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「想定外の世界」のリーダーの役割

「想定外の世界」のリーダーの役割
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コロナ禍という「想定外の世界」の体験が始まって、3年目に突入しました。対人接触や移動が制限され、以前の当たり前が当たり前でない世界を、私たちは日々体験しています。

「想定外」とは、「事前の予測を超える」という意味です。その観点では、ある人にとって「想定外」でも、別の人にとっては「想定内」ということはあるでしょう。コロナ禍が「想定外」と言われるのは、世界中の多くの人にとって予想を超える事態だったからにほかなりません。

「想定外の世界」は何をもたらすか

さてここで、自分自身にとって「想定外」の事態が生じたとき、私たちは、何を失い、何を得ているのかを、改めて考えてみたいと思います。

たとえば、Aさんは、毎朝6時に起床し、朝食には豆乳を飲んで、バナナを食べます。出勤するときは8時に家を出て、いつもの通勤路で、会社に行きます。会社に着いたら、パソコンを立ち上げ、まずメールをチェックします。それから、もともと予定に入っていた会議に参加します。時に、部下やお客様から急な相談があり、これはAさんにとってはちょっとした想定外といえるかもしれません。とはいえ、Aさんはほぼ想定内の世界で暮らしていると言っていいでしょう。

想定内の世界では、自分がすでに予測した世界が展開されます。ほぼ自分が事前にイメージした通りに物事が進んでいきますから、自身で状況をコントロールできる可能性は高いと言えます。「その場をコントロールできる」という感覚は、無意識ではあれ自身の生存確率を上げることを意味し、私たちに安心感をもたらします。

一方、想定外の世界、それも予想を超えて混沌としているほど、自身がこの状況をどう理解し、どういう行動をするべきなのかイメージすることが難しくなります。イメージできないことに対して、「自分でコントロールできる」という感覚をもつのは困難です。その結果、人は自身の生存確率を脅かされ、不安に陥ります。

人は不安なままでいられないので、起こっている想定外に向き合うために、自身に問いかけを始めます。

「何が起こっているのか?」
「なぜなのか?」
「どうしたらいいのか?」

そういった問いかけを繰り返すことで、起こった事態に対して意味づけ(解釈)を試み、再解釈を行うことで、内面的な安定を取り戻します。

第二次世界大戦下でドイツの強制収容所に囚われ、家族の中で唯一生き残った人物にオーストリアの精神科医、ヴィクトール・フランクルがいます。彼は、強制収容所という限界状況に身を置きつつも「いつかこの収容所から解放されたら大学に戻り、強制収容所における人間の心理について語るのだ。そのために、いまこの状況に身をおいている」というイメージをして生き延びたと語っています。

想定外の世界でリーダーが果たす役割

自分にとって想定外の世界に直面したとき、私たちは自分自身に問いかけながら、新しい意味・解釈を探します。しかし、一人で自問自答を繰り返すよりは、誰かと対話を交わすほうが、再解釈のプロセスを促進するということは容易に想像できます。

第一には、対話の相手がいることで、想定外の不安の中でも「一人ではない」という安心感が構築されます。さらに、自分以外の視点も含めて共有される問いが、想定外の状況を多元的な視点から観察するきっかけを与え、結果、再解釈するプロセスを促進させていきます。

現在のようなVUCAの世界では、想定外が頻繁に起こり、私たちのビジネス活動も変化を強いられます。

そうした毎日の中で、メンバーをいたずらに不安に埋没させ、迷子にさせないために、対話の相手としてのリーダーの存在があります。日々生じる想定外に対して、リーダーはまずはメンバーと一緒にいることを選び、同時に、問いを真ん中に対話します。

「想定外が導く我々の成長とは?」
「この想定外は、私たちにどんな気づきを与えているのか?」
「想定外によって、浮き彫りになった、私たちのビジネスの強み、弱点は何か?」

多様な視点から想定外の世界を探索する中で、メンバーが今いる世界を再解釈できることを促進します。

リーダーは想定外の世界において、メンバーの再解釈を支援する存在でもあるのです。

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【参考資料】
ヴィクトール・E・フランクル (著)、 霜山徳爾 (翻訳)、『夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録』、みすず書房、1985年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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