Hello, Coaching! 編集部がピックアップした本の概要を、連載形式でご紹介します。
第4回 迷信その4:内省を促す言葉は、挑発的だ
2023年08月26日
2023年6月23日に、世界トップコーチ30の一人にして、組織心理学博士でもあるマーシャ・レイノルズ博士の『Coach the Person, Not the Problem』の日本語版、『変革的コーチングー 5つの基本手法と3つの脳内習慣』がディスカヴァー・トゥエンティワンより刊行され、その監修をコーチ・エィのファウンダーである伊藤守が務めました。
著者のレイノルズ博士が懸念するのは、コーチングを学び実践する人々が抱きがちな"誤解"。それらを解き、コーチングの真価を伝えるべく、より高い効果をもたらす〈内省的探求〉のコーチングを行うための5つの基本手法と3つの脳内習慣を解説したのが本書です。
第1回 | 迷信その1:コーチングに熟練するには長い時間がかかる |
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第2回 | 迷信その2:質問なくしてブレークスルーや気づきは生まれない |
第3回 | 迷信その3:コーチは「閉じた質問」ではなく「開かれた質問」をすべきだ |
第4回 | 迷信その4:内省を促す言葉は、挑発的だ |
第5回 | 迷信その5:明確なゴールまたは将来像を必ず設定すべきだ |
世の中にはコーチングに対する根拠のない批判や決めつけ、思い込みが広まっている
コーチングの価値を損なう迷信は、少なくとも5つあります。それらは正しいときもありますが、原理原則のように扱うとコーチングの効果をかえって薄めます。
それぞれの迷信について説明しながら、代わりにどう考えればクライアントと良い関係を築けるかを述べたいと思います。
第4回 迷信その4:内省を促す言葉は、挑発的だ
迷信の出どころ
内省を促す言葉を私が使っていると聞いて、安堵するコーチがよくいます。特に南北アメリカやヨーロッパのコーチで、彼らはこう言います。「使っていいんですね? コーチングがずっとやりやすくなります!」
内省を促す言葉は、閉じた質問と同様に、クライアントをある方向へ誘導してしまうので使うべきではないと思っていたようです。
中東やアジアのコーチの反応はこれよりも深刻です。これらの地域の人たちは、内省を促す言葉を、直截的な物言いだととらえます。彼らの文化では、遠回しにせず、はっきりと簡明に話すのは対決的な印象を与え、相手の気持ちを害すると考えられています。彼らいわく「あなたは、私たちの文化を理解していない」「クライアントにあまりに直截に伝えるのは無礼だ」というのです。
迷信の中の真実
内省を促す言葉を発するときにコーチが抱く感情は、クライアントの反応に影響を及ぼします。相手への好意的な関心や気遣いを伴っていないと、挑発的な態度をとっていると受け取られかねません。
クライアントの誤りを指摘する意図があった場合、クライアントは指図されていると感じて、心を閉ざします。また、コーチがいらいらしていたり不愉快な気持ちでいたりすると、内省を促す言葉は、決めつけるような調子になったり押しつけがましくなったりします。クライアントは、批判されていると感じるかもしれません。腹を立てて話を切り上げることもあるでしょう。もしくは従順になり、どう考え、どう行動すればよいか教えてほしいと言うかもしれません。
迷信による勘違い、迷信がつくる障害
「内省を促す言葉は、クライアントをある方向へ誘導する」とか、「挑発的だ」という考えは持たないでください。
「内省を促す言葉」をフィードバックと取り違えている人がいるかもしれませんが、後者は相手を傷つける場合がよくあります。唐突に助言したり見解を示したりするのは、相手を遠ざけることになります。フィードバックや相手への評価は、この本で伝えている内省を促す言葉とは別のものです。
代わりの考え方
クライアントの言葉を要約したり、その人の気持ちを表現しようとしたりする際に、相手を正そうとか具体的な反応を起こそうとかいう思いを一切持たなければ、直截的過ぎることにはなりません。内省を促す言葉が挑発的に受け止められるのは、コーチがいら立ったり落ち着かなかったりするときだけです。
内省を促す言葉は思考の本質を突くので、クライアントは頭が混乱し、居心地が悪くなったり、恥ずかしくなったり、戸惑ったりするかもしれません。けれども、コーチが穏やかに見守り、クライアントが感情を整えられるよう安全で静かな空間をつくっている限り、相手は落ち着いてきます。そのうえで、今どんなことが理解できたかを質問すれば、クライアントは、目標に向かってどう行動すべきかについて、より建設的に語るようになります。
自分の思考や行動が自身を縛っていたと気づいて一時的に不愉快に感じたとしても、コーチングのセッションが終わる頃には、きっと前より自信を深めているでしょう。
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