リーダーシップミニ講座

リーダーシップとは、リーダーという立場にある人だけに必要なものではありません。どんな役割、立場にある人にも、リーダーシップが求められます。優れたリーダーは、周囲とどのように関わり、どのように物事を推進しているのか。ワークに取り組みながら、コーチ型リーダーのコミュニケーションについて学ぶためのミニ講座です。


【コーチング型マネジメントのススメ】 第4回 コーチング型マネジメントのコミュニケーション

【コーチング型マネジメントのススメ】  第4回 コーチング型マネジメントのコミュニケーション
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第1回 「なぜ今、コーチング型マネジメントなのか?」
第2回 コーチング型マネジメントとは
第3回 コーチング型マネジメントを「いつ」使うのか
第4回 コーチング型マネジメントのコミュニケーション
第5回 コーチング型マネジメントが活きるとき

この回では、「コーチング型マネジメントとは、具体的に何をすればよいのか」について、理解を深めていきます。

部下のために「2つの時間」をつくる

コーチング型マネジメントを実践するには、まず、次の「2つの時間」の確保が必要です。

  • 部下について考える時間
  • 部下と実際に関わる(会話や対話をする)時間

この2つの時間は、互いに連動しています。部下についての理解が深まれば、どのタイミングで話しかけるのがよいか、また、どんな内容について話せばよいかがわかってくるようになります。部下について考え、部下と話す。このサイクルを繰り返すことで、部下に対する理解は深まり、結果としてより深くより大きなテーマについて話ができるようになっていきます。

イラストレーション 谷山彩子
(出典: 伊藤守著『3分間コーチ』 ディスカヴァー刊)

それでは、2つの時間について、詳しくみていきます。

「部下について考える時間」

あなたは今、一人ひとりの部下がどんな仕事や課題を抱えているか、また、どんなタイミングで、上司であるあなたとのコミュニケーションを求めているか、しっかり把握できているでしょうか。

コミュニケーションを効果的に行うためには、前提として、相手の日々の業務内容や進捗状況を把握している必要があります。ただ、業務内容を把握し、それをフォローするだけでは、コーチング型マネジメントとはいえません。信頼関係に基づいて、部下自身の状態や、部下を取り巻く環境などについても理解し、把握していることで、より効果的にコミュニケーションを交わすことができます。

そのためには、部下について考え、部下について知っていること、言い換えるならば、部下のデータベースをもっていることが必要です。

その情報は最新か?

さらに、そのデータベースは常にアップデートされている必要があります。上司は「過去」の情報をもとに、部下を理解しているつもりになりがちなので、注意が必要です。部下と信頼関係を築き、能力を引き出すには、部下が「今」何を思い、どこへ向かおうとしているのか、どこでつまずいているのか、それを知る必要があります。

そのために、情報を常にアップデートする意識をもつことが大切です。

どのように部下について知るのか?

部下の行動を観察し、考察するのも一つの方法ですが、直接の問いかけも有効です。たとえば、

「やる気になるのはどんなとき?」
「今、困っていることは何かある?」

というように。

コーチング型マネジメントにおいては、部下を知ること、部下について考えることも、コミュニケーションを通して行うことがポイントになります。

「部下と実際に関わる時間」を持つ

コーチング型マネジメントを実践に向けて、コーチングの知識・スキルのうち、重要かつ取り入れやすいものを厳選してご紹介します。

コーチングフロー〜目標達成に向けて話す

コーチングの重要な目的の一つに、目標の達成があります。「目標達成」に向けてコミュニケーションを交わすとき、ナビゲーターの役割を果たすのが、コーチングフローです。

コーチングフローに則って会話することで、会話のゴールを常に意識し、今どこにいて、これからどこに向かうのかを、共にに明らかにしていくことができます。

知識と行動の溝〜実行されるまで関わる

目標を達成するためには、「目標へ向かう行動が生まれること」が必要です。

気づいただけでは行動は変わりません。気づきには、たしかに暗闇をサーチライトで照らすような働きがありますが、行動を起こすためにはそれだけでは足りません。サーチライトで照らし出されたものを見て、熟考し、選択して、初めて行動に移すことができます。この気づきと行動を結ぶことがコーチングの機能の一つといえるでしょう。

イラストレーション 谷山彩子
(出典: 伊藤守著『3分間コーチ』 ディスカヴァー刊

また、行動計画を立てても、実際に動くと、思わぬ障害によってモチベーションが低下し、行動が減速してしまうことがあります。そうならないように、目標を達成するまで継続的に関わり続けることが必要です。

コーチングの3原則 〜 インタラクティブ・テーラーメイド・オンゴーイング

インタラクティブ(双方向)

それぞれが「聞き手」と「話し手」の両方の役割を担い、双方向に対話することで、思考の探求、可能性や選択肢の検討、真に実行されるアクションプランを生み出すことが可能となります。インタラクティブを実現するために必要となってくるのが「聞く」力です。

テーラーメイド(個別対応)

人は固有の存在であり、独自の個性や価値観のもと、それぞれの思考パターン、捉え方、行動のパターンを持っています。ゆえに、相手をよく観察し、理解し、相手に合わせて、コミュニケーションの形を変えることを学ぶ必要があります。「部下を知る時間」を持つことは、このテーラーメイドにつながります。

オンゴーイング(現在進行形)

「実行されるまで関わる」ことを、コーチングでは「オンゴーイング(現在進行形)」といいます。このほかに2つ、コーチングには必ず適用すべき原則があります。これがコーチングの3原則です。

まず聞くことからはじめる 〜 部下が「話す」時間をつくる

コーチングには100以上の個別スキルがありますが、すべてのベースとなるのが「聞く」スキルです。

日常において、部下の話を途中で遮ったり、結論を急ぐことはないでしょうか。仕事ができる人ほど、ものごとの見通しがよいため、話の先回りをしてしまいがちです。しかし、人は自らが話すことで、具体的にイメージし、主体性をもって取り組むことができます。一方で、「聞かれない」という体験は不安や不満につながります。

「聞かれる」ことで、人は安心感や信頼感を得て、創造的・主体的・行動的になることができます。コーチング型マネジメントでまず取り組むべきは、「部下の話を聞くこと」です。

ちなみに、コーチング研究所が2015年に行った調査(15か国・地域対象)によれば、日本は世界でも上司がしゃべりすぎる国の一つであり、上司と部下の関係の良好度については、最下位の15位でした。自分が話す量を少し抑えて、部下が話す量を増やす。その効果は、予想以上に大きいかもしれません。

今回は、コーチング型マネジメントに必要な「2つの時間」を紹介しました。重要なのは、何かのついでや特別なときだけでなく、普段からそのための時間を意識的にとることです。

部下のための時間をとる。

いそがしくても、少し覚悟を決めてそのための時間をとる。

長い時間が難しいなら、まずは5分、そのための時間をとる。

「時間をとる」というあなたのその行動こそが、部下に対する支援となり、アクノレッジメントとなるのです。

コーチング型マネジメントを取り入れるためのミニワーク

コーチング型マネジメントの視点をもって関わる

次の2つの内容を確認して、実際に部下のために2種類の時間をとってみましょう。ぜひ、コーチングのための専用ノートやファイルを用意してください。どんなテーマを扱うかは、前回の「第3回 コーチング型マネジメントを『いつ』使うのか」を参考にチェックしましょう。

コーチング型マネジメントの考え方

コーチング型マネジメント
部下が自分で問題を解決することが部下自身成長につながると考える
結果だけではなく、過程も重視する
失敗や間違いから部下が学び、成長することに注意を向けている
部下が自ら考えて動くことができるよう、ゴールを共有し、部下の行動をサポートする

コーチング型マネジメントのコミュニケーション

  • 部下の意見をよく聞いている
  • 部下が話しやすくなるような態度や言動をとっている
  • 部下には詰問ではなく、自由に安心して答えられるような質問をしている
  • 部下に自ら考え、問題解決を促進させるような質問をしている
  • 部下の行動や成果に対して、タイムリーにフィードバックしている
  • 自分のやり方を押しつけるのではなく、部下のやり方・強みを認めている
  • 相手によってコミュニケーションの仕方を柔軟に変えている
  • 部下の能力や適性を引き出す努力をしている
  • 部下とのコミュニケーションのための時間をとるように心がけている

coachAcademiaマニュアル『コーチング型マネジメント』より

書籍紹介

一流のリーダーほど、しゃべらない

今までのマネジメントにコーチングを少しプラスで変わる!

著者: 桜井 一紀
出版社: すばる舎

ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術 3分間コーチ

誰にでも、今すぐできて、自然に続く、究極の人材メソッド

著者: 伊藤 守
出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン


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