Hello, Coaching! 編集部がピックアップした本の概要を、連載形式でご紹介します。
鈴木義幸
第5回 "横の対話"に一歩踏み出す
2020年06月23日
第1回 | はじめに |
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第2回 | SKILL 異論反論を大切にあつかう |
第3回 | SKILL チームで"問い"を共有する |
第4回 | SKILL キーパーソンと徹底的に対話する |
第5回 | SKILL "横の対話"に一歩踏み出す |
第6回 | SKILL おたがいの違いを愛する |
※ 本稿は、2020年6月26日発売の株式会社コーチ・エィ 鈴木義幸著『新 コーチングが人を活かす』の一部を、本の発売に先駆けて公開するものです。
SKILL "横の対話"に一歩踏み出す
コーチ・エィへの組織開発に関する相談で大変多いのが"どう横に話させるか?"です。横の対話とは、企業でいえば、部を超えての対話、事業部門を超えての対話です。
"縦の対話"は"横の対話"に比べれば、ずっとスタートしやすいわけです。昨今1オン1制度を導入する会社も増えました。うまくいっているかどうかは別にして、縦はポジションパワーが利きますから、上司が「対話する時間をとろう!」と言えば、それはスタートします。しかし"横の対話"はそうはいきません。
先日あるロジスティクスの会社の社長から相談を受けました。
「事業部門の長である執行役員が、他の執行役員とまったく話そうとしない。おたがい違う経験と視点を持っているわけだから、話せば刺激を受けるはずなんですが......。どうにかならないでしょうか?」
「なぜ執行役員同士は話さないんでしょう?」
と伺うと、
「おそらく、自分の部門のことをあれやこれや言われたくないのでしょう。ここは俺の島なんだから、俺が責任を持ってやっているんだからと。執行役員制度の弊害ですね」
話すというのは、実はリスクを伴う行為です。相手に批判されるかもしれない。否定されるかもしれない―だから"ポジション"に守られて話す"縦の対話"はいいけれど、防御が薄くなる"横の対話"はできれば避けたいということになるわけです。
横に話すためには、自分のメンタリティを180度変える必要があります。自分の利益は一旦脇に置いて、相手のために話すと決める―つまり、コーチという役割を身にまとって話すのです。
相手のためにと思った瞬間に、自分の守りへの意識は薄くなり、相手に向かって一歩が出ます。それは、結果的には相手との信頼の構築につながり、情報も入るでしょうし、協力が得られるかもしれません。
先ほどのロジスティクスの会社では、執行役員が別の部門の執行役員をコーチするという仕組みをつくりました。最初は「なんでそんなことをやるんだ」と不満顔だった執行役員。しかし、回を重ねるごとに、おたがいの間にかつてない信頼感が醸成されるのを感じるようになったそうです。
社長いわく「経営会議の雰囲気がとてもよくなりました。前は誰かが発言しても、それに対しての質問や意見がほとんど出なかった。今はもう喧々諤々の議論になります」
"横の対話"をするメリットは決して小さくありません。
POINT "相手のために話す"と決めることから効果的な"横の対話"はスタートする
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