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自分の中に問いをもつ

自分の中に問いをもつ
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私たちは、誰かに質問されたり、誰かに問われたりすると、ほとんど反射的に「正解」を探します。

学校の先生の質問、試験問題、テレビ番組のクイズ、それらにはすべて「正解」が用意されています。つまり私たちは、質問や問いに対して「正解」を出すことを求められ続けてきたといっても過言ではありません。

何かを問われたら、「正解」を出すことこそが大切だと教えられてきたのです。

何のためにコミュニケーションをとるのか

「自分の部下とのコミュニケーションの目的は、営業目標を達成すること。これについて、疑いをもったことはありません。実際にどのようなコミュニケーションをとってきたかを振り返ると、自分の、部下の、チームの営業目標を達成することがすべてだったと思います」

これは、3分間コーチ・ワークショップに参加したある金融系企業の営業マネージャーの言葉です。

「なので、部下に対して、営業目標に対する進捗確認、行動予定を聞くのですが、たいていの場合、それでは目標達成できないという思いから、ダメ出しをして、もっとこうしろ、ああしろと、指示を出します。

実は、プレッシャーをかけすぎて会社からパワハラにならないよう注意するように言われたこともありますが、自分としては営業目標を達成するためにやってきたつもりです。それに、営業目標を達成することは、部下にとってもいいことだと思ってやってきました」

3分間コーチワーク・ショップは、そのマネージャーにとって、改めて自分のコミュニケーションの目的を考える機会になりました。

「『営業目標を達成する』というのは、会社から与えられたミッションです。もちろんそれに同意はしているのですが、自分自身の深いところでは、部下に能力を発揮して成長し、気持ちよく働いてほしい、いきいき楽しく仕事をしてほしい、という気持ちがあります。これは自分の人生のパーパスだし、本来の自分のコミュニケーションの目的なのだと思います」

このマネージャーは、ワークショップへの参加を経て、自分のパーパスを実現することを意識し、そのために自分のコミュニケーションを変えたいと思いました。そして、毎朝、7人の部下一人ひとりに対して、電話での3分間コーチを始めました。

コミュニケーションの目的を見直してみたものの

7名の部下のうちの一人は、自分よりも年上で、営業成績は毎年平均以下。頑固で自分のやり方をなかなか変えない。来年3月で定年退職が決まっていることもあって、この部下に対しては、関わることを半ば諦めていました。

とはいえ、自分の部下ですから、他のメンバーと同様、3分間コーチを実施していました。

以前であれば、最初に営業進捗を聞いたあと「もっと●●してください。頑張ってください」といった指示や叱咤激励のコミュニケーションをしていたそうですが、それをやめて、営業成績よりも「最後の一年は気持ちよく働いてほしい」という目的をもって話を聞くことに徹したそうです。

「調子はどうですか?」
「何か困っていることはありませんか?」
「相談したいことはないですか?」
「自分に手伝えることはありませんか?」

ところが実際にやり取りを始めると、

「その程度のことは自分で判断しろ」
「そんな弱音を吐いてるからだめなんだ」
「もっとこうしろ、ああしろ」

そんな言葉が頭に浮かび、いつのまにか説教モード、叱咤激励モードになってしまう。電話を切ったあとの後味も悪く、これでは以前と変わらない、自分は部下に対してこんなコミュニケーションをとりたかったのではないと、反省することが続いたそうです。

その瞬間に立ち止まる

そういうことが繰り返されて、2週間ほど経った頃、その部下と話していて、また叱咤激励になりそうになりました。しかしその日は、その瞬間にふと、

「今、この瞬間の自分自身のコミュニケーションの目的は何なんだろう?」

という問いが脳裏に浮かび、自分のコミュニケーションを立ち止まって振り返ったそうです。そしてそれ以降、

「部下を目の前にして話しているときにその問いが浮かぶようになって、自分のコミュニケーションが変化していきました」

3分間コーチを続けた結果、その年上の部下は、定年までの最後の年で、自己最高の営業成績をあげたそうです。

無意識の目的に支配されないために

このマネージャーのように「自分のコミュニケーションの目的は部下を育てること」だと目的を明確にして関わったとしても、いつのまにか、部下を否定するようなコミュニケーションをとってしまっている上司は実は多いのではないでしょうか。部下のためという目的を意識して臨んだはずなのに、気づくと、自分の立場を守るために部下を攻撃したり、自分自身の考えの正当性を主張したりしている。

これは、意識的に決めた目的が、知らないうちに「自分を守る」という無意識の目的に上塗りされてしまって起こる現象です。

この状態から抜け出すためには、自分に対しての「問い」が必要です。

これは、誰のためのコミュニケーションなのか?

自分のため?
相手のため?
お互いのため?

今この瞬間の自分のコミュニケーションの目的は?

自分に対する問いが、「止まってみる」瞬間を作り出します。それは、自分の目的を再選択する機会となり、行動変容につながります。

「問い」は、正解を出すためだけではなく、「止まってみる」瞬間を創り出してくれるものです。だからこそ、「自分に対して問い続ける」ことが大切だと思うのです。

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