プロフェッショナルに聞く

さまざまな分野においてプロフェッショナルとして活躍する方たちに Hello, Coaching! 編集部がインタビューしました。


野球経験ゼロから名門レッドソックスの日本人スカウトへ
ボストン・レッドソックス スカウト 嘉数駿 氏

第7章 スカウトは何で評価されるのか?

※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

第7章 スカウトは何で評価されるのか?
メールで送る リンクをコピー
コピーしました コピーに失敗しました

ハーバード大学を卒業後、野球の世界に飛び込み、現在はボストン・レッドソックスのスカウトとして活躍する嘉数駿(かかず しゅん)氏。野球チームのスカウトとは、いったいどんな仕事なのか? 嘉数さんが野球の世界に飛び込んだ経緯から、今後のビジョンまで、お話をうかがいました。

第1章 『マネー・ボール』との出会いが人生を変えた
第2章 1年半にわたる就職活動
第3章 野球の世界で働き始める
第4章 スカウトの仕事
第5章 誰でもスカウトになれる?
第6章 優れたスカウトに求められる3つの能力
第7章 スカウトは何で評価されるのか?
第8章 日本のスカウト、アメリカのスカウト
第9章 もっと多くの人に野球を楽しんでもらいたい

※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

第7章 スカウトは何で評価されるのか?

正解のないスカウトの仕事。どんなにベテランでも失敗することがあるそうです。球団は、スカウトの能力について何をみて評価するのでしょうか。

球団から見れば「このスカウトは使える、使えない」というのが当然あるだろうと想定します。スカウトはどのように評価されるのでしょうか。

嘉数 スカウトの評価はなかなか難しい話ですが、僕みたいに日本担当であれば、日本の選手をちゃんと網羅できていたかどうかが評価基準になります。ですから、必ずしも自分のチームに選手を入れて、その選手が活躍したかしないかで評価が上がる下がるというわけではありません。なぜなら獲得するかどうかを決めるのは、スカウトではなくGM(ゼネラル・マネージャー)だからです。

選手を網羅しているとは、どういう意味でしょう?

嘉数 いろいろな選手について万遍なくレポートを上げているかどうかです。獲得しなかった選手についても評価の対象になります。たとえば、日本のある選手について、「こういう選手で、これぐらいの活躍をする可能性がある」とレポートを上げていたとします。その選手がレッドソックス以外のチームに行ったとしても、彼が、僕がレポートで報告していた通りの活躍をしたら、僕の評価は上がります。要は、GMやスカウト部長といった、選手獲得の決裁権をもっている人たちが判断するための正しい情報を上げているかどうかが評価の基準になるんです。一番マズいのは、ある選手について「たいしたことがない、獲得する必要はない」というレポートを上げて、球団が獲らないという判断をしたのに、他球団に行って大活躍をするというケースです。「お前、何をやっていたんだ」という話になります。

スカウトは、GMなり球団なりのニーズに応じて選手を追いかけて、レポートを書くのでしょうか。

嘉数 チームのニーズを把握しつつ動きますが、ニーズがあるケースも、ないケースもあります。たとえば二塁手について、球団から「今年は要らない」と言われていたとします。だったら二塁手は全員マークしなくていいかというと、そんなことはありません。ある二塁手が他のチームに行ってすごく活躍したりすると、「なんで、この選手のレポートを上げていなかったの?」という話になります。そういう場合、「二塁手は要らないと思っていたから上げていなかった」というのは言い訳になりません。「そんなに活躍するのであれば、検討していた」と言われます。また、明日、誰かが故障するかもしれないわけで、チームのニーズも日々変わります。

つまり、スカウトの目で見て「この選手はいい」と思ったら、レポートを上げ続けるということなんですね。

嘉数 そうです。レポートは読まれないことのほうが多いです。1年後になって急に読まれて、そのレポートがすごく重要な役割を果たす可能性もあります。それは本当にわかりません。

逆に、ニーズがない中でレポートを読んで、球団側が「あ、この人はとっておいた方がいい」となって、交渉に入るという場合もありますか?

嘉数 可能性としてはあります。買う側、バイヤーサイドの仕事は、買えばいいというわけではありません。営業であれば、売れば売るほど評価が上がると思いますが、バイヤーサイドの場合、「買わない」という判断も重要になります。したがって、スカウトの評価は、買うか買わないかの正しい判断をするための、正しい情報をどれだけ上げていたかというところになります。とはいえ、どこの時点で振り返るかということがあるので、なかなか難しいです。1年後に振り返って「なんでこんな選手をとったの?」という場合でも、2年後になったら、その選手が大活躍して、「やっぱり正しかったね」ということになるかもしれない。人を扱う仕事なので、そこが難しいですよね。

レポートは、どのくらいの頻度で上げるものなんでしょうか? 網羅することが仕事とはいっても、数が大事なわけではないですよね?

嘉数 おっしゃる通り、数を出してればいいというわけではありません。必要になったときにそのレポートが上がっているかどうかなんです。毎日、どの試合を観に行けばいいか指示があるわけではありませんから、自分で決めていいし、必要ないと思えば、観に行かなくてもいいわけです。必要とされる情報の量と質が大事です。

先ほどエージェントの話がありましたが、エージェントとのパイプの量や交渉力もスカウトの評価になるのでしょうか。

嘉数 「選手の評価」をする際に、代理人を通じた情報も含めて考えるので、直接ではないにせよ、彼らからどのくらい情報を収集できるかというところに影響します。

(次章に続く)

聞き手・撮影: Hello Coaching!編集部

この記事を周りの方へシェアしませんか?

この記事はあなたにとって役に立ちましたか?
ぜひ読んだ感想を教えてください。

投票結果をみる

※営利、非営利、イントラネットを問わず、本記事を許可なく複製、転用、販売など二次利用することを禁じます。転載、その他の利用のご希望がある場合は、編集部までお問い合わせください。

コーチング・プログラム説明会 詳細・お申し込みはこちら
メールマガジン

関連記事