さまざまな分野においてプロフェッショナルとして活躍する方たちに Hello, Coaching! 編集部がインタビューしました。
男子カーリングチーム 軽井沢SCクラブ 山口剛史選手、両角公佑選手
第1章 目標を共有して10年間
2017年10月31日
※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
2018年2月に韓国の平昌(ピョンチャン)で開かれる第23回冬季オリンピック。その平昌(ピョンチャン)オリンピックに三度目の挑戦でオリンピックへの切符を手にした男子カーリング日本代表チーム。過去2回のオリンピックは、惜しいところで出場を逃しています。Hello, Coaching! 編集部では、今回、オリンピック出場の切符を手にした背景についてお話をうかがいました。
第1章 | 目標を共有して10年間 [コラム① カーリングについてもっと知ろう] |
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第2章 | オリンピック出場に向けた意識改革 [コラム②「氷を読む」ってどういうこと?] |
第3章 | チーム力で手にしたオリンピックへの切符 |
第4章 | さらなる高みへ |
※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。
チームの歴史は勝敗に関係する
北海道出身。北海道代表として日本ジュニア選手権で優勝し、世界ジュニア選手権に出場。2003年にSC軽井沢クラブに加入し、15-16年シーズンからセカンドを担う。
山口剛史オフィシャルブログ『カーリング生活』
両角公佑 選手 / 男子カーリングチーム 軽井沢SCクラブ
1988年生まれ。長野県軽井沢町出身。小学6年生の時、兄・友佑の影響で競技を始める。ポジションはリード。
みなさんはチームとして10年間の歴史があるとのことですが、まずは、この4人でチームを組むことになった背景を教えてください。
山口 最初は僕が、両角くん(両角公佑選手)のお兄さん(両角友佑選手)のチームに助っ人として入りました。その時のメンバーはいまのメンバーとは違います。全員が同じ年齢だったのですが、大学卒業後、2人が就職を理由に辞めました。そこに、両角(公佑)と清水(徹郎)という選手が加わって、現在のチームになりました。結成自体は偶然の流れですが、その年代でのいい選手が集まったという感じです。
同じメンバーで10年間というとずいぶん長いように思いますが、カーリングの場合は、長い関係のチームが一般的なのですか。それともこのチームは特別に長いのでしょうか。
山口 どのチームもそれなりに長いと思いますが、このチームは長いですね。補欠として違うメンバーを大会に連れて行くということはありましたが、この間、メンバーの入れ替えはなく、ずっと同じ4人でやってきています。
両角 まったく同じメンバーということを考えると、僕らは、世界でもトップ2くらいの長さだと思います。
チームとしての経験の長さは、カーリングという競技の勝敗に関係するのでしょうか。
山口 一人ひとりの経験値も重要ですし、チーム内のコミュニケーションという観点からも、長い関係のチームのほうがいい結果が出やすいと思います。世界で見ても、強いチームは同じ4人でチームを組んでいる期間が短くはありません。チームを組んで1年目で世界チャンピオンになったとか、世界の上位にランクインしたといった例は、過去にもありません。カナダのトップチームでもメンバーを入れ替えるといったことをやっていますが、やはり1年目だとなかなか結果は出ませんね。
両角 チームとしてほんとうに機能するようになるのは3年めくらいからでしょうか。
4人の組み合わせがうまくいかないということもあり得るように思います。そういう場合は、メンバーを入れ替えるのでしょうか。それともうまくいくようにお互いに努力するものなのですか。
山口 チームの関係性がうまくいかずにメンバーが入れ替わることは、もちろんあります。僕たちの場合は、関係性云々というより「オリンピックに行きたい」と強く思っているメンバーが揃っていたから、ここまで続いてきたと思います。僕と両角(兄)は、大学卒業後、現在の会社(スポーツコミュニティ軽井沢クラブ)にそのまま就職させてもらうことができたのですが、両角(弟)と清水は、大学卒業後も就職先がなく、夏はアルバイトをして、冬は競技に専念するという生活でした。やはり、共通した目標をもっていたからこそ、10年間も一緒にやってこれたと思います。
覚悟が必要ということですね。
山口 日本ではカーリングがまだメジャーなスポーツではないこともあり、僕たちが日本代表チームになったばかりの頃は、スポンサーがいませんでした。当然、生活としては厳しいわけです。それでも、オリンピックに行くという目標への想いが強かったからこそ、続けてこられたのだと思います。別の言い方をすれば、想いの強かった4人が残ったということでもあります。
一般的にカーリングの選手寿命というのはどのくらいなのでしょうか。
山口 とても長いです。いままでオリンピックでメダルを獲得したカーリング選手の最高齢は50歳です。
そうすると、みなさんも今後50歳くらいまで、この4人でやっていく可能性があるわけですね。
山口 もちろん、あり得ると思います。ただ、選手としてのピークは30代です。ちょうど僕らの世代ですね。この年齢くらいからが、カーリング選手としては旬と言えると思います。
両角 カーリングでの30代は、ある程度経験を積んでいて、体力も落ちていないという年代です。
チーム力より、まずは「個の力」
日常のトレーニングについても教えてください。
両角 基本的には、それぞれ個人で練習をし、試合に向けて自分の調整をしていきます。
山口 個人の能力が高くないと、いい成績は出せないというのがチームとしての考え方です。チーム力が高くても、それだけでは世界で勝てない。まずは個人の能力を向上させようというのが、いまのメンバーでチームを組んで最初に決めたことです。個人の能力が高い4人がまとまったときに、本当の意味で強さが発揮できると考えました。なので、練習ではとにかくコーチと選手が1対1で投げ込む。基礎練習でレベルを上げるということがベースにあります。チームを組んでから最近まで、ずっとその方針でやってきました。最近は、個人の能力のレベルが高くなってきたので、チームでやる練習の時間を増やすようにしています。とくに今年はチーム練習の時間を昨年の倍にして、コミュニケーション力を高めるように努めています。
コーチと1対1での練習となると、コーチは大変ですね。
山口 コーチ(長岡はと美コーチ)が一番大変です(笑)。いまは選手の個別練習が2時間ずつなので、コーチは毎日8時間から10時間ぐらい練習につきあうわけです。
両角 そうです。このチームはもともと、両角(兄)と長岡コーチのチームだったんです。そのチームに僕ら3人のメンバーが加わっていったという感じです。
それでは、みなさんにとってコーチの存在は大きいですね。
山口 そうですね。コーチが一番のまとめ役、僕たちを引っ張っていってくれています。
1対1のトレーニングにおける指導は、どんなふうにされるんですか。
両角 たとえば、僕が投げているのを見てコーチから「いつもと違う」というフィードバックをもらって、それについてやりとりをします。いつもと違うと言われたときは、どこがどういうふうに違うのかを確認したうえで、コーチから提案をもらう。それがしっくりくるときもあれば、こないときもあります。自分の感覚と合わない場合は、コーチからのフィードバックも受け入れつつ、自分から新たな提案をしてやってみることもあります。僕の投げた感じとコーチの見た感じがいいときは、必ずいいときなので、練習をしながら、それを見つけていくというやり方です。
フィードバックを受けながら、練習していくのですね。
(次章に続く)
聞き手・撮影: Hello Coaching!編集部
[コラム① カーリングについてもっと知ろう ]
女子の日本代表チームが活躍し、注目されるようになったカーリング。「なんとなくルールはわかるけれど、よく知らない」という方に向けて、カーリングはどんな競技なのかを簡単にまとめてみました。
●基礎知識
チームの人数:4人
競技の道具:ストーン、ブルーム(氷をはくモップのようなもの)
●チーム編成について
カーリングのチームは4人のメンバーで構成されており、ストーンを投げる順番によって、リード、セカンド、サード、スキップの4つのポジションに分かれている。
●ポジションごとの役割
リード: 最初に投げる人
セカンド:2番目に投げる人
サード(バイススキップ):3番目に投げる人、スキップが投げるときに指示を出す
スキップ:4番目に投げる人、作戦を組み立て、指示を出す
(リザーブ:補欠選手。)
スキップは、リードとセカンドがストーンを投げるときに指示を出し、スキップが投げるときは、サードが指示を出す。一人がストーンを投げるとき、スキップ以外の2名はスイーパーといって、ブルームを使って氷をはく。氷をはくことによって、ストーンのスピードや方向をコントロールする。
スキップは、最後に投げて試合を決める役割を担っているため、キャプテン、主将とされることが多いが、一般のチームスポーツでイメージする「キャプテン」というチームのまとめ役を担っているわけではない。全員で作戦を組み立て、氷を読む。
●試合の流れ
リード、セカンド、サード、スキップの順番で、1人が2投ずつ、相手チームと交互にストーンを投げる。シート(競技レーン)の反対側のハウス(円)にストーン(石)を投げ入れて点数を競う。中央に一番近いストーンをもっているチームだけが点数を獲得する。
1チーム8投、両チーム合わせて16投を投げ終わると、得点をカウントして終了。この一区切りを「エンド」と呼び、1試合は10エンドで行われる。
●ストーンについて
ストーンは一つ20キロ。天然石を削って作られている。個人所有の「マイストーン」といったものはなく、毎回、試合場のストーンを使う。1チームが1エンドに投げるストーンは8投なので、レーンには、8個×2チーム分、16個のストーンが用意されている。
どれも同じ大きさ、形、重さだが、それぞれ個性(クセ)がある。試合の最中にできるだけ早く各ストーンのクセを把握し、チーム内で共有することも勝つための秘訣。
●シートについて
カーリングを行う長さ約45m、幅5mのエリアは「シート」と呼ばれる。シートの両側には、ストーンを投げ入れるハウス(円)が描かれている。シートの一方の端から、約40メートル先のハウスにストーンを投げ入れて、点数を競う。
●シーズンについて
カーリングのシーズンは、7月中旬から5月中旬まで。オフは6月のみ。近年は大会が増えており、シーズン全体が長くなっている。(SC軽井沢クラブの場合)
●カーリングの強い世界の国々
女子も男子も、カナダが世界一。男子の場合、その次にランクされるのは、スウェーデン、ノルウェー、スコットランドと、ヨーロッパの国が多い。アメリカは、前回のオリンピック(ソチ)の結果が振るわなかったため、国で強化策をとっている。
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