株式会社コーチ・エィにおいて行われた講演会の記録です。
株式会社ヨックモックホールディングス 代表取締役 藤縄武士氏
ヨックモック社長が語る:第6回 新しい取り組みには「副作用」がある
2017年05月02日
株式会社ヨックモックホールディングス代表取締役社長 藤縄武士氏に、ご自身がエグゼクティブ・コーチングを受けた体験について語っていただきました。本シリーズでは、藤縄氏の講演の内容を7回にわたってお届けします。
第1回 | 縮小し続ける市場に対する会社としての課題 |
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第2回 | 答えられなかった質問「他の人が社長では、ダメなのですか?」 |
第3回 | つきつけられた現実と、変わる「自分への問いかけ」 |
第4回 | 指示するボスではなく、先頭に立つリーダーを目指す |
第5回 | 次々に起こる変化と活性化 |
第6回 | 新しい取り組みには「副作用」がある |
第7回 | もしもコーチがいなかったら |
コーチング導入の副作用
冒頭で「コーチングのプラスの側面だけではなく、難しさについても」と申し上げた通り、ここからは少しコーチング導入にまつわるネガティブな要素についても触れたいと思います。
ひとつは、自身も含め、社員の時間管理や精神力への負担です。まず、自分のコーチと話す時間を確保しなくてはならない。そして、社内において自分がコーチする相手と話す時間も確保してなくてはならない。こうした時間の確保が重要になってくるので、取り組む際には、そのことを認識し、「決め」を持つ必要があります。
コーチングの導入を検討する際には、おそらくこのあたりが最初の論点になるのではないでしょうか。
また、導入当初は、社内、特に役員のあいだで、「(社員に)迎合することにならないか」という声もありました。他にも「なにもかも平等に扱うことに、どんな意味があるのか」、「コーチングというのは、誘導する(される)ことなのではないか」といった声もありました。
それ以外には、社内におけるコーチング対象者と非対象者のあいだに生まれる温度差のようなものもあります。コーチングを受けている人は、どんどんコミュニケーション力がついていきますので、当社の場合は、「あの人はコーチングを受けていて、いいよね」、「自分は選ばれなかった」、「コーチングを受けた人と受けていない人では、何か差別をされているのではないか」といったような不安、不満が実際に出てきました。
コーチングへの「誤解」にいかに向き合うか
ただ、先ほどお話しした通り、これも新しい取り組みの「副作用」と考えれば、それを早く解消する対応をすればいいだけです。よって、こうした声が出てきたときも、私はあまり深刻視はしませんでした。
ネガティブな側面についての声は、何かを変えるときには、どうしてもついてくるものだと思います。重要なのは、やはり「目的、目標」へのブレないコミットメント、そして、「その『目的、目標』を達成するための『手段』として『コーチング』を活用するのだ」という強い意志だと思います。
私の場合は、これから会社をさらに成長させていくには、自分の力だけではどうにもならないと痛感していたので、「今いる優秀な社員たちにもっと活躍してもらえる場を作るほかない」と覚悟を決めていました。その強い思いがあったからこそ、「誤解」からくるネガティブな要素を解消することができたのではないかと思います。
コーチング導入からこれまでを振り返って
会社にコーチングを導入して4年近くが経ちます。この間を振り返って、改めて思ったことがいくつかあります。
提案者自らが、まず変わる
コーチングの導入を会社に提案したいと考えている方もいらっしゃるのではないかと思います。その場合、提案しようと考えている本人が、まずコーチングを活用して変わってみる、ということも、導入を実現するための大きな原動力になるのではないかと思います。
「変革」し続ける覚悟を持つ
会社を変えようと思うのであれば、そのプロセスに終わりはなく、変え続けていかなければならない、と実感しました。おそらく、変化し続けることを止めた時点で、会社は衰退していきます。変革を実行するのであれば、常に変革し続けるということを決めないといけないと思いました。
自分一人で成長するには限界がある
コーチなどいなくても、周囲の力を借りたり、自分で試行錯誤したりすることで成長できるのではないかと思われる方も少なくないと思います。しかし、実際にコーチをつけたり、会社に導入したりしてみて、自分一人で学べることや身につけられるものには限界があると痛感しています。「コーチングをする」、「コーチングをされる」という関わりを通して得ることができる「客観的な視点」、「相手の視点」が大きなヒント、そして気づきとなって、自分の成長につながっていると思います。
「人間関係」の捉え方も変わりました。「人間関係」というと少し重たい印象がありますが、コーチングを受けることで、人と話をするのが楽しくなってくるといった変化もありました。
コーチングは万能ではない
とはいえ、やはりコーチングは万能ではありません。例えば英語などの語学や、経営に関するスキルなどは、もちろんコーチングでは身につきません。ただ、コーチングを通して、新しいスキルや能力を身につけるための考え方や目的意識などを、「基礎」として持っておくと、より効率的、効果的に学ぶことができるのではないかと思います。
社長の仕事とは
コーチングを通じて、会社の目標を実現するには「組織を動かす」ことが必要だと、つくづく思いました。私一人ではどうにもならない、と痛感したのです。
「会社組織」については、自分なりの定義がはっきりしました。働く人々に様々な経験や体験を提供する場であり、人生をより豊かにできる場であり、そしておそらくその先に一人ひとりの幸せがある。そういう環境を作ることができる会社でありたいと、今、思っています。
そして、「社長の仕事とは何か」。まだ完全な答えではありませんが、はっきりしたこともあります。それは、「社員が最も力を発揮できる環境や場をつくり続けていく」こと。「社長の仕事」として、このことに取り組んでいこうと、決心しました。
次回に続く
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