講演録

株式会社コーチ・エィにおいて行われた講演会の記録です。


次の50年の持続的発展に向けて
株式会社ヨックモックホールディングス 代表取締役 藤縄武士氏

ヨックモック社長が語る:第2回 答えられなかった質問「他の人が社長では、ダメなのですか?」

ヨックモック社長が語る:第2回 答えられなかった質問「他の人が社長では、ダメなのですか?」
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株式会社ヨックモックホールディングス代表取締役社長 藤縄武士氏に、ご自身がエグゼクティブ・コーチングを受けた体験について語っていただきました。本シリーズでは、藤縄氏の講演の内容を7回にわたってお届けします。

第1回 縮小し続ける市場に対する会社としての課題
第2回 答えられなかった質問「他の人が社長では、ダメなのですか?」
第3回 つきつけられた現実と、変わる「自分への問いかけ」
第4回 指示するボスではなく、先頭に立つリーダーを目指す
第5回 次々に起こる変化と活性化
第6回 新しい取り組みには「副作用」がある
第7回 もしもコーチがいなかったら

重なるご縁でコーチング導入へ

所属していた青年会議所で、月に一度、例会が開かれていました。それほど真面目に参加していたわけではないのですが、久しぶりに参加したときに、偶然、コーチ・エィの伊藤会長の講演を聞きました。それが、コーチングとの最初の出会いです。講演を聞き、「こういうことを実践したら、うちの会社に欠けているものを補えるかもしれない」と思いました。

その後しばらくして、人事部から「継続的に人が成長していくようなプログラムを導入したい」という提案がありました。それまでもいろいろなプログラムを会社に導入していましたが、詰め込み型の「研修」という形のものが多く、その効果は一時的でしかありませんでした。

そのため人事部から、次世代リーダーの育成や、一人一人が考えて仕事をする組織を実現するために、コーチ・エィのコーチングを導入したいという提案があったのです。私もコーチングに興味をもち始めていましたので、人事部の提案を後押しすることにしました。

もともとは、社員の育成という観点からコーチングの導入を検討していたのですが、あるきっかけがあり、自分でもコーチを受けることを考え始めました。実は、社会人になって最初に勤めた商社の同期が、たまたまコーチ・エィにいることがわかりました。偶然の再会だったのですが、彼女から「コーチングとは何か」という話を聞くうちに、だんだんと「自分でもやってみたい」という気もちが生まれてきました。

こうして、いくつかのご縁が重なる中、お菓子を通してお客様のご縁をつなぐ仕事をしている以上、このご縁を無駄にしないよう、社員の育成という観点からのコーチングの導入だけでなく、まずは自分でもやってみようと考えたのです。

コーチング導入に寄せられた「負荷がかかる」という懸念

とはいえ、実際に「次世代リーダーを育成するために、会社にコーチングを導入する」ということを検討し始めると、社内では賛否両論ありました。特に、他の役員からは、たくさんの懸念が挙がりました。「社員にものすごく負荷がかかる」、「社員がつぶれてしまったら、元も子もないのではないか」といった声もありました。中には、「今まで通り、詰め込み型の研修をやって、それで伸びてくる人をどんどん上に引き上げていけばいいのではないか」といった声もありました。

それでも、私個人として「コーチングを受けたい」という気もちはずっと変わりませんでした。社内での意見がまとまらないのであれば、まずは自分が始めてみようと、コーチをつけることを決めたのです。

実際に始めてみると、コーチングは厳しいものでした。正直、「始めなければよかった」と思ったことも、何回かありました。

コーチから投げかけられた、きつい質問

コーチングが始まると、コーチからいくつもの質問が投げかけられました。しかも、どれもきつい質問です。

たとえば、

「藤縄さんは、なぜ社長になるのですか?」

という質問。

「いやあ、なんででしょうね、この家に生まれてきたからですかねえ」なんて、初めはずっと、そんな幼稚な話をしていました。

次に、

「他の人が社長では、ダメなのですか?」

これまた、きつい質問です。「たしかに、もしかしたら他の人でもいいのかもしれない」と、思ったりしました。「でも、それでは、自分がやる意味はない」と思いながら、質問を聞き流していた時期もありました。

他には、

「どんな会社にしようとしているのですか?」

これについては、父が「社員の幸せのために、会社を繁栄させるんだ」と言っていたことを思い出し、「会社を成長させて、みんなに幸せになってもらいたいんです」といったようなことを話していたと思います。

そして、

「藤縄さんが社長になったら、会社にどんなメリットがありますか?」

「そんなの、やってみないとわかんないですよ」と。

こんなやりとりをするたびに、コーチはさらっと

「全然、響いてきません」

と、そういう冷たいことを言うのです(会場笑)。

でも、そう言われて怒りがわくというより、「こんな状態で社長になってはいけないんだな」という気持ちが、自分の中に芽生えてきました。

次々に湧いてくる問い、そして、出した結論は...

同時に、それまで「当たり前」と思っていたことが、だんだんと「問い」に変化し始めました。

自分の中には、「社長になるというのは、こんなものだろう」、「会社を成長させるというのは、こんなものだろう」と、イメージしていたものがありました。しかし、コーチからいろいろな質問を受けるうちに、「果たして本当にそうなんだろうか」という問いが、自分の中に回り始めました。

そもそも、「いま、このような状況にある会社を、どこにもっていこうとしているのか?」、「自分の考える『理想』と『実際の状況』の差を、自分自身、本当に理解しているのか?」と。

そのほかにも、いろいろな問いが浮かび上がってきました。

「いろんなことを社員の前で話してはいるけど、社員はそれをどのように捉えているんだろう?」
「そもそも自分が話していることは、社員にきちんと伝わっているんだろうか?」
「こんな会社にしたいと目指している理想の姿は、自分一人で達成できることなんだろうか?」

こんな風に、問いがどんどん自分に降り注いでくる、そんな時期がしばらく続きました。

ある意味では、本当に追い詰められました。これ以上逃げられないような状況まで追い詰められた、そんなふうに感じました。正直にお話しすると、今までそんなに追い詰められたことなどありませんでした。それが、コーチからの質問をきっかけに、自分の中に湧いてくる数々の問いに、だんだん、だんだんと追い詰められていったのです。

そして、出した結論が、「まず自分自身が現実を理解しよう」ということでした。現実を理解した上で進んでいくということ以外に、できることはないと考えたのです。

次回に続く


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