Coach's VIEW

Coach's VIEW は、コーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。最新のコーチング情報やコーチングに関するリサーチ結果、海外文献や書籍等の紹介を通じて、組織開発やリーダー開発など、グローバルビジネスを加速するヒントを提供しています。


コーチングがもたらす「2つのギフト」

コーチングがもたらす「2つのギフト」
メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

体重の約2%の重さなのに、体のエネルギーの約20%を毎日消費し続けているのが、脳です。人間にとって「考える」ことは、生物学的には多くのエネルギーを消費する行為です。したがって、「考え」なくてもよい環境であれば、生物は無意識に極力「考え」ないことを選びます。思考停止の自動操縦状態であれば、生物としてのエネルギー効率が上がるからです。(※1)

たしかに、私たちは「考え」て行動しているようで、過去の経験の延長線上から、自動的にその場に反応していることがあります。また、利益を生み出すビジネスモデルが構築され、高度なレベルで業務が標準化されている組織では、「考え」なくても成果が上がるため、メンバーが「考える」機会が少なくなっているかもしれません。

考えるとは「共に問い、考え、語り、聞くこと」

そもそも「考える」とは、いったいどういうことなのでしょうか。

東京大学教授 梶谷真司氏は「『考えること』は、他の人との対話(自身との対話も含め)、『共に問い、考え、語り、聞くこと』」と説きます。(※2)

しかし、私たちが過去の経験から構築した固定概念や前提から、その場に反応しているときは、「共に問い、考え、語り、聞く」ことを放棄していると言えるかもしれません。

一人で考えても「考え」にはならない

「コーチは思考のパートナー」であると言います。(※3) 確かに、コーチングは、生物学的な本性にあらがい、クライアントに「考える」エネルギーをもたらす行為です。

コーチングでは、クライアントを「対話」に誘います。コーチとクライアントは、二人の間に、つい考えたくなる「問い」、考えずにはいられぬ「問い」を置いて、対話をします。

人は、「問われる」ことで、初めて「考える」ことを始めます。しかし、ただ頭の中で一人で考えていても、明確な「考え」には収れんされません。「言葉」にして「語り」、その「語り」を(他者に)「聞かれること」で「考え」ていることが明確になっていきます。だからこそ、梶谷教授は、「考える」ことは「共に問い、考え、語り、聞く」ことだというのです。(※2)

「対話」が創り出す「思考の自由」

さらに、コーチングは「対話」を通して、「思考の自由」を創出する行為だとも言うことができます。(※3)

現在、私たちはコロナ禍で、家に留まる生活を強いられ、「移動の自由」を奪われています。そんな中、閉塞感を感じている人も多いのではないでしょうか? 思考も行動と同じです。「思考の自由」を失うと、固定概念や同じ前提だけで世界と向き合うことになり、閉塞感や手詰まり感の中に埋没してしまいます。すなわち、「思考の自由」とは、自身の固定概念や前提だけでなく、違う「考え方」や「概念」も自由に選択できることを意味します。

「対話」は「会話」とは違います。

「会話」は「お互いの共通性」が大事にされます。お互いの事情や経歴を前提に⾔葉を交わし、共通項を⾒つけ、安⼼感を醸成することを⽬的とするコミュニケーションです。一方「対話」では、「違い」が前提になります。各自が培ってきた経験や解釈、価値観をもとに情報交換し、「お互いの違い」を顕在化させ、新しい「意味」「理解」「知識」をつくり出すコミュケーションと言えるでしょう。(※4)

「対話」を通して「考え」、お互いの「違い」を認識することで、無自覚だった自分の固定概念や前提に気づくことができます。そして、知らず知らずのうちに、固定概念や前提の虜になっていた自分に気づくことで、初めて、新しい概念や考え方を選択することができるようになるのです。

それは、固定概念に縛られることなく、「思考の自由」を獲得する体験となり、結果、普段⾃分が認識している現実とは異なる「他の現実」を認識する体験にもつながります。(※3、※4)

考え続けることと「思考の自由」が、持続可能な成長を可能にする

冒頭にも述べたように、生物は無意識的に「考える」という行為を極力避けようとします。しかし、変化の激しい現代においては、「考え」続けなければ、個人も組織もその存在が危うくなることは確実です。同時に「思考の自由」を獲得しないと、新しい概念や前提を手に入れることができず、新しい行動の選択が起こりません。

「考え」続けること。そして、「思考の自由」を手にすること。これらが、個人と組織の持続的な成長を促進していくのではないでしようか。

コーチングがもたらす「2つ」のギフトとは、クライアントに「考える」エネルギーを与えることであり、同時に「思考の自由」を創出することと言えます。

この記事はあなたにとって役に立ちましたか?
ぜひ読んだ感想を教えてください。

投票結果をみる

【参照資料】
※1 高橋祥子著「生命科学的思考」、NewsPicksパブリッシング(2021年)
※2 梶谷真司著「考えるとはどういうことか」、幻冬舎新書(2018年)
※3 コーチ・エィ ファウンダー 伊藤守による勉強会より
※4 コーチ・エィ DCDプログラムマニュアルより(2021年)

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

問い/質問 対話 聞く

組織へのコーチング導入や組織リサーチ、グローバル人材の開発についてなど、お気軽にご相談ください。

メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

関連記事