リーダーシップとは、リーダーという立場にある人だけに必要なものではありません。どんな役割、立場にある人にも、リーダーシップが求められます。優れたリーダーは、周囲とどのように関わり、どのように物事を推進しているのか。ワークに取り組みながら、コーチング型リーダーのコミュニケーションについて学ぶためのミニ講座です。
【コーチング型リクエスト】 第3回 リクエストのタイミングとポイント
2017年10月26日
リーダーシップミニ講座、シリーズ8のテーマは「リクエスト」です。
第1回 | コーチング型リーダーは、部下やチームに率直にリクエストする |
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第2回 | リクエストについて再考する |
第3回 | リクエストのタイミングとポイント |
第4回 | コーチング型リーダー、コーチング型マネージャーのリクエスト |
第5回 | 相手に合わせたリクエスト |
「能力」「挑戦」「成長」を引き出すコーチング型リクエストをするためには、適切なタイミングとポイントを押さえることが必要です。
コーチング型リクエストの「タイミング」
リクエストが有効なのは、次のような場合です。
- 現在のあり方に甘んじることなく、さらに挑戦させることで相手に成長の機会が見込めるとき
- 本人には見えていない側面、可能性やチャンスを相手に伝えたいとき
- 相手やチームの行動、またその成長が止まっているとき
- ゴール達成や問題解決に向けて、緊急性や大きな変革が要求されるとき
このようなとき、往々にして、本人は「現在のパフォーマンス」と「自分自身の可能性」とのギャップに気づいていません。ですから、まず、その事実(ギャップ)を伝えた上でリクエストをすると、よりよく機能するでしょう。
例:
「最近とても疲れているように見えるよ。そのせいで、あなた本来のパフォーマンスを発揮できていないように思うんだ。そこで、ちょっとリクエストしたいんだけど、いいかな? 来週一週間は、必ず18時前に仕事を終えて家に帰って欲しい。そして、仕事は家に持ち帰らないで欲しいんだ。仕事とプライベートのバランスをうまくとって、あなたには本来のパフォーマンス、そしてさらなるパフォーマンスを発揮して活躍して欲しい。どうだろう?」
リクエストが機能する「基盤」をまずつくる
リクエストを機能させるためには、「お互いの間に強い信頼関係があり、リクエストをする基盤があること」が必要となります。そうした関係性や基盤なしには、リクエストは決して機能しません。
そうした基盤がまだない場合は、リクエストをする前に、まずは、「信頼関係を築く4つの取り組み」や「リーダーとして聞く力を磨く」に取り組むべきです。
リクエストを機能させるためのポイント
基盤のほか、リクエストを機能させるには、次のようなことを意識する必要があります。
リクエストする許可をとる
リクエストをする前には、先の「例」のように相手の許可をとる必要があります。このプロセスを経ることで、相手は「一方的にリクエストされる」という受け身な状態から、「リクエストを聞く」という主体的な状態へとうつることができます。
相手への期待や可能性について伝える
いくら相手のことを思うからこその内容であっても、いきなり具体的な行動や変化のみをリクエストされれば、相手は身構えます。本来の目的である「成長」や「可能性」に目を向けるのではなく、現在の「不足点」を指摘されたと感じてしまう可能性もあるでしょう。それを防ぐには、リクエストの本来の目的を共有すること、つまり「相手への期待」や「飛躍の可能性」を合わせて伝えることが有効です。
リクエストはストレートに、シンプルに
とはいえ、リクエスト自体は、ストレートに、シンプルに伝えるべきです。遠回しな表現や多すぎる前提・補足は、話の主旨を見えにくくし、相手を混乱させる可能性があります。
リクエストしたあと、相手の意向を聞く
前回紹介した「相手が持つ3つの選択肢(受け入れる、断る、交渉する)(リンク入れる)」が、その具体的な内容です。自分には3つの選択肢があることに相手が気づいていない場合には、少し丁寧に伝える必要があります。選択肢があることを共有できている場合には、リクエストのあと、相手がどう思うかを聞きます。先の例では、最後の「どうだろう?」がこれにあたります。
相手のリクエストも聞く
相手からも自分にリクエストをしてもらうことで、チーム内において「リクエスト」は一方的なものから双方向なものとなります(もちろんあなたにも3つの選択肢があることをお忘れなく)。それにより、コーチング型リクエストのイメージを共有していくことができるでしょう。
コーチング型リクエストを身につけるためのミニワーク
次の点について、自分自身を振り返りましょう。そして、コーチング型リーダーの側面を伸ばすために、自分に今最も必要だと思う変化、成長に向けて取り組んでください。
- リクエストが機能する基盤を持てているか
- リクエストすべきタイミングをつかめているか、逃していないか(コーチング型リクエストの「タイミング」参照)
- 機能するリクエストができているか(リクエストを機能させるためのポイント参照)
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