講演録

株式会社コーチ・エィにおいて行われた講演会の記録です。


次の50年の持続的発展に向けて
株式会社ヨックモックホールディングス 代表取締役 藤縄武士氏

ヨックモック社長が語る:第5回 次々に起こる変化と活性化

ヨックモック社長が語る:第5回 次々に起こる変化と活性化
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株式会社ヨックモックホールディングス代表取締役社長 藤縄武士氏に、ご自身がエグゼクティブ・コーチングを受けた体験について語っていただきました。本シリーズでは、藤縄氏の講演の内容を7回にわたってお届けします。

第1回 縮小し続ける市場に対する会社としての課題
第2回 答えられなかった質問「他の人が社長では、ダメなのですか?」
第3回 つきつけられた現実と、変わる「自分への問いかけ」
第4回 指示するボスではなく、先頭に立つリーダーを目指す
第5回 次々に起こる変化と活性化
第6回 新しい取り組みには「副作用」がある
第7回 もしもコーチがいなかったら

コーチングによる組織の変化

コーチングの導入に際して、社内でさまざまな意見があったことは先に述べた通りです。もともとは社員の育成という観点からコーチングを導入する予定でしたが、自分にもコーチをつける運びとなり、私のエグゼクティブ・コーチングと、管理職層へのコーチングが、同時並行で進みました。

そのような理由から、会社の中でコーチングによるさまざまな変化が起こり、私自身のものの見え方や仕事への取組み方も変わり始めました。

「決まらない会議」が変わった

社内で比較的すぐに起きた変化は、会議の進め方でした。

それまでの会議といえば、まさに「決まらない会議」。仮に何か決めても、すぐに決定事項が覆されるということも少なくありませんでした。そんな会議に日々、何時間も費やさなければならない、そんな状況でした。

そこに変化が起こり始めました。

まず、会議の初めに、社員から「今日の会議では、こんなことを決めましょう」というセットアップ、いわば「会議の目標設定」をしてくれるようになりました。また、「会議が長い」という課題に対しても、「会議室に時計を置いて、みんなで時間を意識しましょう」という提案が上がるなど、社員が自ら考え、実行してくれるようになっていったのです。

そして、社員一人ひとりが「目的」と「手段」を明確に分けて考える習慣がついたことで、決定事項が覆される頻度もぐんと少なくなりました。振り返れば、それまでの会議では、本来「目的」を考えないといけないところで、「手段」の話に終始してしまうなど、問題は、「目的」と「手段」を混同していることにあったのです。

社員同士の関わりに生まれた変化

社内の「人間関係」もどんどん濃密なものになっていきました。おそらく、コーチングを通して、「相手の話を聞く」という意識が醸成され、日常的にも意識的に「人の話を聞く」、そして、「人に話す」ということが増えたことがその背景にあるのではないかと思います。

さらに、総務人事部が中心となって、コーチングの実践も活発化しています。コーチングを受けた社員が会社の中でコーチとなって、他の社員にどんどんコーチングをして広めていく、というようなことを始めてくれています。

提案の数が増える

社員の「提案力」も向上しました。それまで、社員が自分自身の主張をしたり、自分の考えを発表したりするというようなことは、ほとんどありませんでした。それが、「こんなことがしてみたい!」という提案や意見が、どんどん出てくるようになりました。

仕事の進め方が「巻き込み型」に

特に印象的だったのは、仕事の進め方が「巻き込み型」に変わったことです。実現したいことがあっても、自分だけではできないとき、実現に向けて、「誰に協力してもらうといいか」、「協力してもらうにはどんなふうにしたらいいか」ということを、社員自ら考え、実行するようになったのです。

こうした変化を通して、「社員の主体性」そして「思考回路」に変化が生じたことを、明確に感じました。もちろんまだ全員ではありません。しかし、確実に、社員一人ひとりに「自分たちで変えてみよう」という意識が芽生えてきていると思います。

「全社員向けイベント」の開催

弊社は分社化されており、各社での新年会などはあるものの、全社員が集まるようなイベントはありませんでした。

あるとき、ホールディングスの総務人事部から「全社員向けのイベントをやりたい」、しかも、「パネルディスカッションをやりたい」と提案がありました。

賛否両論ありましたが、最終的には開催を決め、工場の現場の人、工場長、販売員、営業の部長、課長、そして私も含めたパネラー陣で、会社について話し合うというイベントを開きました。会社として初めての試みです。

参加した社員からは、「あの会があったことで、会社の方向がよくわかった」といった声が寄せられました。現在、全社員で750名ほどいるのですが、この人数になると、情報や考え方を共有するのはなかなか難しいことなので、本当にいい機会になりました。

何より、この企画が、「現場から出てきた」ということ、そのことを本当に嬉しく思いました。

朝礼での「シェア」

週1回の朝礼でも変化が起きました。

弊社では、関係構築に向けた社内コミュニケーションの活性化を目的とし、毎週火曜日の始業時間に15分ほどの朝礼をおこなっています。そこでは、業務上の連絡事項だけでなく、毎回発表者を決め、本で学んだこと、見たり聞いたり食べたりしたこと、感謝したいことなど「皆で共有したいこと」をテーマに3分間スピーチをしています。

これまでは、朝礼で何か発表するときには、みんな、用意した紙を見ながら、緊張に手を震わせて...といった具合でした。

今は違います。みんな、もう紙など見ず、自分で画用紙に描いた絵を紙芝居のようにプレゼンテーションしたり、「自分の趣味はこんなで、夢はこんなで...」とイキイキと伝え合ったり、そんな「シェア」がどんどん促進されています。

「YM(ヨックモック)バリュー」の策定

弊社の業態上、製造から販売まで、さまざまな仕事をしている人がいます。そのような事情もあり、これまでは、それぞれの現場で、「この仕事やこの動きは、何のためか?」という共通の価値観を持つといった試みはしてきませんでした。

しかし、社内のコミュニケーションが活性化していく中で、「この仕事は、何のためか」、「どういう考えや意味があるのか」といったすべての部署に通じる「共通言語」を「バリュー」としてもとう、という話が出てきました。

しかもこれは、経営陣からのお達しや指示ではなく、現場からの提案だったのです。

最終的に明文化されたのは、「お客さんの期待を超える」というバリューです。工場で厳重な検品を行うことも、お客様の期待に「応える」ためではなく、お客様の期待を「超える」ため。販売現場でクレームがあったときには、「次にお客様にもっと喜んでもらえる」ような対応をする。「ヨックモックの商品はやっぱり美味しいね」のその先をお客様に感じてもらうために、どういう風に仕事をするのか、その共通言語として「バリュー」が、現場発案で生み出されたのです。

この「YM(ヨックモック)バリュー」の策定は、とても大きなことでした。

さて、ここまで、コーチングを導入して起きたプラスの変化についてお話ししてきましたが、先に申しましたように、何事にも「副作用」があります。次に、コーチング導入のシビアな面についてもお話ししたいと思います。

次回へ続く


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