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「対話会」は対話する場になっているか?

「対話会」は対話する場になっているか?
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「対話が大事だ」と考える経営者はとても多いようです。我々のサービスについてご説明に伺うと、

「社員と対話することは、とても大切なことだと思っています。最近ね...」

と、ご自身の対話への取り組みをお話ししてくださる経営者が、かなりの割合でいらっしゃいます。

コロナ前は「〇〇ダイアローグ」とか「〇〇対話会」というタイトルで対面で集まる場をつくり、そこに現場の人や若手を呼んで「対話会」をしていたそうです。コロナ禍で集まることが難しい現在は、Zoomなどのオンラインで同様の時間を設けていると話してくださいます。

なぜ多くの経営者が社員との対話に熱心なのでしょうか。

対話する目的は何か

お話を伺うと、多くの場合「社員のエンゲージメントを高める」ことが大きな理由のようです。顔をつき合わせて直接話すことで、より強い信頼関係を築き、社員の意欲を高めたい。

ということは、裏を返せば、社員の「エンゲージメント」に少なからぬ不安を抱いている経営者が多いということでもあります。実際に、2017年のギャラップの調査によれば、日本企業の「エンゲージメント」は、調査が行われた139か国中132位でした。(※)

社員の「エンゲージメント」に危うさを感じ、その向上のために面と向かって話をしようとする経営者が多いのもよくわかります。どんなかたちであれ、いそがしい時間を縫って、社員と話すための時間をつくることは素晴らしいことだと思います。

対話か、質疑応答か

ただ、残念なことが一つあります。それは、お話を伺っている限り、経営者による「対話会」は、ほぼ100%「質疑応答の会」だということです。

「今日は、リラックスして、普段話せないことも自由に話しましょう。聞きたいことがあったら何でも聞いてください」

そんなトークから始まり、その場に集まった社員は少し緊張した面持ちで、ぽつぽつと質問をする。経営者は、それに対して丁寧に「説明」をする。説明の最後に「みなさんはどう思う?」という逆質問をしたりもします。質問された社員の側は、現場の状況についての「説明」をする。そんなやりとりが繰り返されることがほとんどです。

つまり多くの「対話会」は、「社員からの質問に経営者が答える」という構造なのです。もちろん、説明も大切です。経営者が社員からの疑問に答えることは、エンゲージメント向上という観点でもとても大事なことです。

しかし、「エンゲージメント」を「社員が会社の様々な課題を自分事とし、自ら周囲の環境に能動的に働きかけていくことを醸成する」ことだと捉えるならば、説明だけでは不十分です。なぜなら「説明」は常に一方通行で、社員がそこに参加する機会がないからです。

対話は双方向である

私たちは現在、「対話」を以下のように定義しています。

対話とは、それぞれが培ってきた経験や解釈、価値観をもとに「違い」を持ち込み、互いの「違い」を顕在化させながら、新しい「意味」「理解」「知識」を一緒に創りだす双方向なコミュニケーションである。

これは、我々が23年にわたって、お客様とさまざまな対話に関する体験を重ね、さらに対話研究をする世界中の学者やその実践者と「対話」を交わした結果、たどり着いたものです。

対話の目的は、「新しい『意味』『理解』『知識』を一緒に創りだす」ことです。そうした対話を実現するには、いくつかの条件があります。

  • 対話する全員のあいだで同じ問いが共有されていること
  • その問いに対して、参加者が全員、自分の考えを持ち込むこと
  • 自分の考えと対話に参加する他者の考えが異なるとき、その背景について関心を持って問いかけること

こうした条件がそろって初めて、そこに新しい意味や理解を形成することが可能になります。「双方向の対話」では、その場に集まった全員が「参加者」です。同じ目的に向けて、経営者と一緒に何かを創り上げたという実感、充実感を手にするだけでなく、社員が会社の様々な課題を自分事として捉える機会になるのです。それが、非常に強いエンゲージメントの醸成につながることは想像に難くありません。

たとえば、「この会社の社会的存在意義について改めて考える」という問いをテーマに「対話会」をするとしたら、経営者も社員も、それぞれが思っていることや、その場で思ついたことを場に投じ、それぞれの発言で疑問に思うことがあれば、お互いにその背景を積極的に問いかける。その過程を通じて、経営者も社員も、もしかしたら「ああ、こういうことなのかもしれない」と新しい解釈を手にするかもしれない。会社の社会的存在意義について考える時間をもつことは、「社員が会社の様々な課題を自分事として捉えること」を可能にするでしょう。

社員からの問いに経営者が答えるという構造では、経営者が正解をもっているという前提になりますから、創造のプロセスにはなり得ません。1対1での社員との対話の時間を取る経営者も増えていますが、それでも「説明」をしていては同じことです。

ケネス・ガーゲンという社会心理学者が次のように述べています。

「ほとんどの人にとって、どうすれば一緒にアイディアを創れるかについての練習が少な過ぎる」

誰かと一緒にアイディアを創るのが難しいのは、私たちが「わかっている人、知っている人」というアイデンティティを失いたくないからかもしれません。

真の意味で社員のエンゲージメントを高める「対話会」とはどういう場なのでしょう。一度立ち止まって再考してもよいのかもしれません。

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