さまざまな分野においてプロフェッショナルとして活躍する方たちに Hello, Coaching! 編集部がインタビューしました。
大阪体育大学水泳部コーチ 浅野晃平 氏
第3章 日本の水泳界を発信型にしていく
2018年04月19日
※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
大阪の枚方スイミングスクールのコーチから、単身でアメリカのスイミングクラブの名門PASA(パサ)に乗り込み、外国人として初めてスイミングコーチとして就労ビザを取得した浅野氏。
8年間にわたるアメリカ滞在期間に、浅野氏が肌で感じたアメリカの水泳界におけるコーチング、日米の違い、日本の水泳界の展望についてお話をうかがいました。
第1章 | アメリカで見たコーチングとは |
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第2章 | 帰国後の挑戦 |
第3章 | 日本の水泳界を発信型にしていく |
※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
大阪体育大学での成果
ちなみに、大阪体育大の選手はどんな結果を出しているのですか?
浅野 過去10年ほど関西でずっと団体6位だったチームが今年4位になりました。しかも3位に迫る得点で、今年は追いつけそうです。2位も狙える所にもきていると思います。
強い選手がさらに強くなったり、スランプだった選手や、何年も自己ベストが出なかった選手が復活したりしています。そういう動きによってチーム全体が活性化していますね。
他にも、重視しているリレー種目のうち、400mリレーやメドレーリレー、800mリレーなど、インターカレッジでは、10年ぶりにリレーがB決勝に残ったりもしています。水泳だと個人を重視しているチーム、選手が多いと思うのですが、私は団体リレーを最も重視しています。
リレーを重視するようになったきっかけは何ですか?
浅野 それはアメリカでの経験です。アメリカではリレーが一番重視されています。「この選手はリレーが強いから勧誘する」というチームはたくさんあります。
それには、どういう理由があるのですか。
浅野 アメリカのスカウト陣が、なぜリレーが得意な選手に注目するかというと、その選手がチームスピリッツをもち運んでくるなど、チームやレース会場のサポーター全てに勢いをつけることが多いからです。私も勢いとインパクトのあるチームを作りたかったので、そこは考え方が選手達と一致しました。リレーが強くなると個人もぐっと強くなるんですよ。
面白いですね。
浅野 逆に個人では記録が出せなくても、リレーだけはすごく強い、リレー女、リレーマン、リレー命みたいな選手もいます。チームがどんなに暗い雰囲気になっていても、リレーで勝つとチームがのってきます。私も団体戦で勝つのが好きですし、気持ちいいですね。
リレーと個人は、真逆なイメージがあったので、驚きです。リレーに力を入れるコーチというのは、あまりいないのではないですか。
浅野 「なんでみんなが興味ないところに行くの?」と言われることもあります。でも、「そこが一番面白いのに!ふっふっふっ」と、心の中で思っています(笑)
発信がキーワード
今後、浅野さんは、どんなことをやっていきたいと考えていらっしゃいますか。
浅野 もっと水泳のことについて、発信をしていきたいと考えています。今やりたいのは、水泳のテクニックを専門的に指導する競泳クリニックをどんどん増やしていくことです。他には、自分の下のコーチを育てたり、いいビジネスパートナーを見つけるといったことです。また、若手コーチの勉強会や女性コーチだけの勉強会なども開催してみたいです。今勢いのあるコーチや海外のコーチを招聘することに興味がありますね。
簡単にできるところでは、SNSなどで、もっと水泳のテクニックとか技術、考え方などを拡散できればいいかなあと思っています。最近は、ユニークで理に適った練習や大阪体育大の雰囲気が感じられるものを、 OUHS SWIM FILMSというYouTubeチャンネルに投稿しています。大阪体育大学という素晴らしい大学について、プールサイドに来られなくても雰囲気を感じ取って欲しいという狙いもあります。
「アサノエンターテイメント」(浅野さんのブログ)も発信の一つですか。
浅野 ブログでも先ほどのYouTubeの動画について毎回触れています。普段の練習や大会の様子など、ほとんど毎日更新しています。
敵チームに練習メニューを全部公開してしまうことにもなりますが、それでもやられるんですね。
浅野 まったく問題ないと思っています。公開しているのは一部ですし。こういうものは思い切ってやったほうがよいと思っています。せっかくアメリカでいいものを学んだので、広く、多くの人に知ってもらいたいと考えています。
水泳界でアメリカのことを発信している日本人の方はほかにいらっしゃるのでしょうか。
浅野 ほとんどいないと思います。スポーツ界では、外のことは知らない人が多いように思います。
アメリカでは、情報を発信する動きはあるんですか。
浅野 アメリカでは、そういった動きが活発です。たとえば、マイケル・フェルプスさんがテクニックについてや、アメリカの水泳界などについて、インターネットで頻繁にシェアされています。またそのコーチのボブ・ボーマンさんも、SNSを使ってメニューや考えなどを発信していますし、ツイッターで質問をすると頻繁に答えてくれます。
水泳のテクニックをシェアするのですか。
浅野 そうです。それに、アメリカには水泳のテクニックを専門的に指導するクリニックが数多くあります。そこでは、有名なプレーヤーや有名なプレーヤーの保護者、水泳のコーチをしている人、していない人も話をして、情報をうまく広範囲に広めています。そういった自分がほしいと思う情報をとれる環境があるので、アメリカのコーチはすごく勉強している人が多いですし、頭が柔らかいですね。
日本はまだ、コーチングが本格的なビジネスになっていないのかもしれません。でも、私は将来的にそういうクリニックをどんどん増やしていきたいと思っています。伝え方もSNSを使うなど、いろいろと工夫していく必要があると考えています。
楽しいお話をありがとうございました。日本の競泳界のすそ野が広がって、世界と互角に戦える選手がもっともっと増えていくことを楽しみにしています。
(了)
聞き手・撮影: Hello Coaching!編集部
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