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未来に向けた「問い」をもつには

未来に向けた「問い」をもつには
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アートは「問い」を社会に投げかけています。

ストリートアーティストとして有名なバンクシーは、オークションの最中、自身の作品を自らシュレッダーしました。そして、その作品に「愛はごみ箱の中に」と命名しました。この一連のプロセスを通して、バンクシーは「芸術とは何か?」という問いを社会に投げかけたのではないかと吉井画廊の吉井氏はいいます。(※1)

さらに吉井氏は、アーティストは私たちには「見えないもの」を「見える」ようにする役割を担っているといいます。さまざまなアーティストに共通するのは、未来についての「問い」を私たちに投げかけながら、常識を揺さぶったり、今までにない経験をさせたりする点であるというのです。(※1)

未来を創った「問い」

同様に、世界に対して未来に向けた「問い」を投げかけるリーダーがいます。たとえば、スティーブ・ジョブスは「一人が一台コンピューターを持つ世界とは、どのような世界だろうか?」という問いを投げかけた人です。彼のその問いは、確実に今の世の中につながっています。

また、今ではすっかり当たり前になっている、音楽を持ち歩くという行為。これは、ソニー創業者の一人である井深大氏が、出張中の飛行機の中でも音楽を聴きたいと考えたところから始まります。「音楽を聴く」のは、「リビングのオーディオセットで聴く」のが常識だった時代に、「音楽を外に持ち出せないのか?」という「問い」がウォークマンの開発につながりました。

こうしたエピソードは、リーダーの「問い」が未来を創る原動力になったことを私たちに教えてくれます。

未来に向けた「問い」の力

私たちは、不確かなものに対して恐れを感じる動物です。ですから、放っておけば、過去の延長線上で生きていこうとします。しかし時代は常に変化しています。さらに現代は変化の速度が加速し、社会も組織も個人も急激な変化を求められています。現状のままでいれば、変化の波の中で退化し、時代の波に取り残されてしまいます。

そんな中、未来を想起し、未来への「問い」を投げかけることは、過去にしがみつき、変化に抵抗する私たちの意識を未来に飛躍させてくれます。未来に向けた問いが、私たちが変化を乗り越え、変化を自ら創り出すことを可能にしてくれるのです。

スティーブ・ジョブズや井深氏ではなくとも、リーダーは未来に対する「問い」を投げかけることで、未来を創りだしている存在です。

では、どうしたら私たちは、未来に対する「問い」を持つことができるのでしょうか?

「対立」や「矛盾」は「問い」を生む力になる

そのヒントを、昨年末、東京都美術館で開催されていた岡本太郎展で見つけました。

岡本太郎も、その作品や活動、そして、その生き方を通して、たくさんの未来への「問い」を、私たちに投げかけた芸術家の一人です。展覧会の挨拶のボードには、岡本太郎は、自身の表現に通底するものを「対極主義」と名づけたと書いてありました。「世の中に存在する対立や矛盾を調和させるのではなく、むしろ強調し、その不協和音の中から、新たな創造を生み出して」いったそうです。(※2)

このことを裏付ける、芸術家の認知様式に関する研究報告があります。その研究によると、芸術家の能力の特徴の一つとして、対立する曖昧な情報を統合する力が高いことが挙げられるといいます。すなわち、二つ以上の正反対の思想や概念、表象を同時に知覚して、それらを利用する能力が高いという報告です。(※3)

「対立」や「矛盾」「不協和音」を邪魔なものとして排除するのでなく、私たちの知覚や思考を拡大するものとして捉えるときに、そこに、新しい「問い」や未来への「問い」が、生まれるのかもしれません。

では、どうやったら、創造的な芸術家のように、相反するものを統合する力を高めることができるのか?

私の勝手な推測ですが、創造的な芸術家は、今起きていることに対して、拙速に判断、評価せず、冷静に観察し、立ち止まって「間」をとる能力が高いのではないでしょうか? 「間」をとることで、「全体、そして、時代を俯瞰」しているのではないでしょうか?

脳の「デフォルト・モード・ネットワーク」を活性化する

脳内には「デフォルト・モード・ネットワーク」という神経回路があります。通常、人の脳は、何かを考えているときに活性化します。一方「デフォルト・モード・ネットワーク」は、反対に何も考えていない時に活性化する神経回路です。デフォルト・モード・ネットワークのときに、私たちは情報を整理したり、自分自身を振り返ったりしています。こうした時間で、多様な情報や記憶がつながっていき、結果として、私たちの創造性は高まります。(※4)

創造的な芸術家は、この「デフォルト・モード・ネットワーク」を活性化させるのがうまいのかもしれません。

さて、先に述べた吉井氏は、アートに触れれば触れるほど「問い」を感じ取る力が身につくといいます。アートを「観る」あるいは「鑑賞」するという行為が、自身の既成概念の壁を超えるための「眼差し」を磨くことを可能にするというのです。(※1)

未来への「問い」をもつために、どんなことを意識してみましょうか?

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【参考資料】
※1 吉井仁実著『〈問い〉から始めるアート思考』光文社新書、2021年
※2 展覧会 岡本太郎2022年、2023年 主催者ご挨拶 
※3 帚木蓬生著『ネガティブ・ケイパビリティ ~答えの出ない事態に耐える力』朝日新聞出版、2017年
※4 茂木健一郎著『意思決定が9割よくなる 無意識の鍛え方』KADOKAWA、2022年

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

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