミナーでは、システミック・コーチング™の哲学、対話の目的について共有し、ディスカッションして理解を深め、参加者自身で自組織における対話の意義を考えます。
ファシリテーターがコーチングのデモンストレーションを行いますが、コーチングスキルには特に触れません。
キーパーソンとのコーチングが有意味だったという参加者に、コーチングをするときに何を意識したのかを聞いてみると、
「デモを参考に、否定だけはしないようにした」
「聞こう、引き出そう、という意識は強くもたずに、組織や変革に対して自分にはないアイディアを持っているかもしれないという気持ちで聞くとたくさん話してくれた」
「話す途中で、私に知らないことがたくさんあることに気づいた。この人は本当は何がしたいのかと興味をもって聞けた」
という声が上がりました。
みなさん、傾聴、質問などのコーチングスキルを意識するのではなく、一緒に組織の未来に目を向ける、という目的をもって対話に臨んでいたことがわかります。
何のためのコーチングスキルなのか
そんな参加者からも、下記の声がありました。
「自分が相手と異なる意見をもっていると、聞くことに集中できませんでした」
「相手によっては、表面的なことばかり言っている気がして、会話を深められなかった。継続していくためにもこちら側にスキルが必要と思った」
いざ、相手と目的を共有して対話を開始しても、相手が沈黙したり、なかなか本質的な話につながらない、ということが当然起きます。
対話の流れを作るにはどうしたいいのか、話を深めていくにはどうすればいいのか、そもそもの信頼関係を作るには...。これらを補うのがコーチングスキルと言えます。
もちろん、組織における対話の可能性をひらくために、コーチングスキルが重要であることは間違いありません。コーチ・エィではエグゼクティブコーチ陣全員で、毎週1時間以上のトレーニングを実施し続けていますが、10年以上継続しても毎回学びがあるほど、コーチングは奥深いものであり、スキルの研鑽に終わりはありません。
ただ、コーチングスキルを使おうと意気込めば意気込むほど、「うまく使えているだろうか」という意識が働き、相手ではなく自分に意識が向いてしまいます。コーチングは相手のための時間であるにもかかわらず、相手への興味・関心ではなく、常に意識が自分に向き、相手との関係性にも目が行きにくくなってしまいます。
それよりも、
一緒にどんなコラボレーションができるのか、
ともに組織にどんな変化を作り出せるのか、
といった対話の目的をはっきりもつことで、多少スキルが不足していても、有意味な対話をスタートすることが可能です。
今回のプログラム参加者は、そのことを体験を通じて改めて教えてくれました。
* * *
「コーチングは誰にでもできる、その気にさえなれば」
コーチングが世の中にもっともっと広がっていけば、組織は変わる、会社は変わる、世界は変わると、私は信じて疑いません。
※システミック・コーチング™は株式会社コーチ・エィの登録商標です。
本記事でご紹介しているプログラムにご興味のある方は、こちらよりお問い合わせください。
この記事を周りの方へシェアしませんか?
※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。