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「ミーティング」を「チームを育てる場」に!(3)〜強いチームをつくるコーチング型コミュニケーション
2019年08月06日
(1) | つねに明確に共有すべきものとは? |
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(2) | 「主体性」と「当事者意識」を引き出すセットアップ |
(3) | 強いチームをつくるコーチング型コミュニケーション |
ミーティングは「コミュニケーション」の見本市
たとえば、ミーティングで対立が生じたとき、あなたは具体的にどう対応していますか?
ミーティングは、いわば、コミュニケーションの見本市。
ミーティングでのメンバーの関わり方やあり方は、
- どのようなコミュニケーションをチーム内でよしとするのか
- どのようなチームであろうとしているか
を、実際の「言動」と「あり方」で共有するプロセスでもあります。
つまり、ミーティングは「チームの文化をつくる場」でもあるのです。
そこで今回は、ミーティングにもチームづくりにも活かせる「コーチング型コミュニケーション」のヒントを紹介します。
「リクエスト」する文化を育てる
さて、冒頭の質問をもう一度。
ミーティングで対立が生じたとき、あなたは具体的にどう対応していますか?
「対立」はその種類と向き合い方により、メリットにもデメリットにもなりえます。
対立は緊張感を伴い、たしかにあまり居心地がいいものではないかもしれません。 しかし、それゆえに避けてしまうと、対立がもたらすメリットを手放すことになります。
必要なのは、対立に適切に向き合う方法を身につけることではないでしょうか。
そこで紹介したいのが、こちらのツールです。
ミーティングでの対立を解消する(Test.jp 内「コーチヴィル」より)
こちらのツールでは、ミーティングでしばしばおこる「対立(衝突)」について、次のように考察しています。
衝突には、大きく2つの種類があります。1つは仕事に関することであり、もう1つは人間関係の軋轢に関することです。
仕事に関しての衝突は、よほど深刻なものでない限り、よい結果をもたらすことが多いようです。
そこで交わされる意見によって、意思決定の質が向上し、チームの創造性が高まるからです。
しかし、人間関係の軋轢は、ほとんどの場合、ミーティングに非生産的な結果をもたらすことが多いといえます。
(「ミーティングでの対立を解消する」より)
たしかに、「対立(衝突)」は意思決定の質やチームの創造性を高める可能性を秘めています。
必要なのは、「対立」が良い結果をもたらすように、
- 不利益な対立を避けること
そして、
- 対立が良くない結果につながることを避けること
です。
その具体的な手段として、このツールで紹介しているのが「リクエスト」です。
「リクエスト」する文化をつくる
不利益な対立を避ける有効な手段のひとつは、メンバーに、不平不満をリクエストの形に変えて表現してもらうことです。そして、そのような文化をチームにつくることです。
リクエストは、相手に対して自分の要求を対等な立場で伝えることです。指示命令とは異なります。
メンバーがしてほしいと思っていること、不満に思っていることをストレートに「○○してほしい」と言える雰囲気や環境をつくることで、ミーティングの生産性は向上します。
(「ミーティングでの対立を解消する」より)
小さなリクエストから始める
リクエストする文化があれば、まず、不平不満や遠回しな示唆を背景とした不要な「対立」を避けることができます。
それだけでなく、ストレートなリクエストは率直でオープンな関係性を実現し、プロジェクトのスピードアップや協力体制の構築にもつながるでしょう。
そのためには、まず小さなリクエストから始め、リクエストする・されることに慣れていくことが必要です。
ミーティングであれば、
「時間通りに集まってください」
「短く発言してください」
といったものが、その一例です。
小さなリクエストを通して、チーム全体がリクエストに慣れてくると、より大きなリクエストもしやすくなっていきます。
「アクノレッジメント」で安心感と貢献したくなる場をつくる
さて、ふたたび質問です。
あなたのチーム、そしてチームのミーティングに、「安心感」はどれくらいありますか?
安心感は、メンバーの積極的な参加や率直な発言を促します。
では、そうした「安心感」は、ミーティングにおいてはどのような取り組みを通して醸成できるでしょうか。
そのことについて触れているのが、こちらのツールです。
ミーティングにおけるコーチの役割(Test.jp 内「コーチヴィル」より)
こちらのツールでは、ミーティングを「チームビルディングの場」と捉え、効果的なミーティング運営のヒントを提供すべく、ミーティングの現状を振り返るアセスメント(チェックリスト)や必要な役割と機能についてのヒントを紹介しています。
その中で紹介されているのが「アクノレッジメント」です。
アクノレッジメントのスキル
「アクノレッジメント(承認)」とは、「相手の存在を認め、さらに相手に現れている変化や違い、成果や成長にいち早く気づき、それを相手に伝えること」です。
このアクノレッジメントをミーティングに活用するポイントを、ツールでは次のように紹介しています。
(アクノレッジメントは)「そこで行われたことを言語化し、みなが共通認識を持つこと」を意味しています。
簡単にいうと、
「あなたはこう発言しましたね」
「それはこういう理解でよろしいです か」
ということを、きちんと言葉に出して確認することです。
このような行為は、メンバーがミーティングに安心感を持つ大きな要因となります。
また、メンバーの発言に対して、きちんと
「いい意見ですね」
「論点が非常に明確になりました」
といったコメントを言うこともアクノレッジメントです。
そして会議の終わりに、参加した人たちに お礼を言うことも同様です。
つまり「この会議にみなさんが貢献したので、うまくいったのだ」と いうことを確認し、全員を承認することによって、ミーティングに対するメンバーの満足度、次のミーティングへの貢献度を上げることができます。
(「ミーティングにおけるコーチの役割」より)
アクノレッジメントを伝える行動
さて、こうしたアクノレッジメント、ふだんあなたはどのくらい行っているでしょうか?
アクノレッジメントの基盤にあるのは、「相手を大切な存在として扱う」という意志です。
相手を、そして相手の意見を大切に扱うというのは、何も全てを受け入れたり、同意することではありません。たとえ、対立する意見であっても、敬意を持って向き合うということです。
そして、それは「大切にしている」と言葉で伝えるよりも、実際の言動で示す方がずっと伝わります。
たとえば、
会議のはじめに
「時間通りに集まってくれてありがとう」
反対意見に対しても
「意見を言ってくれてありがとう」
「率直な意見をありがとう」
会議の終わりには
「今日は集まってくれてありがとう」
「活発な意見をありがとう」
と感謝を伝える。
ほかにも、
- 時間通りにスタートする(これは、時間通り集まったメンバーへのアクノレッジです!)
- 発言者の意見を正確に聞く
- わからないところはきちんと質問して確認する
- (必要に応じて)他のメンバーの発言を引用す(例:「◯◯さんが〜〜と言っていたように」)
- 少数意見や違う意見も大切に扱う
といった関わりが「アクノレッジメント」となります。
一つひとつは小さな関わりですが、それが常に実行されることで、安心感を醸成していきます。
こうしたアクノレッジメントは、ミーティングに安心感をもたらすと同時に、チームの関係性にも安心感と敬意をもたらします。その土壌があってこそ、先に紹介した「リクエスト」なども機能します。
そして、「対立」の場面などにおいても、互いに敬意を持って協力的に話し合う関係性ができていくのです。
さて、3回にわたり、ミーティングを「チームを育てる場」としてとらえ、
- チームのあり方(コミュニケーションスタイルや関係性)
- メンバーとしてのあり方や取り組みの姿勢
について、チームで、実際に体験しながら共有できる「場」にもすることを検討してきました。
ご紹介したツールとヒントが、より効果的なミーティング運営とより強いチームづくりのきっかけとなりましたら、嬉しく思います。
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